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空夢の部屋

11月の天気ことわざ

紅葉前線が南下。京都の紅葉は11月中〜下旬が見頃。ぼちぼち初雪の便りも。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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五七は雨に四つ日照り、六つ八つ風に九の病

 このことわざは古くからいわれています。五七は雨とは午前8時と午後4時に地震があれば雨が降るということで、四つ日照りとは、午前10時と午後10時に地震があれば天気が良く、午前6時午後6時に地震があれば強い風が吹くということをいったのです。ここで九の病といったのは、九は苦に通じ、語呂を合わせるためにつけただけのものです。このことわざについて元東北大学教授の中村左衛門太郎博士が調査した結果によると、地震後2日間については、七つの雨の的中率は67%、四つの日照りは23%、六つ八つの場合は71%で、五七の雨や六つ八つの風は多少こうした傾向が認められるという結果になっています。尚、地震と気圧の日変化との関係を見ると、気圧の極大時から極小時に向かう時刻に発生することが多く、また地震は低気圧の中心が500Kmくらいのところに近づいた時に起こる傾向があるようです。

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10月20日(旧層)に南風だと小雪、北風だと中雪、西風だと大雪

 このことわざは福井地方などでよくいわれています。旧暦の10月20日は新暦ではだいたい11月20日ごろに当ります。一般風の風向はだいたい気圧配置により決まります。そしてこのころの風向はシベリア方面の高気圧の発達のしかたによりちがいます。11月下旬のころに西風が吹く時に大雪が見られるというのは、大陸の寒気が日本海の南部を横切って吹いて来る時には、日本海の水温が高く、しかも日本海上を吹き渡る距離が長いので、それだけ多くの水蒸気が空気に供給され、この水蒸気を沢山含んだ暖気が陸地に吹ぎあがって冷やされて雪となるので大雪となるのです。北風の場合には、元来空気の気温が低い上に、海水温の低いところを吹き渡って来るので、吹き渡る海面上の距離は長いが、大雪とはなりません。また南風の時には気温が高いので小雪となることが多いようです。

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榛(ハン)の葉の落ちぬうちは雪消える

 晩秋から初冬にかけて落葉樹の葉は次々と散り、山や野や庭が冬枯れの風景に移り変わります。こういった季節に落葉の様子から積雪や根雪を予想することわざがいろいろあるが、なかでも山野のどちらかといえば湿地によく見かけられ鉛筆やマッチの軸を造る榛(ハン)の落葉の様子から雪の積りかたをいったことわざがよくいわれています。積雪地方では根雪になると、屋外のいろいろな仕事にさしつかえるようになることが多いので、仕事の進め方の目安としてもこのことわざは大変役に立ちます。榛の葉の落ちる時期と、降った雪が解けてすぐ消えなくなり積る時期とは大体致しているので榛の葉の落ちかたから、だいたい雪の降り方を知ることができのです。ふつうは朝夕の気温が2〜3度以下になると降った雪がすぐには消えなくなります。榛の葉がまた散らないころでも気温が急に下がって、前線が通り、雪の降ることもありますが、この場合には地温がまだ高いので、降った雪はすぐ消えてしまうのです。

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霜が早く消えるとその日は雨

 朝方の最低気温が3度ないし4度以下に下るような季節になると、朝霜の降りるのが見られるようになります。とくに大陸の方から高気圧が張り出し、日本がこの高気圧におおわれる時や、移動性高気圧が日本の上を通る時には快晴となり、夜間の冷え込みがひどく霜が降ります。北の地方の山岳地帯では、早い時には9月のうちにすでに霜の降りるのを見かけることもありますが、11月も半ばを過ぎれぼ、快晴な日には各地の朝方の最低気温が4度以下に下るので、どこでも霜が見られるようになります。ところでこの霜が朝日が出るとすぐ消える日もあれば、なかなか消えない日もあります。朝の気温の下り方がひどくないと薄霜となり、早く消えることとなります。朝の冷え込みがあまりひどくない時というのは、低気圧が接近しているときです。低気圧の前面では南寄りの風が吹き、このために気温が高くなり、朝の冷え込みがひどくなく、霜が早く消えることとなるわけです。したがって冬に霜が早く消えるような時には、やがて雨となると見てよいでしょう。

