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空夢の部屋

9月の天気ことわざ

残暑厳しい事が増えている。台風の季節。1つ過ぎる毎に気温が下がり秋らしくなる。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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煙突の煙が下を這うと風の兆し

 煙突の煙が下をはう原因には大きく分けると二つあります。その一つは気温の垂直分布であり、もう一つは上空の風の強さです。煙突から出た煙は、その気温と上昇速度により有効高度まで昇ってから風下の方向に流れます。この煙は風下に向かって次第に上下に拡散しますが、その拡散の仕方が気温の垂直分布と密接な関係があります。気温は普通高いところへゆくほど低くなります。この気温の下がる程度を気温の逓減率(ていげんりつ)と呼んでいます。上へ行くほど気温が低いときには、煙は風下に向かって上下に広がるのである程度風下で煙が地面をはうことになります。またある高さでは逆に上へ行くほど高くなることがあり、こうした層を逆転層といいますが、この場合逆転層より下に煙がはうことになります。この二つの場合は、低気圧の前面で見られることがあるので風の兆しといえます。また風がある程度強くなると乱流が大きくなり煙が吹き下ろされ、この場合はもちろん強風に注意した方が良いでしょう。

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返り咲きの多き年は大雪となる

 年により返り花が多く咲くことがあります。これは、夏期が干ばつであったり、初秋に台風がいくつか通る年によくみられます。このような時には、植物体内の窒素含量に対して炭水化物の含量の割合が多くなり、このために開花しやすい状態になるために返り花が多くみられるようになると言われています。夏期に干ばつとなるのはいつもの年よりも太平洋の高気圧の勢力が強く、この高気圧の勢力圏内に日本が入る年に起るもので、このような年の冬には大陸の高気圧がいつもの年よりも発達する傾向があり、そのために寒冬となり、雪が多く降ることとなります。「夏暑ければ冬寒し」と同じ理由です。こうした関係はたしかにみとめられますが、いつもそうではなく、大気の大循環の状況が変化する時には夏が暑く干ばつの年の冬が寒く大雪とならないこともあります。なお「秋にウメの花開けば大雪」「ツツジの返り花多き年は大雪となる」などともいわれています。

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夜非常にのどが渇き水の飲みたい晩は翌日雨

 晩春や初秋のころにこうしたことによくあうことがあります。晩春や初秋は暑くも寒くもなく気候がよいので天気のよい日には屋外で行動することが多く、そのため汗をたくさん流すことがよくあります。ところでこのころのそうした天気のよい日は移動性高気圧が通っている時ですから、その後に低気圧が近づいて来ます。低気圧が遠くある時には、まだ天気がよいのですが、南寄りの暖かい風が吹き始めて夜になってもそう気温が下がりません。日中運動をして盛んに汗を流し、その上、夜になってもそう冷えない時には喉が喝きやすく水が飲みたくなるものです。したがって、こうした時には、その翌日にはいよいよ低気圧が近づいて来て雨が降り始めることがよくあるのでこうしたことがいわれるのでしょう。晩春や初秋には移動性高気圧と低気圧とが交互に通るとぎがあるから、こうした欲求にかられることをしばしば経験することになります。

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夜露多けれぱ晴

秋の夜に外出すると草木の夜露で衣服がぬれることがよくあります。こうした草樹の夜露には2種あります。その一つは秋になると草樹の葉の温度が夜間放射のために下り、そのため葉に接触している空気中の水蒸気が凝結して露となるからです。今一つの原因による露は、植物の体内から分泌する水による露です。夜になり気温が下ると、葉の表面からの水分の蒸散がおとろえる一方、地中の温度はあまり下らないから植物の根は地中から水分を吸収し、この水分を根圧により上に押しあげるのです。そのため根圧は強いが、葉からの蒸散力は弱くなるために、葉から水蒸気の形でなく、水滴として出ることになり、これが露として見られることとなるのです。自然現象による露と、植物の生理作用による露とを明らかに区分することはむずかしいですが、葉先に付いている露はだいたい植物の生理作用による露と見てよいようです。いずれの露も天気が良く夜間の冷え込みのひどい時に多いから、こうした時には晴天となるとみてよいでしょう。

