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空夢の部屋

8月の天気ことわざ

太平洋高気圧の勢力が強いと、蒸し暑い日が続く。年々猛暑日が増える傾向にある。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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雲が南から東へ動くと晴れ

 雲が南から東へ動くと晴 雲は上層の空気の流れに沿って流れるから雲の流 れから上層の空気の流れの様子を知ることができます。 この雲の流れの方向から天気を予知することわざはいろいろいわれていますが、そのうちでも「雲が南か ら東へ動くと晴」「雲、西より東すれば晴れる」「雲 が西から南へ進めば晴」ということがよくいわれて います。 日本付近を通る低気圧は時計の針と反対方向の大きな渦巻で西から東へと移動します。したがって低気圧の進路によってちがいますが、雲が南から東へ、西から東へ、西から南へ流れる時にはだいたい低気圧が通った後ですので、低気圧が通ってしまうと一応天気が回復して晴れることが多いのでこのようにいわれるのでしょう。以上のことは台風についてもいえます。ただ低気圧や台風が太平洋側を東進した時にはあてはまりません。春や秋には約一週間の周期で天気が変化するので低気圧が通り晴れると、その晴天は2、3日続きます。

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夕虹三日の照り

 「夕虹三日の照り」あるいは「朝虹は雨、夕虹は晴」ということが各地でよくいわれています。夏の天気のよい日の夕方に雷雨がよく発生することがあり、この雷雨が通り過ぎた後などに美しい夕虹が見られます。夏の雷雨は熱雷であって、太平洋高気圧におおわれ天気がよく、暑い日の夕方に発生することが多いのです。これは夏の強い日差しで地面があたためられて、局地的に強い上昇気流が起るからです。したがって、夏にしばしば夕虹が見られるような時には、太平洋の高気圧が例年に比べて著しく発達する年であり、こうした年にはこの高気圧にさまたげられて日本の上を低気圧が通ることがでぎず、そのため本格的な雨にめぐまれないで日照りとなりやすいのです。ここに三日の照りといっていますが、必ずしも三日晴天が続くとはかぎりませんが、少なくとも二、三日は本格的な雨の降るようなことはないと見てよいでしょう。したがってこうした時には節水に努める必要があります。

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東天に赤雲の出るは大雨の兆し

 このことわざは主に太平洋沿岸地方で晩春から初秋にかけてよくいわれています。夏に大雨の原因となるのは発達した低気圧や台風であって、朝方にこれらの勢力範囲に入ると、南ないし東南の方から湿気を多く含んだ空気が太平洋上を渡って流れて来るようになり、このため太陽光線のうち波長の短い青色の光は空中の水蒸気に吸収されますが、波長の長い赤色の光は吸収されないので、しわゆる朝焼となり、これが雲に反映して赤雲が見られることとなります。いいかえれば赤雲が見られる時には、台風や発達した低気圧が近づき低気圧は時計の針と反対方向の渦巻ですから、その前面では南寄りの風が吹き、勢力が強く大雨を降らすような低気圧の場合には湿気を多く含んだ南寄りの風が吹く範囲が広く、ここに朝日が射し込むと夕焼と同じ原理で朝焼となり、このため雲も赤く見えることとなります。したがって東天に著しい赤雲が現われた時には応大雨を警戒したほうがよいでしょう。

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彗星(すいせい)は天変地異の兆(きざ)し

 太陽系の星のうちで形がはっぎりしないでぼんやりした光のかたまりのように見える星を彗星(すいせい)といい、箒(ほうき)のような形に見えるので箒星(ほうきぼし)ともいいます。この星は他の惑星のように大きくなく、頭の部分のよく輝くところは、固体と気体の混合物で、尾の部分は気体だといわれています。彗星の軌道にはいろいろあり、一度だけで永遠に見られないものや、軌道が細長い楕円形で、何十年か、何百年かに一度だけ見られるものもあります。こういった彗星を同期彗星といいます。
 太平記や北条九代記などには、彗星の現われた年に大地震があったり、泥の雨が降ったりという記録があり、彗星は天体の異常を暗示する恐怖感からこうしたことがいわれだしたのでしょう。ただ、気象について見ると、流星雨の見られた翌年に気温が低かったり、雨が少なかったという傾向が割合に明らかに認められていますが、これらの因果関係は解明されていません。