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青菜に雪がかかる年は雪が少ない

 このことわざは福島県その他の地方でよくいわれています。現在のようにビニールハウスが普及していなかった時代には、秋から冬に向かい寒さが加わると寒さのために青菜を栽培することができませんでした。したがって青菜に雪がかかるような年というと、雪が例年より異常に早く降った年、あるいは、暖冬気味の年にもなかなか寒くならないのでかなりおそくまで青菜を栽培することができて、青菜に雪がかかるのを見ることがあります。したがって青菜に雪がかかる年というのは、初雪が例年より異常に早かった年か、また暖冬気味の年でおそくまで青菜の見られた年ということになります。それでは初雪が異常に早く見られた年に雪が少ないかというとそのようなことはありません。初雪はたまたま秋に気温が下がる時に見られるからです。一方暖冬気味の年には、その兆しが秋から見られ、青菜が初冬までも栽培できるので、雪が青菜にかかることがあり、この場合は雪が少ないといえるでしょう。

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高山に早く雪ある年は大雪なし

 晩秋に大陸の高気圧の勢力が早く強くなり、上層気流の気温が例年よりも早く低くなるような年には、高山に早く雪が見られ、ふつうはそのような年には冬に大陸高気圧の勢力が強いことが多く、雪がよく降ります。こうしたことからみると、このことわざは矛盾しているように思われます。しかし平地の大雪は、日本海側を低気圧が通る時にみられることが多いから、冬の大陸高気圧の勢力が著しく強く、日本がこの勢力圏内に入ってしまうような時には低気圧が日本海側を通ることが少なく、そのため山岳地帯にはかなりな雪が降っても平地ではあまり大雪がみられないこととなります。こう考えると矛盾していないことになります。
 このことについて、実際にはどうかを福井で調ぺた結果によると、高山の初雪が早い年でもその雪が大雪であるか小雪であるかで違い、山の初雪が早く大雪であった年よりも、山の初雪が早く小雪であった年のほうが、2倍も多く「高山に早く小雪がみられた年の冬には大雪がない」傾向が認められました。

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秋風と夫婦喧嘩は日が入るとやむ

秋風は夜になると弱くなることが多いのですけれど、これと同じように夫婦喧嘩も昼間は派手にやっても夜になれば仲なおりをすることが多いということです。秋には移動性高気圧におおわれることがよくあり、こういう時には天気がよく、強い風があまり吹かないものです。しかしこうした天気のよい日でも山寄りの地方や海岸に近い地方では山風や海風が発達L、この風は昼と夜では反対方向に吹きます。ところが、秋に吹く一般風の風向は昼も夜も同じですから、夜になると一般風の風向と山風や海風の風向とが反対方向に吹く地方では、風向が反対であるために相殺されて、日が入ると風が弱くなる地方がかなりあります。また海陸風や山谷風の影響を受けない地方でも、昼間は日射で地面が温まり、下層の空気が軽くなります。しかも地表面の気温が場所によりちがうので、こうした関係から局地風が吹くのですが、夜になると地面が冷えて地上の空気が沈降し風がおさまってしまうことが多いようです。