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敷石が湿れば雨

雨が降ったり水をまいたりしないのに、日中敷石が湿ることがあります。元来、石は空気に比べると熱容量が著しく大きいものです。したがって、石の湿度は気温にくらべると変化しにくく、そのため気温が高くなっても石の温度が気候より低いこともあります。この場合、空気が水蒸気をたくさん含んでいると、石面でその空気が冷やされて、空気中の水分が石面をぬらすこととなります。低気圧が近づいて来る時には、その前面では太平洋の方から水蒸気をたくさん含んで暖かい風が吹き込みます。この暖気が温度の低い石に触れると、石が湿ることになります。敷石の温度の方が気温よりとくに低いのは午前中の早い時間ですから、午前に敷石が湿っていることから雨天を予知することができることになります。同じようなことわざに「敷石や土台石が水気をおぴるときは雨近し」「堀石が湿ると雨」「川石で造った土台石が湿ると雨」「油石がぬれると雨近し」などがあります。

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暑さ寒さも彼岸まで

夏に南風が吹く日には晴れることが、多くの地方で言われています。夏には太 平洋上に小笠原高気圧が発達しやすく、特にその勢力が強く、日本列島をおおい 、朝鮮の方まで張り出し、日本列島上の等圧線が南高北低型となるようなときには、南よりの風が吹き晴天となるときが多いようです。このような現象は、東北 中部以西の地方でよく見られ、中でも中部地方から関東地方にかけて顕著なようです。尚、夏に同じ南風でも強い南風が吹くときには、低気圧が近づいているときですから、雨が降り始めます。また、非常に蒸し暑い南風が吹くときには台風 が接近していることがありますから風水害にも注意が必要です。尚、南に海を控えている地方では南風は海風で、これが昼間に発生するようなときには晴れます 。

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ミンミンゼミが早く鳴いた年は霜が早い

ミンミンゼミは大型のセミで、体は黒色で頭部と胸部に青緑色の斑紋があり、 羽は透明で、前羽の中天と外縁に近いところに淡褐色の斑紋があります。体が大きく羽が美しく涼しそうで、ハゴロモやカタビラを思わせるのでハゴロモゼミ、 カタビラセミともいいます。ミンミンゼミはアブラゼミやヒグラシよりもおそく鳴き始めます。普通の年には関東平野の北部、近畿南部、中国中部、四国東部および九州南部地方でわりあいに早く、七月中旬に鳴き始め、奥羽北部、北陸、近畿中部、四国西部、九州東部などでは八月上旬に鳴き始める。7月20日から8月10日の一年のうちで最も暑い時期に盛んに鳴き始め、ミンミンゼミの鳴きやむ時期はアブラゼミの鳴きやむ時期とだいたい同じで9月10日から20日ころにかけてです。ミンミンゼミが早く鳴き始めるような年はがいして季節の進みの早い年であるから秋の訪れも早くなりがちで、そうした年には山地ではとくに初霜が早くなる傾向があります。 

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西が海鳴りすると天気悪くなる

台風シーズンになりますと、日本の太平洋沿岸地方では時にゴーゴーとか、ド ーンドーンという遠雷のような底力のある音が聞こえることがあります。これが 海鳴で、海鳴は時には海岸から数キロ離れた奥地でも聞かれます。外海に面した 地方ばかりでなく、大阪湾の沿岸などでも聞こえます。これは海岸で大波が崩れ る時に、その中に巻きこまれた空気が、狭い口から逃げ出そうとする時に発する 音で、長い海岸線に沿って同時に起こりますので、底力のある海鳴として聞かれ るのです。海鳴が聞かれるような時には沖に台風が接近している場合であるから 当然天気が悪くなる可能性が大きいので充分用心する必要があります。カーソン 著『海、その科学とロマンス』には、数百万年にわたり、波は暴風に先んじて前 進し、警報を叫び続けていますが、彼らの言葉を私達が読めるようになったのは 最近のことだと述べていますが、日本ではかなり古くからここにあげたようなこ とわざが利用されています。

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作物の実りが早ければ雪が早い

夏作物の成熟は年によって早い年とおそい年とがあります。夏作物の成熟の早晩には晩夏から初秋にかけての天候が関係します。たとえば稲についてみると、二つの場合があります。北日本でよくみられる例ですが、この時期の気温が例年より低温であると生育が遅延し、高温な場合には成熟が早くなります。一方西南暖地ではこの時期の気温が低くなると栄養成長から生殖生長へ移る時期が早くな り、それだけ早く発熱することとなります。いずれにしても、晩夏から初秋にかけての気温が低いときにみのりが早くなる傾向のみられる夏作物がかなりあります。晩夏から初秋にかけて気温が低くなる年、いいかえれば早く秋となる季節の進みの速い年には、冬も早く来て雪が早く降りはじめ、結局作物のみのりが早いときには雪の降り始める時期も早くなる傾向がみられます。ただ初雪は一時的に大陸の高気圧が発達するさいにも降りますから、作物のみのりが早いと初雪が早いとはいえません。