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月色きわめて赤きは干天の兆し

 月や太陽が赤く見える原因にはいろいろあります。空気中に水蒸気や細かい水滴や細塵が浮遊している時には月の色が赤く見えます。これは細塵のために月光のうちの波長の短い光が吸収され、波長の長い赤系統の光が到来するので赤く見えるのです。いずれにしても空中に浮游している細塵は地面の上から舞い上ったもので、細塵が舞い上る条件は天気がよく地面が乾繰している時に強い風が吹くことにより起るものです。こうした空一面をおおうような細塵は日本では中国の方から飛んで来る黄砂による場合が多く、また日本でも日照りが続いた時に強い風が吹くとやはり細塵が舞い上ることがあります。こうした細塵により月の色が赤く見えるような時には、すでに相当雨が降らない日の続いた時ですから、こうした時には干ばつを充分警戒する必要があります。ただ極めて薄い高層雲に空がおおわれている時にも空が赤く見えることがありますが、この場合には前線に原因する雨が降ることがあります。

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夏の南風は晴れ

夏に南風が吹く日には晴れることが、多くの地方で言われています。夏には太 平洋上に小笠原高気圧が発達しやすく、特にその勢力が強く、日本列島をおおい 、朝鮮の方まで張り出し、日本列島上の等圧線が南高北低型となるようなときには、南よりの風が吹き晴天となるときが多いようです。このような現象は、東北 中部以西の地方でよく見られ、中でも中部地方から関東地方にかけて顕著なようです。尚、夏に同じ南風でも強い南風が吹くときには、低気圧が近づいているときですから、雨が降り始めます。また、非常に蒸し暑い南風が吹くときには台風 が接近していることがありますから風水害にも注意が必要です。尚、南に海を控 えている地方では南風は海風で、これが昼間に発生するようなときには晴れます 。

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夏の入道雲は晴れ

夏の天気の良い日の午後には、入道雲が見られることがよくあります。いわゆる入道雲は積乱雲のことで、強い上昇気流が起きて、水蒸気を含んだ空気が上昇 し冷え凝縮してできた雲で、雲の頭部は円錐状に幾重にも盛り上がり、いわゆる 入道頭に似ているのでこのように呼ばれます。この雲は、天気の良い日の午後に よく見られ、雷雨を伴うことも多いので雷雲とも呼ばれます。夏の暑い日の午後に現れる入道雲は天気が非常に良く、地面が強い日射しで暖められるときに発生 します。言い換えれば、太平洋高気圧の勢力が強く、この勢力圏内にはいった時に入道雲が見られます。こういったときは、低気圧や台風は日本付近に近寄らな いし、急に太平洋高気圧が弱まることもないので、翌日は晴れると見て良いでしょう。 

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風なき年は日照り年

このことわざは夏の天候について言っていると見て良いでしょう。風なき年とは、強い風が吹かない年ということで、夏の強い風の原因といえば台風です。し たがってこれは、台風が来襲しないような年には日照りになるということです。 台風の日本への来襲数は、台風の発生数よりも、発生した台風がどのようなコー スで進むかによって大きく変わります。夏の太平洋の高気圧の勢力が強いと、台 風の進路がこの高気圧に妨げられて、西の方へそれるし、また高気圧の中に入る と勢力が衰えて東へ流されてしまうことが多いのです。この勢力下では晴天が続き、台風による雨も降らないので日照り年となりやすいようです。

