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空夢の部屋

1月の天気ことわざ

強い北西の風が吹き、太平洋側は晴れるが、日本海側はよく雪が降る。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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寒中の南風俵を編んで待て

「寒中の南風は豊作の前ぶれ」ともいいます。 寒中に 南風が吹き冬期が例年より著しく暖かい年には、夏 の天候がたいへん良く、豊作となるというのです。 実際にはどうでしょうか。明治以来の暖冬年とみられる年は、明治24年、明治36年、大正5年、大正9年、昭和7年、昭和24年の6回あります。これらの年の夏の天候の状況と米作を調べてみると、明治24年はとくに目立つ気象災害はありませんでしたが、米作は不作で、明治36年は7月に洪水があり平年作で、 大正5年は気象災害少なく上作で、 大正9年は9月下旬に台風が襲来しましたが、大正5年と同様に上作で、 昭和7年8月が低温、11月に台風による被害を受けて不作、昭和24年6月中旬にデラ台風、8月中旬にジュディス台風、8月下旬にキティ台風の襲来を受けましたたが、その他の天候条件がよかったので平年作でした。明治以来の暖冬年の米の作柄でみるかぎりは、暖冬年必ずしも豊作になるとはいえません。

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冬期、風が東より西に吹けば雪

 冬の風の吹きかたと降雪とはある程度密接な関係にあります。太平洋の沖を低気圧が西の方から移動して来る時には、その前面で東寄りの風が吹き、この場合に気温が0度以下の時には、低気圧にともなう雨は雪となります。したがって気温の低い関東以北の太平洋沿岸地方については、このことわざはある程度当るとみてよいでしょう。しかし、関東南部から西の太平洋沿岸地方では、気温が高いので、たとえ東寄りの風が吹いても、雪とならずに雨となってしまうことが多いので、東風がかならずしも雪の前兆とはなりません。またこうした原因による雪は低気圧が通ってしまうと晴天となることが多いものです。さらに日本海沿岸地方について見ると、この地方の雪も日本海を通る低気圧による場合が多いので、この場合には、その前面では南寄りの風となるから東から西に吹けば雪となるとはいえません。また日本海側の山寄りの地域では北寄りの風の時に雪が多く降ります。

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冬の夜の明るいのは雪の降る兆し

 このことわざで冬の夜が明るしというのはすでに雪が降り始めて地物が雪でおおわれたために白色に塗りつぶされて明るく見え、そうした時には更に雪が降り続く傾向があるということをいっているのです。積雪の光に対する反射能は波長の長い光に対して黒体と同じように吸収しますが、波長の短い光は50ないし90%程度を吸収します。しかも新雪は汚れていないので光に対する反射能が大きく、このために夜間に雪が降り地物が雪でおおわれると、緑色の植物や、屋根の黒瓦などがすっかり白色に塗りつぶされ、雪のない時よりも明るく感じるようになります。したがって冬の夜に外が明るく見えるような時にはすでに雪が降り積って地物がすっかり雪でおおわれている時です。それで冬の夜に外が明るく見えるくらい雪が降るような時には、更にその後も雪が降り続くことが多いことからも、雪の降る兆しといったのでしょう。

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磯鳴りは西風強くなる兆し

 磯鳴りは夏の台風にともなう海鳴りのように底力のある音ではありません。海鳴りは台風の影響を受けて沖の方で起った波長の長い波が海岸近くの海底にあたって起る底力のある音ですが、磯鳴りは強い風で起った表面波が海岸近くでくだける音です。波鳴りは、かなりな時間をおいて聞えますが、磯鳴りは強い風が吹いているかぎり連鎖的に聞えるのです。冬には大陸が冷えて高気圧が発達し、西高東低の気圧配置となりますが、時には日本を南北に横切る等圧線が22本以上となり、日本付近が強い偏西風にさらされることがよくあります。こうした勢力の強い高気圧はそう簡単には衰えないで3日以上も吹き続くことがよくあるので、磯鳴りが聞かれるようになるとその後で西風が強くなると見てよいでしょう。そして、こうした時には太平洋沿岸地方は晴天に恵まれますが、畑地が乾燥して飛土の害を受けやすく、一方日本海沿岸地方は雪が降り続き雪害を受けることがよくあります。

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煙が直立してあがれば晴、たなびけば雨の兆し

煙が静かに真すぐに昇っているのをみかけることがあります。この場合には風が無風に近い場合で、いいかえれば低気圧や前線が接近していない時で、高気圧におおわれている場合ですから、雨の降るおそれはありません。そして曇っていてもやがて晴れることが多いものです。
これに対して煙がなびく時には風が吹いている時です。風の吹く原因にはいろいろあります。冬には大陸の高気圧が発達し、西高東低の気圧配置となり、強い偏西風が吹き、日本海側の地方は天気が悪くなりますが、太平洋側の地方は天気がよくなります。この場合には、煙がなびいて雨や雪が降るのは日本海側の地方です。また夏には、天気が良い日には山谷風、海陸風、湖風、川風などが強くなります。したがって夏には煙が直立して上れば晴れ、たなびけば雨とはいえません。このことわざはいつでも当るわけではなく、春や秋にいえでしょう。