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ソバの殻ばかりで実のない年には早霜

ソバは元来霜に弱い農作物であって、開花中に霜にあったりしますと、不稔となって殻ばかりとなり、収穫皆無に近くなることがよくある。ところでソバは山の荒地などによく作られていますので、そのようなところは、平地にくらべると気温が低く、かなり早く霜が降ります。このような山地に霜が平年より早く降りるような年にはいつもの年よりも早く寒くなった年と見てよく、こうした年には平地の霜も例年より早く降りることが多いようです。いいかえれば、こうした年には平地の作物、たとえば稲や甘藷などの作柄も悪くなることが多いから早霜に充分警戒する必要があります。こうした早霜害は、雑木や古タイヤなどを燃して 、煙で地面をおおうと地面から空に向かっての夜間放射が抑制され、被害をかなり防ぐことができます。なおこの早霜害は西の方から移動して来る高気圧に日本がおおわれる時に起こりやすく、とくに北海道などで注意しなければなりません 。

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カゼクサの茂り多き年は暴風あり

ここでいうカゼクサは厳密に植物学上の品種を示しているのではなく、カゼクサ(ミチシバ)、チカラクサなどににた植物の総称と見てよいでしょう。こうした植物がよく茂るような年は、8月の気温が高く、しかも干ばつにならずに晴天に恵まれ、適当な降雨が見られるような年です。夏にオホーツク海高気圧の勢力が強く、西の方へ張り出しているような年には、気温は低くなり、陰湿な天候となり、カゼクサはあまり繁茂しません。そしてオホーツク海高気圧に妨げられて台風は西の方へ向かうものが多くなるので、カゼクサが茂る年は台風の襲来をあまり受けない年ということになります。これに対してオホーツク海高気圧の勢力の弱い年にがいして気候が例年より暖かく、晴天に恵まれカゼクサがよく茂り、こうした気圧配置の年には関東以西の地方に台風が襲来しやすくなり、その結果暴風があるといえるのです。

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モズの高鳴き75日

 「キィー キィー キチキチキチ」木の葉が色づき秋が深まるとモズの甲高い鳴き声が聞こえてきます。鋭く挑戦的な鳴き声です。モズは、秋から冬にかけては1羽だけでなわばりを持ちます。そのため秋の初めには老若男女を問わずモズは激しい戦いをしてなわばりを勝ち取ります。一度確保したなわばりに侵入し てくるものが有れば、また戦います。こうして十一月には秋のなわばり争いは終 わり、モズは1羽きりで冬を迎えます。昔の人は、モズの高鳴きを初めて聞いてから75日目に霜が降ると、農作業の目安にしていたようです。
 モズに関する他のことわざには、次のようなものがあります。
 ○百舌鳥の高鳴きは晴天の兆し(千葉・富山・高知・福岡)
 ○百舌鳥の高鳴きは七十五日の上天気(広島)
 ○百舌鳥が来るとその年はもう大風がこない(熊本)
 ○百舌鳥が鳴き始めると風が吹かない(愛知・奈良・福岡)
 ○百舌鳥が早く鳴けば、早く寒さ冬が来る(滋賀・大分)
 ○百舌鳥が鳴くと雪が降る(岐阜)

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秋風蒸し暑ければ大風

 初秋には暖候期の後だけに秋雨が降る日にはことさら涼しさを覚え、時には肌寒さを感じます。このころに、ことさら蒸暑さを感じる風が吹くことがあります。こうした時には南の方から台風が接近している場合のことが多いものです。台風が近づくと台風は時計の針と反対方向の渦巻ですから、その前面に当る地方へは水蒸気をたくさん含んだ暖かい空気が流れ込んで秋雨に蒸暑さを感じるのです。そしてやがて台風が接近して大風が吹きます。それが「吹出した暖かい風は暴風の兆し」ともいわれるゆえんです。「秋雨が蒸暑げれば大風が吹く」のはせいぜい10月の半ばころまでです。このころになると大陸の高気圧の勢力がしだいに強くなるので、たとえ台風が接近しても日本に上陸するようなことはあまりありません。洋上を東の方へ進むものが多いので、蒸暑くなって大風が吹いても、台風の直撃を受けた場合ほどの被害はなく、蒸暑くなった後では急に涼しくなるものです。 