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鱗雲が出た翌日は雨または風

青空にあたかも魚の鱗のようだ白い斑紋または白い波紋となった美しい雲が見られることがあります。この雲を鱗(うろこ)雲とか、鯖(さば)雲、鰯(いわし)雲などとよんでいます。魚の鱗や、魚の群れているさまに似ているからです。こうした雲は気象の方では絹積雲と呼んでいる雲で、高さ6ないし8キロメートルくらいの高いところにできる雲です。この雲は低気圧の前面によく現われます。低気圧が近づいてくるときには、その前面には温暖前線があり、まず上層部に暖気が吹き込んでくるので、この空気が冷えて、いわゆる鱗雲ができるのです。したがって鱗雲が見られることは低気圧が接近している証拠ですから、しだいに天気がくずれることが多いのです。しかし、低気圧の勢力が衰えたり、進行方向が変ったりすると、鱗雲が見られても、風雨がないこともありますから、このことわざは必ず当るとはいえないでしょう。では当る確率はどのくらいかというと73%くらいで、どちらかというとよいほうのようです。 

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朝霧深きは晴れ

朝に濃い霧が発生するような時には、空がよく晴れていて夜間放射量が多く、朝の冷え込みのひどい時です。こうした霧を放射霧といい、この霧が見られる時、春や秋には移動性高気圧におおわれている時であり、この霧は日が出るとしだいに消えて、その日は快晴となります。そしてこの場合には朝霧が濃いほど、朝の冷え込みがひどく、それだけよく晴れているということになります。
 これに対して、低気圧が近づいて来る時にも、その前面では湿った南風が吹き込むので、これが冷えて霧が発生することがあります。ただこの場合には霧の層が厚く、空が曇っていて、やがて雨が降り出します。
 また山で朝に濃い霧につつまれることがあります。この場合には放射霧であるか、低気圧が近づき水蒸気を沢山含んだ風が山に吹きつけて発生した霧であるかの判断がつきにくいものです。この霧が日が高くなるにしたがって薄くなるようなら放射霧ですから、その日は晴天となると見てよいでしょう。

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霜がおそい年は雪が早い

秋に霜がおそくみられるような年には、いつもの年よりも冬に向かって大陸の高気圧があまり発達しない年とみられるので、このことが言われるのでしょう。それだけ寒さもおくれて来ることとなり、雪が降り始めるのも遅れるとみられます。しかしこのことわざは反対です。これについて実際にはどうかということを福井測候所で福井について調べたものがあります。資料は古いのですが、明治30年から昭和15年までの44年間の資料で調べた結果では、初霜が平年よりおそく、初雪が平年より早い回数は24回、初霜がおそく、初雪もおそい年は8回、両者ともに早い年は10回、初霜が早く、初雪がおそいことが12回あります。これによると、このことわざの適中率は58%ということになります。しかし、実際にはこうしたことは一地方だげでは、あまり当たるとはいえず、かなり広い範囲について調べてみないと本当のことはわかりません。気象の常識からいえば霜のおそい年は雪もおそく在るのがふつうでしょう。

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ソバの豊作は大雪

ソバからその年の冬の雪の降りかたを予想することわざはいろいろありますが、なかでも「ソバの豊作は大雪」ということが昔からよく言われています。元来ソバは寒さに弱い豊作物です。したがって、夏ソバ、秋ソバを通じて農作となるような年は、立秋以後の天候が比較的温暖で、初霜の害などをあまり受けないような年です。秋ソバの成熟期から収穫期にかけて気温が高く豊作となった年の冬の雪景を調べてみると、多雪地域である北陸地方のソバが豊作であった大正9年、大正22年、昭和8年、昭和27年などはいずれもその翌年の冬の降雪量が平年より多くなっています。
これは夏に太平洋の高気圧の勢力が強く、暑い夏の年には冬に大陸の高気圧が発達して寒冬となり雪が多く降る傾向があるからでもあります。なお、このことわざは、ソバの花盛りには雪が積ったように見えるところから、大雪と連想してこのようにいわれはじめたものとも思われます。

