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空夢の部屋

10月の天気ことわざ

秋雨前線の活動が気になる。この前線が南へ下がって消えると、一気に秋らしくなる。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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落葉前に雪がくれば雪が少ない

 ケヤキ、 キリ、イチョウその他の多くの落葉樹は、北の地方や高山では10月下旬以後になると落葉するものが多くなり、 落葉前線が南下して11月下旬 になると九州南部に達します。これに対して初雪日は北海道、東北地方などでは 落葉期とだいたい同じ時期ですが、関東以西の地方では落葉より初雪の方が早く見られることがよくあります。したがって、このことわざは関東以西の地方でいわれることわざと見てよいでしょう。それにしても落葉樹がすっかり落ちる前に雪が見られるということは割合に珍しいことです。こうした異常に早い初雪は、たまたま寒波が流れ込んで来て起るのですから、冬に大陸の高気圧の勢力が強くなり、雪が多くなったり、冬の大陸の高気圧の勢力が異常に弱いために雪が少なくなるということとはあまり関係がありません。異常に早く雪が見られると、その冬は雪が多いのではないかと連想しがちで、こうしたことを否定する意味でいわれたことわざと見てよいでしょう。

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秋の霞は30日以内に大雪となる

 秋が進み、気候がある程度寒くなると、夜の冷え込みがしだいにひどくなり、空気が冷えると、その空気に含まれている水蒸気が、水蒸気の形で存在することができなくなり、凝結して小さい水滴となり、霧が発生します。したがって秋には夜間から早朝にかけて濃霧の見られることがよくあります。この霧は朝となり、太陽で地面があたためられ、その上の気温が高くなると、下層の霧が蒸発して消えて、上層の霧だけが残る。それで早朝には高さ200メートルないし300メートルくらいのところに霞が棚引くのをよく見かけるようになります。こうした霞が見られるような寒さの気候になると、地上の気温が0度以下に下るようになるので発達した低気圧が通るような時には、雨でなく雪となり、北陸地方では大雪を降らすことがよくあったのでこうしたことわざがいわれたのでしょう。なおこのことわざは東北地方の日本海側の地方でも適用することができます。

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秋に雨が降ればネコの顔が三尺になる

 秋に雨が降ればネコの顔が三尺になるというのは、秋に雨が降るときには暖かくなるのでネコがのんびりして心地よがるという意味で、これは秋に雨が降るときには暖かいということを面白く表現したものです。秋には移動性高気圧と低気圧とが週間くらいの周期で交互に通ります。移動性高気圧が通る時には、秋晴のよい天気となりますが、大陸から寒気を持ってくるので気温が下がり、とくに夜間は晴天のために夜間放射量が多くなり、著しく冷えて霜が降りたりします。ところが低気圧が通過する時には、この低気圧の南側には南東に伸びた温暖前線と南西に伸びた寒冷前線ではさまれたところが暖域で、低気圧が近づいてくるにしたがい暖かくなり、やがて温暖前線で雨が降り、雨が小やみになった後も寒冷前線が接近するまでは暖かいのです。こうしたネコの顔が三尺になるような暖気が週間くらいの周期で到来するのは10月中・下旬で、11月に入ると帯状高気圧におおわれ寒さのほうがまさってきます。

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落葉早ければ雪が早い

秋が深まるにしたがって落葉樹の葉が落ち始めます。葉が落ちるのは葉柄の付根に離層というコルク層が発達するからで、朝方の最低気温が12度以下に下るようになると落葉が見られはじめ、盛んに散るようになるのは最低気温が9度以下に下がるようになる時期からです。落葉の時期は年によりちがい、これについて「落葉早ければ雪が早い」ということがよくいわれています。落葉はある日の気温が急に低くなってもすぐ葉が落ちるものではなく、何日か低温な日が続くと離層が発達して落葉します。また落葉のきっかけには強い風も関係します。風速6メートル以上になると落葉するものが多くなるようです。何日か気温の低い日が続き、かつ強い風が吹くような日が、例年よりも早く、落葉の早い年には、いいかえればいつもの年よりも大陸の高気圧が早く発達した年ですから、早く寒くなり、雪も例年より早く降り始めることが多いのでこうしたことわざがいわれます。