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山の私雨

下はよく晴れていたのに山では雨となることがよくあります。こうした局地的な雨のことを「山の私雨」といい「比叡の私雨」「箱根の私雨」「丹波の私雨」などは昔からよくいわれていたようです。山ではこの私雨に注意が肝要です。平地がよく晴れているのに、山の高いところへ行くと雨が降るのは、一つには、天気のよい日に、山の斜面が日射で熱せられると、その上の空気があたたまって軽くなり、いわゆる谷風となって、山の斜面に沿って吹きあがるにしたがい冷えて、その空気に含まれている水蒸気が凝結して雨となって降るからです。
 また、低気圧が近づいて来る時にはその前面では南風が吹きこの風が山肌を吹き登って雲ができ雨が降ります。さらに低気圧が近づくとしだいに雲が低くなり、この雲におおわれた山のところでは雨となります。こうした私雨は、多くの人のぎせいによりある人だけが潤うことのたとえとして古くからいわれています。

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雲が東より西に向かって急走すれば暴風あり

この天気俚諺は主に関東以西の太平洋沿岸地方の台風に原因する暴風についていわれています。台風は時計の針と反対方向の大きな空気の渦ですから、この台風で北緯25度から30度くらいのところに来ると、その前面に当る日本付近では東寄りの風が吹くことになります。それでこの風に雲が流されて、東から西に向かって急走するのがみられるようになります。
 このほかにも、雲が東から西に流れることはよくありますが、急走するのは上空をかなり強い風が吹いている時で、だいたい台風が近づいている時とみてよいでしょう。しかし、この場合には九州から関東地方にかけてかなり広域にわたって雲が西に向かって急速するのが見られ、これに対し実際に台風の影響を大きく受ける地域は3分の1くらいの地域ですから、雲が西に向かって急走するのを見て必ずそこに暴風が襲来するとはいえないでしょう。しかし、そうした時には一応気象台から発表される台風警報に充分注意することが肝要です。

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サケ・マスの豊漁は早冷

9月になるとサケやマスの漁期となり、おいしいサケやマスを食べることがでぎるようになります。北海道ではサケをアキアジ(秋の味)とよんでいることからも、サケは秋の味覚の一つにあげられます。サケやマスは産卵のために5月ころから陸に近づいていきますが、9月になると群をなして、川をさかのぼり産卵します。サケは太平洋側では利根川から北の川、日本海側では島根県から北の川をさかのぽるようです。サケが盛んに川をのぼりはじめるのは、東北地方では台風が襲来し、強い風の吹く9月に入ってから。このころの強い風を「さけおろし」とよんでいます。サケ、マスとも北方系の魚で、冷水を好み北の方から流れて来る寒流である親潮に乗って南下します。したがって親潮の勢力が強く、この寒流が日本沿岸を洗う年にはサケ、マスは漁魚となる。こうした年には北日本の気温が例年より低いことが多く、そのため早冷となり、稲その他の夏作物が冷害を受けるわけです。「凶作は海から来る」といわれるのもこのためです。

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彼岸坊主の大袈裟(おおけさ)流し

秋の彼岸は9月20日前後から秋分の日を中心とした7日間で、彼岸には寺の法要や、檀家廻りなどで坊さんが大変忙しいものです。「彼岸坊主の大袈裟流し」というのは、その忙しい坊さんが、なくてはならない大事な袈裟を流してしまうような大雨がそのころに降ることがあるから注意しなさいという意味です。このころは、秋雨の季節で、秋雨前線が日本付近に停滞して梅雨のころと同じように雨の降りやすい天気の日が多いのです。しかも、最近は二百十日、二百二十日のころよりも、このころに大型台風が襲来しやすいようです。日本に沿って秋霜前線があるところへ、南の方から台風が近づいて来ると、この前線を刺激して局地的な大雨が降ることもよくあり、さらに台風が襲来すればもちろん大雨が降ることとなります。したがって、彼岸のころはとくに大雨に注意し、日降水量が100ミリを越えそうな時には洪水を警戒したほうがよいでしょう。