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イチョウの葉が落ちれば根雪となる

気候がかなり寒くならないと降った雪は解けてしまい根雪となりません。初雪が見られてから根雪が見られるようになる期間は、北の地方ほど短く、だいたい一か月くらいですが、同じように根雪の見られる地方でも、南の地方では初雪が見られてから根雪となるまでに二か月くらいの期間があります。しかも根雪に入る時期がおそく一月に入ってからです。たとえば中部山岳地帯や北陸地方などでは、イチョウが落葉してから一か月以上も経ないと根雪となりません。したがってこのことわざは東北地方以北で通用することわざです。イチョウの葉がすっかり散ってしまうのも、降った雪がとげなくなるのも、ある程度寒くなった時で、ふつうは朝夕の気温が2〜3度以下になると、降った雪がすぐ消えなくなります。もっともイチョウの木の葉がまだ散らないころでも、気温が著しく下がって、前線が通り雪が降ることがあります。この場合には地温がまだ高いので雪が降ってもすぐ消え根雪になりません。

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秋北春南

秋北春南ということが山口県下その他の地方でいわれています。これは、秋は北の空が晴れている時に天気がよく、春では南の空が晴れている時に天気がよいという意味です。秋にはシベリア高気圧の勢力が強くなる時に天気がよくなります。また日本海側を通る低気圧により天気がくずれることがあり、これらの場合にはよく北の空が晴れるのです。
春には小笠原高気圧の勢力が強い時に天気がよくなります。この場合には南の空が晴れていることが多いようです。こうしたことから秋北春南といわれていますが、同じような理由から太平洋沿岸地方では「秋海春山」、日本海沿岸地方では「秋山春海」ということもいわれています。
愛知県下では『秋北三西」ということがいわれているようです。これは秋には北に雲がなく、春三月には西に雲がないときには晴天の兆してあるという意味で、「秋北春南」とだいたい似た理由によるものとみてよいでしょう。

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秋冷やつけぱ冬暖かい

 秋に寒さが例年より早く来たり、また秋の寒さが例年になくきびしいような年の冬には暖かいとよく言われています。これは秋に寒けれぱ、それを補うために冬が暖かくなるという気象変化に対する均衡思想からいわれだしたものです。秋になるとしだいに気温が低くなるのは大陸の高気圧が発達するからで、いつもより早く発達すれぱそれだげ秋が冷やつくこととなります。また秋の大陸の高気圧の勢力が例年より強ければ、やはり秋がそれだけ冷やつくことになります。したがって、秋のシベリア高気圧が強い年には冬のシベリア高気圧は弱くなるという関係があれば、「秋冷やつけぱ冬暖かい」ということになります。秋の大陸の高気圧と冬の日本の気温との関係や、秋の気圧配置と冬の寒暖との関係などについて統計的に調査した結果によると、少なくとも明治以後は、秋に早く寒さが来るような年には冬も寒く、また秋に暖かい年には冬も暖かい傾向があり、「秋冷やつけぽ冬暖かい」とはいえないようです。 

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月夜の大霜

月夜の大霜ということは昔からよくいわれています。これは月が満ちる時に大霜がみられるという意味ではなく、月がこうこうと輝くような晴れた夜には、霜が多く降りるから注意したほうがよいという意味です。月がよく見えるような夜間に快晴の時は、地面から空に向かって放射熱量が多くなり、地面近くが著しく冷えるので、それだけ霜の降りる量が多くなり、いわゆる大霜となります。
 それでは、月夜には必ず大霜になるかというとそうではありません。月夜でも風があると、地面近くの冷えた空気が吹きあげられるので、それほど冷えないことがあり、霜の見られないことがあります。したがって月夜には必ず大霜になるとはかぎらないわけです。
 なお、朝方の最低気温が3度以下に下がると霜は降りるようになり、月夜の大霜とは、霜害の起こりやすい春や秋に見られる霜についての警告のことわざです。 