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朝日天をこがすごとく赤ければ大風

「東天に赤雲の出るは大風の兆し」とか「朝焼けは雨または嵐」など、このことわざと似たことわざが各地でいわれています。これは暴風雨の原因となるような低気圧が近づいて来る時には、南の方から水蒸気を沢山含んだ暖かい空気が流れ込んで来たり前線の影響を受けて風が強くなり、そのために砂塵が吹きあげられて、空高いところまでの空気中に細かい塵挨が多くなるのです。これらに目光のうちのある波長の部分が吸収され、その結果として雲や空が赤く見えたり、黄色く見えたりするのです。すなわち、朝日のために天を焦がすように赤く見えるような時には、空の高いところまで細塵が多く浮遊している時で、こうした時にはかなり広地域にわたって相当強い風、いいかえれば風速が一秒について7メートル以上の風が吹いている時なので、現在それほど強い風が吹いていなくても、やがて大風となることが多いので、風害に充分注意したほうがよいでしょう。こうした大風は秋から早春にかけて見られます。

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柿の葉の早落ちは早雪の兆し

冬に向かい気候が寒くなるにしたがい、柿の葉は朱、紅、黄のいりまじった柿独特な紅葉となり、やがて葉柄の根元に離層が発達して落葉します。柿の葉は葉肉が比較的厚く、光沢があり、がっちりした感じを受ける葉であるだけに落葉に哀感を覚え、厳粛な季節の進みを痛感します。柿の落葉の時期は地方により違い、北の地方ほど、また標高の高いところほど早いものです。北の地方や、標高700m以上の地方では11月の初めに落葉し始め、関東地方以西のこれより低い山岳地帯では11月中旬に落葉し始め、関東以南の太平洋に沿う平野地方では12月に入ってから落葉する地方もあります。この落葉の時期は秋の天候により早くも遅くもなります。普通はしだいに落葉し、全部が落葉してしまう時期が早い年には、落葉期を通じて全般的に例年より低温で、冬の季節風の勢力が例年より早く強くなった年で、いいかえれば冬の訪れの早い年であるから雪も早く降り始めることが多いようです。

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朝窓には雨が降る

朝、東の空が一面に曇っている時に、あたかも窓が開いたようにポカッと雲の切れ目があって、そこから日光が差し込んだりすることがあります。こうしたときは、その日の内に雨が降り始めるということわざがよく言われています。雨の原因となる低気圧が近づいて来るときには、その前面ではまず南よりの風が吹き始め、この暖かい湿った空気が、温度の低い空気の上に吹き上げると、そこに温暖前線が形成されます。この低気圧に伴う温暖前線が近づくと、その前面では次第に雲が増えて、やがて全天が雲で覆われてしまいます。ただ、このようなときに上層の風が乱れていると、その乱流の影響を受けて雲にむらができ、局所的に雲が破れて、いわゆる朝窓がみられるようになります。従って朝窓がみられたらやがて雨が降り始めるとみて良いわけです。こうしたことは、朝に限ったことではないのですが、朝の天気予知は、その日の仕事に関係があるので、特に朝窓といったものと思われます。

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男心に秋の空

秋の空が変わりやすいのを男心にたとえて、「男心は秋の空の如し」とか「秋の空は七度半変わる」などと古くからいわれています。一茶も変りやすい自分の心を秋の空にたとえて「恥じやおれが心と秋の空」という句を作っている。秋になると、大陸の方から移動性高気圧がやってきて、この高気圧におおわれる時には天気がよく、夜は冷えるが、移動性高気圧が通ってしまいますと気圧が来て雨が降ります。
 このような天気変化の周期は一週間くらいですが、そればかりでなく、初秋から中秋にかけては夏のころのように小笠原高気圧の勢力が強くないから、大平洋の方から吹き込む暖気と、大陸の方からの冷気とが接触してできる前線が不安定となり、日本の上を南下したかと思うと北上して来て、このために天気が変りやすく、天気予報官泣かせの季節でもある。こうした状態も10月中旬になると、だいぶ落着いてくるのが普通です。 

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ひと雨1度

秋の気温の下がりかたについて「ひと雨-度」ということがいわれています。これは雨が降るごとに気温が1度くらいの割合で低くなるという意味です。10月から11月にかけては移動性高気圧と低気圧とが約一週間の周期で日本付近を交互に通ります。したがってならしてみると、一週間に一回くらいの割合で雨が降ることとなります。このころの実際の気温の下がりかたはどうかというと、日最低気温の平年値で調べてみると、10月の初めから11月の月末にかけての一週間平均しての気温の下がりかたは札幌と東京では1.3 度、福岡では1.2 度です。したがっておおざっばには、日本各地とも一雨降るごとに実際にも1度強くらいの割合で寒くなるとみられます。ただ低気圧が通り、雨が降る時には夜間の冷え込みがゆるみ、移動性高気圧が通る時に夜間が冷え込むので、晴れるごとに急に寒くなる感じがします。12月に入ると大陸の高気圧が発達するので天気の周期的変化はあまりはっきりしなくなります。