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雷はげしく鳴る時は後晴れ

はげしく鳴る雷には二つの場合があります。その一つは発達した前線が通るときに、この前線に沿って強い上昇気流が起こって、いわゆる前線雷が発生する時です。前線に伴う雷がはげしいときには、多くの場合その前線の滑走面に沿って強い上昇気流が起こるからで、そうしたときには前線の移動の速さもはやくなることが多く、前線が通り過ぎると晴れます。しかしこの場合は、からっと晴れ ないことも多いようです。
 もう一つは、夏によく見られる熱雷の場合です。日本が太平洋高気圧におお われて天気がよいと、太平洋上から湿気を含んだ南風が吹き込み、この風が地面 が熱せられて起こる上昇気流と一緒になってそこに熱雷が発生するわけです。この種の雷は、午後に発生し、天気がよいほど上昇気流が強くなるので、それだけ激しい雷が発生します。言い換えれば、激しい雷が発生するようなときには、それだけ太平洋高気圧の勢力の強いときであるわけですから、少なくともその後、1・2日は晴天となることが多いのです。

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池・沼・河の水の泡立ち多き時は雨近し

日によって池や沼や河水の水面に浮かぶ泡が違います。この泡がとくに多いときにはやがて雨が降り出すと言われています。低気圧が近づいているときには 、その前面ではまず南よりの暖かい空気が吹き始め、そのため気温が高くなるのです。暖かくなると池や沼や河などの水温もそれにつれて高くなり、底に沈んでいるいろいろな有機物の腐敗が促進されるためにガスの発生が多くなり、泡立ち が多く見えるわけです。
 また、低気圧が近づいて来ると雨が降り始める前に風が強くなり、この風で水面が泡立つように見えることもあります。流れの速いところでは腐敗物が流されてしまうのでこうした泡立ちは見られませんが、汚れた池・沼・よどんだ河などで見られます。こうした現象は寒候期にはほとんど見られず、暖候期に見られる特徴です。

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流星多ければ日照り続く

夏の夜空に流星が多く見られるような時には日照りが続くという意味のことわざは日本ばかりでなく世界的にもかなり広くいわれています。従来の流星がとくに多く見られた年と流星のあまり見られなかった年について調べて見ると、昭和8年(1933)や大正2年(1922)の両年などは流星雨が異常に多く出現して、しかもこの両年とも日照りとなりました。しかしこれに対し、昭和14年(1939)や昭和15年(1940)には大干ばつでしたが、いずれの年もとくに流星の多い年ではありませんでした。また、さらに多くの年について、流星と日照りとの関係を調べて見ると、流星の多い年を中心として日照りとなる年が多いという傾向のあることが認められます。こうした傾向が認められるのは、流星が日照りの原因となるというより、日照りになると、空気中の水蒸気が少なくなり、空が澄んで、そのために流星がよく見えるようにたるためでしょう。

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水田の除草不用の年は冷害

このことわざは主に山形県地方で昔からいわれていますが北日本全般についてもいえます。冷害、とくに大冷害が発生するような年には、6月ころからすでに例年より気温がかなり低く、そのため稲の分けつ・出穂期の盛夏期になっても水田の草の発育が悪く、草があまり繁茂しないために、天候がよく豊作となる年にくらべるとあまり除草をしないですむことが多いからです。したがって北日本で除草をあまりしないですむような年には、稲が冷害を受けて不作ないし凶作となることが多いようです。しかし、ヒエは不良天候にかなり強く、冷害年にも繁茂することがありますから、除草を全く行なわないですむようなことはないでしょう。凶冷のために稲が冷害を受けて、収穫が全く望めないからといって除草を怠ったりすると、その翌年には雑草が著しく繁茂し、草害を受けることになりますから、天候が不良で稲の作柄があまり望めない時にも除草をおこたらないようにすることが大切です。