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二百十日に東方より光りあらば台風来る

江戸中期以来「二百十日は農家の厄日」といい、二百十日、すなわち9月1日ころには台風がよく襲来し、農作物が大きな被害を受けるとして恐れられていました。しかし毎年必ず二百十日に台風が襲来するわけではないので、二百十日に東方の雲に光ものがある時には、台風の来ることが多いから注意しろといわれたのです。
 台風は低気圧ですからその中心に向かって周囲から空気が流れ込みます。この場合、下層の空気は台風の中心に向かって流れ込み、流れ込んだ空気は上昇して、上層から周囲へ流れ出ています。このことは台風が接近して来ると、低い雲は台風の中心に向かって、高い雲は台風の中心から遠ざかる方向に流れていることからも知ることができます。台風の東側では暖かい南寄りの風が吹き、一方これに対し北の方から冷たい空気が吹き込むので、この南風と北風との問に前線ができ、前線の滑走面に沿って強い吹ぎあげが起こると、そこに雷が発生するわけです。天気図で台風が認められ東方に光ある時は用心が肝要です。 

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暁の雲 急に散れば大風となる

このことわざは広島県その他の地方でいわれています。ここでいう暁の白雲とは、高さ2000m以上6000m以下のところに発生する高積雲、高層雲などとよぽれる中層雲や高さ2000m以下のところに発生する層雲などです。これらの雲は大陸の方から吹いて来る冷たい風と、太平洋上から吹いて来る暖かい風とが接触するところに発生します。この両方面から吹いて来る風が均衡を保っている時には全天雲におおわれますが、いずれかの風が強くなると、雲はちぎれて風下の方に向かって流れることになります。この場合には2つの原因がある。その一つは低気圧や台風が近づいて来る時で、これらにより上空の空気が掩乱されるので急に白雲が散ることとなります。
 今一つの場合は冬に大陸の高気圧が発達し、急に強い偏西風が吹き出す時です。なお、とくに暁にこうした現象が目立つのは夜間放射により空気が冷えて発生する雲も加わるからです。 

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地震の後には風が吹き雨が降る

地震の後で風が吹き雨が降るということは古くからいわれています。これは地面が揺れるとその上をおおっている空気にも影響するのでしょうし、また海底で大きな地震が起ると、海水が広範囲にわたって揺れて、そのため海水面をおおっている空気もその影響を受けて、風が吹いたり、雨が降ったりするだろうと考えたからです。理由は別として、実際にこうした関係があるでしょうか。これについて東北大学教授の中村左衛門太郎博士が調べておられます。その結果によると、東京で感じた1ケ年間の地震について見ると、地震後24時間は雨がふつうより多くなり、風は少し弱くなる傾向があります。また地震後24時間から48時間にかけては、雨の降ることも、風の起ることも常より多い傾向にあるということが認められました。この結果から見ると、世俗にいわれるように、地震後に雨の降る傾向があるようです。雨の原因となる低気圧が地殻に影響し地震の原因となるためでもあるかもしれません。

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山に黒雲かかれば暴風雨

山の上層部が黒い雲でおおわれることがあります。この原因は大別すると3つあります。その1つほ夏の快晴の日に見られる場合で、強い日差しによりあたためられた空気が山肌に沿って上昇し、これが冷えて空気中の水蒸気が凝結して水滴となり、黒味を帯びた雲として見られる場合です。この種の黒雲は日射の強い快晴の暑い日、すなわち発達した太平洋高気圧におおわれている時に現われます。そして山の頂に近いところだけが雲でおおわれ、他のところは晴れています。こうした時には山に黒雲がかかってもむしろ晴天が続くことが多いのです。
 また強い風が吹く時にも山の風向い側では上昇気流が起り、頂に近いところが黒雲でおおわれますが、この場合には黒雲が風下の方にかたよって発達しています。これらの場合に対して発達した低気圧や台風が近づいている時には、水蒸気を多く含んだ空気が山肌を吹ぎ上げ、前の場合よりも濃い黒雲が発生し、こうした時には暴風雨の襲来が近いとみてよいでしょう。 

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ナマズが騒ぐと地震がある

 ナマズが騒ぐと地震があるということは有名ないい伝えで、このことは安政見聞録に江戸本所永倉町に住んでいた篠崎某の経験録に出ていて、このころから世間でよくいわれるようになったようです。その後関東大震災のさいに当時の文部次官赤司氏が実際に体験してます。また東北大学の細井博士は実験の結果によりナマズが地.震に敏感なのは、増大する地電流にナマズが敏感であるためであるという結論を出しています。
 これらに対し柿岡地磁気観測所の吉松氏は、地震に先だって地電流が増大し、これによりウウナギが騒ぐというが、この程度の地電流の変化は雨が降っても起り、これをナマズが区別するだけの能力があるかどうかは疑問であるとしています。以上のような点から見るとナマズの行動と地震とが無関係であるとはいえませんが、実際問題としてはナマズの行動を常時観察しているわけにはいかないでしょうから、ナマズの騒ぐことから地震を予知することは実際にはむずかしいかもしれません。