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秋の日は釣瓶落とし

太陽が地平線に沈んでも、なお空に薄い光があらわれているのを薄明りといい、この薄明りは、太陽が地平線の下6度ないし8度くらい沈んだ時までです。物影のややはっきりとわかる夕暮は薄明りとその前何分聞ですが、秋になると太陽の位置が低くなるので、それだけ長い空の気層を横切ることとなり、そのため日射が弱くなります。そのうえ日没の時刻の前日差が大きいために早く暮れるように感じるのです。とくに家屋の立並んでいる都会の街路などでは夕日がさえぎられるので一層釣瓶落し(つるべおとし)に暗くなるのです。この秋の夕暮ほど、ものの哀れをおぽえる季節はなく、枕草子にも「秋は夕暮」と、秋の夕暮をたたえています。日ごとに日が短くなるので、屋外での仕事はうっかりすると予定が狂うこともよくあります。また洗濯物などは日が沈む前にいそいで取込まないと湿ってしまいます。

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東風吹けば雨

「東風吹けば雨」または「風が東から西に吹けば雨」ということわざは福島県その他の地方でかなり広くいわれているようです。雨の降る主な原因は低気圧です。低気圧は時計の針と反対方向の空気の大きな渦巻であるために、低気圧が南の太平洋上から、または西の方から近づいて来る時には、その前面では東寄りの風が吹くこととなり、東風が吹くような時にはやがて低気圧の温暖前線により雨が降ることとなるのです。しかし、関東以北の地方では夏にオホーツク海高気圧が日本の方へ張り出す時に、いわゆるヤマセと呼ばれる冷たい東寄りの風が吹くことがありますが、この場合には同じ東風でも吹いている時間が長く、この東風は必ずしも雨をともないません。したがって、このことわざは東北南部から関東地方にかけて、春や秋に西の方から、あるいは南の方から低気圧が接近してくる時によく当るのです。なお同じ意味のものに煙突や火山の煙を見て、「煙が西になびけぱ雨」ということわざが多く伝えられています。

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秋晴れに夏の湿り

秋になると移動性高気圧が日本の上をしばしば通り、このときすがすがしい秋晴れとなります。秋晴れがすがすがしく快よく感じるのは、一つには夏とちがって乾燥した空気が日本の空をおおうからです。しかし、押入れや、たんすの中などは夏よりかえって湿度が高くなることが多いのです。空気の流通の悪いコンクリートの家ではとくにこの傾向が著しいようです。これは、押入れやたんすには、夏の湿った空気が流れこんでいるうえに、秋になってその空気が冷えると、湿度が高くなるからです。これをそのまま放置すると、衣類その他にカビが生えたりしてそこなわれてしまいます。このようなことのないように以前は虫干しをしたものです。今でも虫干しをすればよいのですが、生活が忙しいのと、虫干しの場所が得られないので行なわない家が多いようです。秋晴れのすがすがしさを満喫する時は、室内の除湿にもいろいろ工夫をするとよいでしょう。

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秋雨は涼しくなれば晴れる

秋には移動性高気圧と低気圧とが交互に通り、低気圧が通る時にいわゆる秋雨が降ります。秋に日本付近を通る低気圧の多くは西から東へ移動します。この低気圧は北側に寒気があり、南側に暖気があって、低気圧の中心から南東方向に温暖前線が、南西方向に寒冷前線が伸びます。いいかえれば北側に寒気を、南側に暖気をかかえた空気の渦巻です。そしてこの低気圧が近づいて来ると、まず南東方向に伸びた温暖前線のために雨が降り暖かくなります。次いで南西方向に伸びた寒冷前線が通り雨が降り、北方の気団の勢力下に入るために気温が下がります。いいかえれば涼しくなれば晴れることになります。
 また大陸の冷気と太平洋方面の暖気とが相接して東西に伸びた前線が南下することがありますが、この場合にも前線が通ると涼しくなり、晴れることとがよくあります。ただ夏の雨は前線性降雨にしても、台風に伴う雨にしても、天気のよい暑い日に降ることがむしろ多いようです。