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雲が速く走るときは天気が悪くなる

 雲の流れがいつもより非常に速いことがあります。このような時には、上層に強い風が吹いている証拠とみてよいでしよう。低気圧が近づいて来る時には、この気圧の低いところに向かって周囲の空気が流れ込むので、低気圧が近づいてくるほど上層の風が強くなり、雲の流れが速くなります。したがって低気圧の勢力が強いほど、また低気圧が近いほど雲の流れは速くなり、やがて天気が悪くなり、風雨が強くなります。
 また、低気圧が遠くにある時には上層の雲の流れが速くなり、低気圧が近づくにしたがって下層の雲が多くなり、その流れが速くなります。したがって下層の雲、すなわち色の黒っぽい層積雲や乱層雲が飛ぶように流れてゆく時には低気圧や台風がかなり近づいている証拠で、天気が悪くなることはまちがいありません。よって風雨に対する対策を充分講じておく必要があります。この場合、雲の流れが反対方向に変れば風雨の心配はしないでもよいでしょう。 

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太鼓の音さえるは晴、にごるは雨

太鼓の音色は天気でちがうので、その音色により天気を予知することができます。空気が乾燥している時には、太鼓の皮も乾燥するうえに、音の伝播する空気も乾燥しているので音がさえて聞えます。大陸の高気圧におおわれる時には空気が乾燥しているので、太鼓の音がさえて聞え、そうした時にはとくに太平洋沿岸地方は晴天となります。しかし夏には太平洋上の高気圧の勢力が強く、この高気圧におおわれ晴天となりますが、この場合には太平洋上の湿った空気が流れ込むので太鼓の音のさえかたと晴天との間には、あまり密接な関係が認められないようです。したがって、太鼓の音がさえるは晴れというのは夏よりも春、秋、冬に目立つ現象です。一方太鼓の音は空気中の湿度が高くなるとさえないでにごります。この関係は夏でも冬でも同じであるから、太鼓の音がにごったら雨が降ると見てよいでしょう。このようなことから見てこのことわざは移動性高気圧の通りやすい春や秋によくいえることでしょう。

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高い山に縁取り雲が現れると雨

高い山には時に縁取雲(くまどりぐも)が現われることがあります。縁取雲とは山肌に沿って、山の形を縁取って現われる雲のことで,かいまき雲ということもあります。天気がよい日の昼間は山肌が太陽であたためられて山肌に沿った空気の温度が高くなります。このため空気の密度が小さくなり、軽くなって山肌に沿って上昇気流が起ることとなります。空気は上昇すると気圧が低くなり、断熱的に冷えます。このために空気に含まれている余分の水蒸気が細かい水滴となり、これが、遠くから見ると縁取雲として見えるのです。いいかえれば、縁取雲が現われた時には下層の空気中の水蒸気が多くなってきた証拠ともいえます。ところで、低気圧が西の方から近づいて来る時には、太平洋上の湿った暖かい空気が吹き込み、これが山に吹きあがって縁取雲となることがよくあります。この雲が現われれば、やがて低気圧が来て雨が降ることがよくあると見てよいでしょう。

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白雲糸を引けば暴風雨

青空に高く、糸を引いたように見える美しい白雲が見られることがあります。この雲は高さ6000m以上の高い所に発生した雲で、糸を引いたように見えるのは、上層に強い風が吹き、そのために発生した雲が流されているからです。「白雲糸を引けば暴風雨」というのは、台風などが近づいてくる時にはその前面の上層部の風がまず強くなり、糸を引いた白雲が見られることがよくあるからです。
 この場合、台風は南の方から接近するので白雲の流れの方向はだいたい南の方へ向いています。ただ、台風の前面ではかなり広い地域にわたって糸を引く白雲が見られますし、また台風の進路は急に変ることもあるので、白雲が糸を引いたからといって必ず暴風雨があるとはいえません。糸を引いた白雲が見られ、ついで低層雲が多くなり、それらが南へ向かって急走するような現象がおきた時には台風を警戒しなけれぱならないでしょう。