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カモが早く来ると早雪

カモ類の多くは夏に寒地で産卵し、ヒナを育て、冬の寒さが近づくと日本に渡って来ます。すなわちカモは初冬に千島、樺太、北海道を経て東北地方へ南下して来るものと、沿海州方面から日本海を渡って東北や北陸などの日本海沿岸地方に渡って来るものと朝鮮半島から九州へ渡って来るものとがあります。この渡って来る時期は九月下旬ごろで、それよりしだいに南下し、11月中には全国的にカモの渡来が見られるようになります。カモが北陸地方に姿を見せてから関東地方に渡って来るまでには40日くらいもかかります。秋が進むと冬型の気圧配置となり、北西の風が吹き、しだいに気温が低くなります。この北西の風と気温の低下にともないカモは暖地へと渡るのですから、例年に比べて北寄の風が早く吹き始め、気候が早く寒くなるような年にはそれだけカモの渡りも早くなります。したがってカモが例年よりも早く渡って来るような年にはそれだけ寒さの訪れも早く早雪となりやすい。

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南東からの出雲は雨

空に浮ぶ雲はいずれもどちらかの方向に流れています。この雲の流れは上層の空気の流れを示すとみてよいでしょう。
ところでこの雲の流れの方向が南東から北西の方向へ流れている時には低気圧が近づいている時です。日本付近を通る温帯低気圧は時計の針と反対方向の大きな渦巻ですから、上層の空気は南東から北西へ向かって流れることとなります。したがって南東からの出雲は低気圧が近づいている証拠で、低気圧が到来すれば雨が降ります。高層雲が見られる時にはまだ低気圧がかなり遠いところにありますから、その後の様子で進路が変り雨の降らないこともあります。しかし、中層雲、低層雲と低い雲が見られるほど、低気圧が近づいている時ですから南東からの出雲は雨となる確率が高くなります。低層雲の場合には、24時間以内に雨の降る確率は80%以上ですから、かなりあてにしてもよいことになります。

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初冬に濃霧があると1ヶ月後に雪が降る

帯状高気圧がおおい秋晴の続く季節が過ぎ初冬に入ると、低気圧が日本付近を通るようになり、この低気圧のもたらす湿気と、気候が一段と寒くなることにより濃霧が発生することがあります。
 こうした濃霧が初冬に発生しやすいのは主に中部山岳地帯であって、その時期は11月中・下旬であり、その1か月後の12月中・下旬になるとこれらの地方では雪が降ることが多いためにこうしたことがいわれるのでしょう。また中部山岳地帯以外の地方でも、初冬に濃霧のみられることがあります。この濃霧は朝方の冷え込みがひどい時に起る放射霧であり、大陸の高気圧がいつもの年よりも強い場合によくみられて、このような傾向はその後も続くことが多く、そうした年には気候が例年より寒く雪が比較的早くみられるようになるばかりでなく、意外な大雪が降ることがあるので注意したほうがよいようです。

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イワシ雲が夕刻出ると晴れ

青空に純白な雲がちょうどイワシの鱗のように並んでみえる美しい雲のことをイワシ雲といいます。鱗(ウロコ)のような雲だから鱗雲ともいい、雲の種類としては絹積雲または高積雲に属する雲です。高さ5000メートルから7000メートルくらいのところに発生する雲です。天気がくずれ雨が降る原因の多くは、日本付近を通る温帯低気圧の影響の結果です。温帯低気圧は時計の針と反対方向の大きな空気の渦巻であり、その前面では南寄りの水蒸気を含んだ暖気が吹き込み温暖前線ができます。この温暖前線の先端部の高いところにイワシ雲が現われます。イワシ雲が見られるのは低気圧の中心から北東へ500ないし800キロメートルくらい離れたところです。したがってそのまま低気圧が近づいてくれば、翌日ないし翌々日は雨が降ることとなります。しかし、低気圧の移動の方向によっては雨の降らないこともあり、ウロコ雲がみられて翌日ないし翌々日雨の降る確率は70%くらいです。