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秋の夕焼けは鎌を磨いて待て

 太陽が西の空に沈もうとする時に、西の空が晴れていると、日光光線が空気の長い層を横切って来るために、空気の分子で散乱して赤色に近い波長の長い光だけがとどくため夕焼となります。いいかえれば夕焼が見られるような時には空気中の水蒸気の量が少なく、それだけ日光が長い空気層を横切る場合であり、西の方の天気がよい時なのです。ところで日本付近を通る低気圧の多くは、大気の環流の関係から、西から東へと移動します。したがってこれにともなって天気も西から東へと移動して行くこととなります。とくに春や秋には、移動性高気圧と低気圧とが西から東に向かって交互に通ることが多いので、西の空に夕焼が見られるような時には、移動性高気圧におおわれ始める時ですから、その後1〜2日くらいは晴れることが多く、稲刈りなどの農作業には好適な天気に恵まれることが多いものです。よって、翌日の農作業の用意をしておくとよいと昔から言われています。 

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熊、初秋に出ると雪が早い

熊は栗が好きで、深山で栗の枝を折って巣をつくることが多く、この熊の住いを栗架、熊の棚、熊宿、熊館などという。熊は山の植物の根やヤマブドウの実などを食べるが、これらの食物が欠乏すると、山麓に出て来て、トウキビ、カボチャ、エンバクなどを食べて畑を荒したり、家畜や人に危害を与える。普通は山の食物が不足した時に、根雪があまり積らないころに里に出て来るが、年によってはいつもの年よりも早く、初秋のころに姿を現わすことがある。こうした年には夏から初秋にかけての天候がよくなく、山での熊の食糧が不足気味の時であることが多い。したがって初秋に熊が里に現われるような年は、夏の天候があまりよくなく、熊の餌が不足がちの年である。夏の天候が異常な時、いいかえれば凶冷であったり、多雨で水害が多かったり、干ばつであったりする時に熊の餌が不足し、こうした晩夏の異常気候は晩秋まで持続することがよくあり、雪が早く降ったりする。

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返り咲きの多い年は、霜も雪も遅い

春咲くサクラその他の花が秋に咲くことがあります。これを返り咲きといい、返り咲きには夏から秋にかけての天候が関係します。干ばつ気味の時や、しばしば台風、とくに風台風に襲われるような年に、秋になって気候がしだいに涼しくなってから急に気温が高くなり、暖かい日が続くような時に返り咲きが多く見られます。一般に植物体内の窒素に対する炭水化物の割合が多くなる、すなわちC/N比が小さくなると花が咲きやすい状態となります。干ばつの後に返り咲きがよく見られるのは、地水が減り、根から窒素を吸収する量が減るのに対し、晴天続きで炭素同化作用により炭水化物の量が増え、C/N比が小さくなるからです。また台風が襲来すると暴風雨により枝葉がいためられて炭水化物の補給が少なくなるからです。返り咲きの多く見られるような年には太平洋の高気圧の勢力が強く、そのため寒さの到来がおくれがちとなるので、露や雪がおそく見られることが多いようです。

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日本晴れ3日続けば3日以内に雨となる

こうしたことは秋の天気についてよくあてはまります。秋には日本晴れのよい天気がみられますが、これは日本が大陸の方から移動してきた高気圧におおわれるからです。大陸から移動して来た高気圧は、夏の小笠原高気圧とちがって空気が乾燥しているので空が澄んで高く見えます。しかしこのような移動性高気圧に日本がおおわれて晴天となるのはふつうはせいぜい3日くらいで、移動性高気圧が通ってしまうとその後から低気圧がくるので天気がくずれて雨が降るのです。したがって日本晴は3日も続けばやがて雨が降るとみてよいでしょう。
 しかし、晩秋に近づくと、シペリア高気圧の勢力がしだいに強くなり、移動性高気圧が次ぎ次ぎと続いて通るようになり、ついに日本列島に沿って帯状の高気圧がみられ、こうなると時には晴天が一週間くらいも続くことがあります。このような日本晴は11月に入ってからです。