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沖鳴は雨

太平洋に沿う海岸に近い地方では遠雷のような沖鳴、すなわち海鳴を聞くことがよくあります。これは海の波のうちでも波長の長いうねりが、海岸でくずれる音であって、うねりは台風などが沖合にあるときに聞かれます。海鳴については小川善郎氏が長崎県五島の富江でかなり詳しく調べておられます。それによると、海鳴がもっともよく聞かれるのは夏で、年間の52.3%が夏で、次が春で24.5%、秋は13.8%、冬はもっとも少なく9.4%となっています。海鳴の聞かれる方向は、南がもっとも多く、次いで南東.南西で、西から北にかけては全く聞かれていません。またよく聞えるのは台風が200kmくらいの沖合にある時で、400km付近より近くなると、かえって聞えなくなるようです。これは風波によりうねりが消されるからです。いずれにしても海鳴は、台風が発達した低気圧が近づいている時に聞かれるものですから、海鳴が聞かれるような時には一応風雨に注意したほうがよいでしょう。

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猫が草を食うと雨

猫はふだんは草を食べたりしない。したがって猫が草を食べるのはいつもとちがった行為で、これが天気変化と関係があろうと考えられているようです。一説では、晴天が続くと猫が水を飲む機会が少なくなり、便秘になりがちとなるので、便通をよくするためと、露のついた水気のあるものがほしくなるために草を食うようになるといわれています。また雨が少ないと、猫は草を食べるのが目的ではなく、足で顔を洗うかわりに草で顔をこするために顔をよく洗うともいわれています。乾繰すると猫の毛に静電気が起りやすく、むずむずするので草に顔をおしつけるのではないでしょうか。いずれにしても、猫がこうしたしぐさをすることは、比較的珍しいことで、長い間、雨が降らない時にこうしたことをすれば、珍しいことが起こるというわけです。いいかえれば長い間雨が降らない時に珍しく雨が降るようなことがあろうということで上のような言い伝えがいわれるようになったようです。 

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夕虹は晴れ

虹はその地域全面にわたって雨が降るような時には全く見られません。虹は晴天だが、どこかに雨が降る時に見られます。夕虹は太陽が西にある時に、東の方で雨が降り、その雨滴が太陽光線を受けて反射して東の空に虹として見られることになります。したがって夕虹が見られる時は東の方で雨が降り、西空は晴れている時なのです。
 日本付近を通る温帯低気圧は西から東へと移動するものが多いので、天気が悪くなる時には西から天気が崩れてきます。したがって夕方に西の空が晴れているような時には、西の方から近づいている低気圧が無い時とみてよく、翌日は晴れるとみてよいでしょう。そして夏に西が晴れて東に雨が見られる場合は、雷雨に原因することが多いものです。夏の雷雨は熱雷で、熱雷は日本が太平洋高気圧におおわれ天気のよい時に発生しやすく、そのような時には、2、3日晴天が続くことが多いものです。こうしたことからも夕方に出る虹のときは晴れといえます。 

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ソバの花がよく咲くと大雪

ソバの花が咲くころに台風に襲われず、また異常低温にも見舞われないで天候が良好な年にソバの花がよく咲きます。しかしソバの花が咲くころの天候がよければ、冬に大雪が降るという理由はありません。このことわざは、白いソバの花が咲ぎ揃った光景があたかも雪が降り積った時のように見えるので、これから連想してその年の冬に大雪が降るだろうといったのでしょう。
 ソバとその栽培期間の気象との関係を調べて見ると、ソバは救荒作物といわれていますが、案外気象の影響を大きく受け、9月の気温が平年より低く、日照が少なく、降水量が平年より著しく多い年には凶作となる傾向があります。ソバの花がよく咲く年とは9月の天候のよい年で、いいかえれば早冷でなく、台風の襲来も少ない年であり、こうした年の冬について調べて見ると必ずしも大雪になるとはいえません。またソバの花の咲くころの天候とその年の冬の雪との関係を調べてみてもあまり密接ではないようです。