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渡り鳥早く来れば寒気はげしい

冬鳥は冬に向かい気候が寒くなるにしたがい北の方から渡って来ます。したがって冬鳥の渡りが早い年には、ふつうはそれだけ寒さも早く到来することが多いのです。そして寒さが早く来る年というのはいつもの年よりも早く大陸の高気圧が発達して、そのため大陸から冷たい空気が日本の方へ流れ込んで来る年なのです。
 そしてこれにともない空気の流れも変り、この流れに便乗して渡り鳥が渡来します。渡鳥が早く渡来する年は大陸の高気圧がいつもの年よりも早く発達する年で、そうした年には冬の寒気がはげしいのです。
 ところで秋の大陸方面の高気圧の高い時に冬の日本の気温が例年より低く、寒気がはげしいかどうかを調べて見ると、こうした関係はある程度認められます。したがって渡り鳥が早く来る年には、冬の寒気がはげしいといえますが、この場合にはある種の冬鳥だけでなく多くの冬鳥が全般的に早く渡って来るような年についてです。

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奥山に紅葉早ければ雪早い

冬に落葉するもののうちには秋に美しく紅葉するものが多く、その代表的なものはカエデ類です。秋がふけて気温や地温がしだいに低くなると、葉のつけ根のところに離層が形成されて、葉の炭酸同化作用でできた澱粉や炭水化物が葉から茎の方へ転流しにくくなります。そのため葉の中の炭水化物が増加し、これが細胞液にとけて紅色の色素である花青素が増えて紅葉となります。
 したがって気温の下がりかたが紅葉と密接な関係にあり、いつもの年よりも気温が低くなる年にはそれだけ紅葉の季節も早くなります。
 ところで奥山の紅葉が早いということは、奥山はふつうは標高が高いところで、そこが例年より早く冷えたことになり、いいかえれば上層の空気の冷えかたが例年より早いことを意味します。いいかえれぽ、こうした年には例年よりも早く大陸の高気圧が発達している時で、一般に季節の進みの早い年であるから雪の降り始めるのも早くなりがちです。

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ダイコンの根が長い年は寒い

ダイコンの根の成長と地温とは密接な関係にあります。地温の低いところの根と地温の高いところの根は違い、普通は同じ品種の大根ならば地温の低いところのものは根が細長くなり、地温の高いところのものは太くなるそうです。このことはよく知られていることですが、ダイコンの根は一般に非常に温度に対して敏感であって、寒暖を早く感知する性質があるようです。そして一般に寒い年には地下深く根をおろす傾向があります。また暖かい年には根をそれほど深く地中におろさないで、根が肥大する傾向があります。したがって根が長い年にはいつもの年よりも寒いといえます。
 しかし、これは実際に温度が低いことに反応して根が長くなったわけで、この根の長さでそれから先の寒さを予知することができるとは限りません。たとえば秋に気温が低く根が長い時にも、秋の寒さと冬の寒さが、かならずしも比例しませんから、秋のダイコンの根の長さで冬の寒さをいつも予知できるとはいえません。 

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ムギの発芽早ければ大雪の兆し

 秋に入っていつもの年よりも季節の進みが早く、天気のよい日が続くような年には、夏作物の収穫が早目となり、ムギ播きが順調に行なわれ、その結果ムギの発芽も早くなります。またムギの発芽の速さには気温よりも地温が大きく影響し、ムギの発芽期の天気がよいと、夜間はよく冷えるが、昼間は日射を受けて地温が高くなり、そのためにムギの発芽が早くなります。
 いずれにしてもこうしたムギの発芽の早くなるような天気条件は、いいかえれば発達した移動性高気圧がしばしば通ったり、発達した帯状高気圧におおわれることが多く、秋晴の続く年とみてよいでしょう。
 こうした年には秋にシベリア高気圧の勢力がいつもの年よりも、がいして強い年とみることができます。またそのような年には、とかく冬にも大陸の高気圧の勢力が強くなり、寒さのきびしい年となることが多いようです。その結果雪が例年に比べてたくさん降ることがよくあります。