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四方に雲なければ三日の雨

四方に雲がなくよく晴れている時には、日本が高気圧におおわれている時です。夏には太平洋高気圧が発達してこの高気圧におおわれると晴れますが、積雲や積乱雲が発生しやすいので、四方に雲がないというわけにはいきません。また冬期にもシベリア高気圧におおわれて四方に雲のないような冬晴の日があります。こうした時にはこの高気圧にさまたげられて日本の上を低気圧が通りませんから、四方に雲のない日が、3日どころか1週間以上も続き、雨がしばらく降らないこともあります。
したがって、このことわざは、春と秋の天気についていわれたものです。春と秋には、日本付近を移動性高気圧と低気圧とが約1週問の周期で交互に通ります。したがって、高気圧が通る時には空の四方に雲が見られませんが、それから3日もすれば低気圧がやって来て雨が降り始めることが多いのです。要するにこのことわざは春なら4月、秋なら10月にもっとも当るといってよいでしょう。

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日がさ月かさ出れば雨

昼間は太陽の周囲に、夜は月の周囲に淡い白色または多少赤みを帯びた環が見られることがあります。こうした現象を日がさ、月がさといいます。これは空の高いところにある絹層雲に日光や月の光が当るために生じたものです。 絹層雲は水滴ではなく、小さな氷晶からなり、これに日光や月の光が当ると氷晶がプリズム作用をしてこのようなかさがみられるのです。いいかえれば、日がさ.月がさが見える時には絹層雲がある証拠といえます。 この絹層雲は、低気圧の雨域の700〜800キロメートルくらい前に現われることが多いので、かりに低気圧が時速30キロで近づいていれば23〜27時間後には雨が降りはじめることとなります。
 藤原咲平博士の調査では、かさの現われた翌日に雨が降る場合は60〜80%あるとのことで、また近藤久二郎氏の調査した結果ではかさが現われてから36時間内に雨が降った場合が57%となっています。このことわざは世界的にもよくいわれ、日本では日がさ月がさは春についで秋に多いようです。

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渡り鳥早き年は雪多し

肌寒さをおぼえるようになると、ツグミ、ツル、ガン、カモ、ハクチョウなどの冬鳥が北の方から日本へ渡って来ます。この渡って来る時期は年によりちがい、年によっては異常に早く渡って来ることがあります。
 このような年には北の地方が例年になく早く寒くなり、そのため早く渡って来るとみられます。そして、このような年はだいたい例年より早く大陸の高気圧の勢力が強くなった年とみてよいでしょう。
 大陸の高気圧の勢力が初秋のころから例年になく早く強くなるような年には、このころに北極の高気圧がシベリアの方に張り出している年で、こうした状態は割合に持続することが多いので引続いて冬まで大陸の高気圧の勢力が強く、冬に強い北西の季節風が吹きやすく、寒さがきびしくなると同時に雪が多く降ることになります。したがって例年になく冬鳥が早く渡ってきた時には、一応雪害に充分注意したほうがよさそうです。

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秋タンポポの花咲く年は雪が浅い

タンポポは日本ではふつうは気候の暖かい南の地方では2月下旬ころから咲き始め、北の地方ほどおそく咲き、北海道では5月に咲ぎ始めます。ところが年によっては秋にタンポポが咲くことがあります。このような年の天候を見ると多くの場合、夏に干ばつ気味で気温が例年よりも高い年であることが多いようです。したがってこのことわざは秋暖かければ冬も暖かく雪が少ないということになります。いいかえれば、秋に大陸方面の気圧がいつもの年よりも低い年には、冬にも大陸の高気圧があまり発達しないで冬が暖かく、雪が少ないということになります。
 この関係については、秋の大陸における気圧の強さと冬の気温との関係について調べた結果によると、いずれも負の関係にあり、秋に大陸の高気圧が強い年の冬には気温が高いという結果が求められています。したがって、秋にタンポポが咲くように暖かい年には、その年の冬の雪が例年に比べてあまり積らないといえます。

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柿の実の多い年は寒気はげしい

柿の実が多くなる年の冬は寒さが厳しいということがよくいわれています。このことわざは「柿を食べると身体が冷える」ということが昔からいわれているところからみて、これに関連していわれだしたのではないかとも思われます。それにしてもこのことわざが気象の上からみて真実性があるのでしょうか。
 柿の結実初期に当る梅雨のころの雨が多い年には、落果が多くなり柿の実が少なくなることが多いようです。しかし、梅雨のころに雨が少なく、.多少干ばつ気味の年には実どまりが多く、その結果実が多くなります。梅雨のころに雨が少ない年には、がいして夏に太平洋の高気圧の勢力が例年よりも強い年であることが多く、そうした年には冬には大陸の高気圧が例年より強く、そのため寒さの厳しい冬となることが多いといえます。
 こうしてみると、柿の実の多いことはその年の冬に寒気のはげしくなる一条件とみてもよさそうです。 