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太陽黒点の極小期に凶冷

太陽の黒点は1603年(慶長3年)に望遠鏡が発明されてからまもなく発見され、以来引続いて太陽面の黒点数が観測されています。この太陽黒点の観測結果を見ると、太陽の中緯度地帯から赤道に向かってしだいに増加し.黒点数が極大に達すると、しだいに減少し極小となり、こうした変化をだいたい11年くらいの周期でくりかえしています。
 太陽黒点は太陽面上で起る噴火のような現象であって、太陽黒点が多い時には太陽活動が盛んで、太陽黒点が少ない時には太陽活動の弱い時です。こうした太陽活動の強弱は当然地球の気象に影響するであろうということが考えられます。1755年から1980年までの225年間の太陽黒点の変化と日本の米作の豊凶との関係を調べてみると、極小期に凶作となった時は、極小期21回のうち凶作年が12回あり、必ず凶作になるとはいえないが、他の時期より集中しているので一応注意が肝要でしょう。数年前から天文学者たちは、太陽は2012年前後に激しいフレア活動や黒点増加がみられる活動極大期を迎えると予想してきました。しかし最近、太陽はその予測とは正反対に、異様な静けさを見せています。極めて珍しい予測外の現象で、今後、黒点周期は休止期に入るとみられています。黒点が著しく減少する太陽活動の休止期は17世紀以来はじめてです。 

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木の実の少ない年は大風吹かず、たくさんなる年は大風

 このことわざは福井県その他でいわれています。大風が吹くと思われる時には、風害をうけて実が落ちて少なくなってもさしつかえないように予め多くの実をつけるだろうと考えてこのようなことをいったのでしょう。実際には大風が吹くような年と、吹かない年では気圧配置がちがい、夏期から初秋にかけて太平洋の高気圧の勢力がいつもの年よりも強く、日本から朝鮮半島のほうに張り出している時には、この高気圧に妨げられて台風が中国や東支那海方面に進むか、日本の遙か南の海上を東へ進むものが多いようです。こうした時には、昭和53年のように日本が干ばつ気味となり、干害を受けて落果するものが多くなります。したがって、台風が全く来ない年よりも、適当に台風が訪れ、雨をもたらす年のほうが結局はたくさんなることになります。これに対し「ナシ、カキ鈴なりに実る年は大風あり」ともいわれています。

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東の雷、雨降らず

夏期に太平洋の高気圧の勢力が例年にくらべて強い年には、日本が太平洋の高気圧におおわれて天気がよく、熱雷が発生しやすいものです。たまたま日本に沿って気圧の谷ができやすく大気が不安定な状況になり、界雷や前線雷が発生しやすいのです。雷についてのことわざは多いのですが、そのうちの一つに「東の雷、雨降らず」というのがあります。夏によく発生する雷には、日中局所的に地面が強くあたたまりそこに強い上昇気流が起って生ずる熱雷が多く、この上昇気流は高さ1万メートル以上にもおよびます。
 ところが上層では常に強い偏西風が吹いているので、雷はこの風で東の方へ流されます。したがって、熱雷の場合には東から西へ移動することはないから、東の雷なら安心していてよいといえます。しかし、西の雷は東へ移動するから西の空へ入道雲を見たら雷雨を警戒したほうがよいでしょう。

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アリが巣を高い所につくると洪水、低い所につくると暴風

このことわざは、日本ばかりでなく世界各国でいわれています。夏の洪水は、低気圧が通りやすい状態になっている時に、たまたま発達した低気圧や台風が通ると大雨が降り洪水となることが多いものです。そのためアリは洪水となる前に、地下水位が高くなるとともにこの水湿に追われて、水の脅威を受けない高いところへ移動します。したがってアリが高いところへ巣をつくるような時には洪水が出やすいから注意したほうがよいといえます。同じような意味から「アリが卵をはこぶと大雨が来る」ともいいます。
 一方低い所に巣をつくると暴風というのは、高いところは暴風の害を受けやすいからというのでこうしたことをいったのでしょうが、アリにそのような予知能力があるとは思えません。暴風年とそうでない年があるので、暴風のために低いところに巣を移すことからこうしたことをいったのでしょう。大量の降雨を伴う台風の場含には必ずしもこうとはいえません。