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落葉早ければ雪が早い

 秋に日最低気温が3〜4度以下に下がるような時期、いいかえれば霜がみられるころになると多くの落葉樹は落葉しはじめ、その後一か月くらいですっかり落葉してしまいます。
 ところでこの落葉の時期は年によってちがいます。いうまでもなく、早く寒さの訪れる年にはそれだけ落葉が早くなります。ここで7〜8割がた落葉するころの時期が例年より早いような年についてみると、このころに20日間くらいにわたって、例年より気温が低かった年であったといえます。
 こうした年には、20日間くらいにわたって大陸の高気圧の勢力が例年よりも早い年とみてよく、こうした傾向は持続性が大きいから、寒気の深まりかたも例年より早くなります。そして雪は気温が3度以下に下がると、雨が雪となって降る確率が大きくなるので、早く寒くなる年にはそれだけ雪も早く降るとみたほうがよいでしょう。こうした年には、とくに北日本の山岳部や日本海沿岸地方では雪への準備をいそいだほうがよいでしょう。

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秋、南風が多い時は大雪となる

晩秋になると北の地方から雪が降り始めます。北海道の平地ではふつうは10月下旬になると雪が見られるようになり、平地の降雪前線はしだいに南下し、11月下旬には東北地方と北陸地方の全域に及びます。
 秋が深まるにしたがい、大陸の高気圧が発達するので日本は寒い北西の風にさらされることになり、寒さが加わり、気温の低い山ほど早く雪が見られるようになります。
 ところで晩秋に北海道や東北地方では時に大雪が降ることがあります。最近は気候が温暖化したのでこうした大雪があまり見られないようになりましたが、明治時代以前にはよく見られたようです。
 このような大雪に対して「秋、南風が多い時は大雪となる」ということがよくいわれたようです。こうした大雪は低気圧が通る時に見らます。.低気圧の前面では南寄りの風が吹き、これに大陸の方から吹いて来る寒風が吹き込むので大雪となる機会が多くなるためにこうしたことわざがいわれるようになったようです。

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秋の夜、北風は晴れとなる

このことわざは愛媛県などでいわれていますが、こうした天気関係は、中国、四国地方の海を控える平野地帯で適用する地方が多いようです。北に海を控える地方では移動性高気圧が近づき天気がよい夜には、海にくらべて陸の方が冷え込むので、冷えた空気が陸から海の方へ向かって流れ、南風である陸風が発達することとなります。ところが移動性高気圧は低気圧とちがって、時計の針と反対方向の渦巻ですから、その前面では北寄りの風が吹くこととなります。
 しかし、こうした地方で秋の夜に北の風が吹くのは移動性高気圧にともなう北風が陸風を上回る場合ですから、それだけ優勢な移動性高気圧の到来を意味することとなり、まちがいなく翌日は晴れます。また南に海を控える地方では、移動性高気圧の渦による風向きと陸風とが同じ方向の北風となりますから、この場合にはいうまでもなく晴れることとなります。ただ夜に北の風でも曇雨天の時には翌日晴れるとはいえないでしょう。

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西の山が見えれば天気

西の山に雲や霧がかかっていないでよく見える時には翌日の天気がよいということわざで、日本各地でいわれています。天気がくずれる原因は低気圧であり、日本付近を通るといわれる温帯抵気圧の多くは西から東へ移動します。そしてこの低気圧は時計の針と反対方向の大きな空気の渦巻です。したがって、低気圧が西から近づいて来る時には、その前面では東寄りの風が吹くことになります。この風は太平洋の方の湿った空気による風ですから湿度が高く、この風が吹き込むと霧や雲が発生しやすくなります。とくに東風が山に吹きあがると、空気が冷えてその空気に含まれている水蒸気が霧となり雲となって、その結果山が見えなくなります。こうした時にはやがて雨が降りはじめますが、これに対し西の山がよく見える時には高気圧圏内で西の方に低気圧の無い時ですから、その翌日は晴天となることが多いのです。この傾向はとくに春や秋に顕著です。