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シケグサの葉に節ができると暴風あり、その節の数は暴風の回数を占めす

 シケグサとは俗名であって、風知草のことですが、ことわざでいうシケグサはそれほど厳密なものではなく、フウチソウ、カゼクサ(ミチシバ、→写真)、チカラクサ、あるいはこれらに類似した雑草のことをいっているとみてよいでしょう。これらは路傍などでよくみかけるイネ科の多年生の雑草で、根ぎわから出た多くのワラに細長い葉が密集して生えています。この葉には節はないのですが、強風にあうと折目ができ、これを節とよんでいます。葉に節、すなわち折目がみられるような時には強い暴風に襲われて葉が折れた時です。
 元来、台風の経路は、その年によりよく似た経路を通る傾向がみられます。その主な原因はその年の気圧配置により、西日本をよく襲ったり、東日本をよく襲ったりします。したがって、台風が通り、シケグサに節ができるような年には、その後もその地方を台風が通りやすいですから台風襲来に充分警戒したほうがよいでしょう。

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海鳴が聞えると暴風雨が来る

8月から9月にかけて、関東以西の太平洋沿準で海岸から15キロくらいのところまで、時に底力のあるドーンという音が聞えることがあります。この音は海岸よりもむしろ少し海岸から入ったところで大きく聞えます。これが海鳴です。海鳴は台風が近づいてきて、それに原因する波長の長い波、すなわちうねりが海岸に押し寄せてくる時に聞かれます。波長が長いので海岸で見ているとそれほど大波とは思えないのですが、この波は波長の短い風波にくらべると大きなエネルギーを持っています。したがって、この波が海岸近くで急に浅くなると、そこの海底にぶつかったり、また水深が波高より浅いところへ来ると.波頭がさかまいて砕けて大きな巻き波となり、この巻き波で空気が急激に吐き出されて、あのような大きな海鳴を発するのです。したがって海鳴が聞かれるような時には、台風がかなり近づいている証拠とみてよく、暴風雨に警戒する必要があります。

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秋に海潮満つる時は雨となる

海水面は毎日規則正しくなったり、低くなったりする潮汐現象がみられます。ところで秋や春には高気圧と低気圧とが交互に通り、低気圧が近づいてきて気圧が下がると、このために海水面が吸い上げられて、ふつうの潮位より高くなります。したがって潮位が異常に高くなるような時には、発達した低気圧が接近している時ですから、潮位も異常に高くな、やがて低気圧が来て雨も降ることとなります。とくに台風が接近する時には、こうした関係も著しく顕著ですから、潮が異常に満つる時には風水害に注意しなければいけません。
 たとえば、昭和9年9月20日から22日にかけて四国、近畿、北陸を抜けた室戸台風の最低気圧は、929ミリバールで、この低気圧のために、大阪湾での高潮の最大偏差は3.1メートルとなり、また1959年9月26日の伊勢湾台風の最低気圧は930ミリバールで高潮の最大偏差は伊勢湾で3.4メートルとなり、いずれも大きな被害を受けました。

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暴風雨来る前には松の緑が風の来る反対に曲がる

夏にマツの新緑芽が風の吹いて来る反対側に、すなわち風下になびいて見えるくらい強い風が吹く時には、やがて暴風雨が襲来するから用心しなければならないという意味のことわざで、台風のよく襲来する.西日本でよくいわれています。
 台風は大きな空気の渦巻で、これが南西方向から接近する時には最初しだいに強い南西の風が吹くようになるので、マツの葉は風の吹いて来る方向と反対になびくことになります。マツの緑が揃って風の吹いて来る反対側になびいて見えるような時は少なくとも風速が6メートル以上の強い風が吹いている時と見てよいでしょう。海岸では海陸風が発達する時に天気がよく、この風はせいぜい風速3〜4メートルである。夏に天気かよいのに6メートル以上の強い風が吹く原因としては台風以外に考えられません。したがってマツの緑が揃ってなびいているような時には台風が接近していると見てよく充分警戒を要します。