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出雲(いずも)は天気、入雲は雨

 出雲とは朝に東の空に見られる雲のことで、また入雲とは夕方西の空に見られる雲のことで、このことわざは朝に東の空に雲があれば、その日の天気がよく、夕方に西の空に雲がある時には翌日は雨が降るという意味です。
 日本付近では低気圧が西から東へと移動するから、天気も西から悪くなり、夕方西の空に雲が多い時には低気圧が近づいてきている時で、その翌日雨が降ることがよくあります。また朝、東の空に雲がある時にはすでに低気圧が東へ去った時なので、その日は天気がよくなることが多いのでこうしたことがいわれたのでしょう。
 このことわざは移動性高気圧と低気圧とが交互に通る秋と春によく当るとみてよいでしょう。とくに冬や夏には季節風の影響を受けて山の頂に雲が発生しやすいので、山岳地帯ではこのことわざは通用しません。なお、出雲をいずもといったのは、出雲大社にもかけてそれにあやかり、かつ覚えやすくいったもののようです。

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三味、太鼓の音の濁るのは雨の兆し

 三味や太鼓の音は、空気の湿度の変化にともなって変ります。湿度が高くなると、三味線の糸や太鼓の皮が湿気を吸収するために、それらの振動状態がちがってくるからです。ふつうは湿度が高くなるほど低音となり、また濁った音に聞こえるようになります。芝居で幽霊が出るような場面のさいに、太鼓を濡れ手拭で湿らして底力のあるどろんどろんという底音を出すようにして幽霊の凄味を増すようにしたものだそうです。
 太鼓の音や三味の音が濁って聞えるような時は空気の湿度が高い時です。一日でいえば日中は湿度が低く、夜間は湿度が高いから幽霊の出やすい夜間のほうが三味、太鼓の音が低音となります。
 ところで空気中の湿度は低気圧の接近により大きく変わります。低気圧が接近すると、太平洋の上を渡って来た湿度の高い南風が吹くようになるので、高湿となり三味、太鼓の音が濁り、やがて雨が降ります。したがってこのことわざは太平洋沿岸地方で主にいわれています。

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朝露が降りると晴れ

朝、草や樹木の葉に露が最もよく見られる季節は秋であり、このため露は歳時記では秋の季題とされています。秋に地面や地物などに空気中の水蒸気が凝結して水滴となり露の見られる日、すなわち露日数は東京で調べて見ると40日くらいあり、夏期の露日数の約1.5倍もあり、たしかに秋は露の多い季節といえます。夜になり、地面や植物の葉の表面などが冷えると、これらに接している空気の温度が下がり、そのため空気が含むことのでぎる水蒸気の量が減り、空気に含まれている余分の水蒸気が露となって植物の葉や地面に降りることになるのです。そして夜間の冷え込みがひどい時ほど、いいかえればよく晴れている時ほど多くの朝露が見られます。
 また秋の夜道を歩いていると夜露で衣服が湿るのをおぽえ、こうしたことを昔の人も認めていて袖の露といっています。朝露は朝日に輝いて見えますが、やがて気温が高くなると消えるので露の命は短命なことにたとえられます。

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朝焼けは三日ともたぬ

朝に東の空が夕焼のように赤く見えることがあり、これを朝焼と言います。.東の空に雲や霧がなく,空気が澄みきっていると朝日が非常に長い空気の層を横切ることとなり、その間に空気の分子や塵などにより光が散乱して赤色に近い長い波長の光だけが見えるようになり、そのため朝焼が見られます。
 ところで、春や秋には移動性高気圧と低気圧とが一週間くらいの周期で交互に西から東へと移動します。そして移動性高気圧が通る時には天気がよくなりますが、その後から低気圧が移動してきて、天気がくずれ雨が降ります。したがって移動性高気圧におおわれる時には天気がよく朝焼が見られますが、この期間はせいぜい三日で、それを過ぎると低気圧が通るようになり天気がくずれて雨が降ります。
 こうした天気くせを利用すれば、野外の仕事の能率があがります。なお冬や夏には朝焼がもっと長く続くこともあるので、このことわざは通用しません。