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冬の霞(かすみ)は雨となる

霞が棚引くのをよく見かけるのは普通は春や秋の朝や夕暮れです。霞が棚引くような時は、天気のよい風の静かな日です。こうした日には高さ200〜300mくらいの所に気温の逆転層ができて、この層にそって霞が棚引くのです。ところが冬になると、強い季節風が吹くことが多いので、上下の空気が撹乱されて逆転層が形成されにくいために、春や秋ほど霞が棚引く日が多くはありません。 それでも冬に主に山寄りの地方で霞が棚引いているのを見かけることがあります。こうした時には大陸の高気圧の勢力が一時弱くなり、強い北西の風が吹かない日です。そしてこのような日には大陸の高気圧の勢力が弱いために、南西の方から進んで来た低気圧が日本の近くや、日本の上を通ることがあり、そのために、雨が降ることがあります。こうしたことから冬の霞は雨になるともいわれるようになったのでしょう。春に霞が見られる時には寒さが厳しいのですが、冬に霞が見られる時には一時寒さがゆるむようです。

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餅に赤カビ生えれば日照り、青カビ生えれば雨

正月の床の間に飾られた餅も、初めは真白ですが、日がたつにつれていカビが生えたりして変色してしまいます。ところで年によりカビの生えかたに違いがあるようです。カビの多い年少ない年、また赤カビが多かったり、青カビや白カビが多かったりします。灰色の細い毛がもやもやしているカビはケカビで、赤色のカビはモニリヤというカビ。青カビは澱粉質の食物によくつくものでペニシリウム・ノータムというカビです。昔の人がモチに赤カビが生えれば日照り、青カビが生えれば雨多しと言ったのは、おもにカビの色から受ける感じからでしょう。しかしこうした関係は科学的に見てある程度正しいようでもあります。青カビが出やすいような年には、概して冬に大陸の高気圧の勢力が弱い年で、このような年には夏の太平洋の高気圧の勢力も弱くなる傾向があり雨が多くなります。赤カビの場合はこの反対で、日照りとなることが多いようです。 ちなみに、餅のカビを防ぐには、タッパーなどの容器を用いて、ふたの裏側に貼れる携帯カイロをつけて密閉しているとよいようです。(酸素がなくなるためカビが生えない。また何度かふたを開けてもその都度カイロが働くので大丈夫)

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塩、堅(かた)きはお天気続き

塩は潮解性があるために、湿度が高いと空気中の水分を吸収して湿っぽくなり、乾燥していると堅くなります。塩が堅くなるような時は、空気中の湿度が短時間に下がるような時ではなく、何日か晴天が続いて空気が乾燥するような時です。したがってこのことは何日間か天気がよく、湿度の低い日が続いたことを表わしているものですから、これによりその後、引続いてお天気続きになると予想することは難しいものです。 しかし、冬に強力な高気圧が発達するような年には、その持続性ががいして長く、なかなか天気がくずれないことが多いものです。よって冬に塩が堅くなるような時には、天気のよい日が続くと見てよいようです。夏にも太平洋方面の高気圧が発達して晴天が続く場合もありますが、この場合には太平洋の方から湿った空気が吹き込むので、塩はあまり堅くならず、このことわざのようにはいかないものです。したがってこのことわざは1、2月のものと言ってよいでしょう。

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冬スズメが群がり鳴く時は雪

「冬に軒にスズメがさえずるのは雪の兆し』ともいわれています。スズメが盛んに活動したり群がって鳴くような時には、餌を求める時です。日本海側の地方では、季節風が発達する時に山寄りの地方で雪が降りますが、雪らしい雪はいずれの地方も低気圧が通る時にみられます。日本の方ヘシベリアから寒気流が流れ込んでいる時に西の方から低気圧が近づいてくると、その前面ではまず温暖前線で雪が降り、次いで寒冷前線で雪が降ります。冬の低気圧の移動は速いので、この二つの前線による降雪がはっきり区別されないことも多いようです。低気圧が通ってしまうと、雪の明日といわれるように快晴となりますが、雪が降ったばかりで、すべての物が雪でおおわれている状態です。1、2日晴天が続げば雪が解けて草木その他が雪面上に顔を出してきます。このころになると次の低気圧が近づいて来て、その前面では南寄りの風が吹き寒気がゆるむのです。そこでスズメたちは、餌を求めて群がり鳴き、やがて雪が降ることとなるわけです。

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冬空に大音響あれば大雪の兆し

冬空の大音響というのは雷鳴のことです。雷は夏はかりでなく冬にも発生します。夏雷は関東地方など太平澤沿岸地方で多く発生しますが、冬雷は北陸地方など日本海沿岸地方、とくに雪のよく降る地域で発生することが多いようです。たとえば北陸地方では、一冬に80回近くの雷が発生します。日本海沿岸地方で見られる雷の原因にはいろいろありますが、日本海で水蒸気の供給を受けた北西季節風が日本の中央山脈に吹きあがって雷雲が発生することによる場合が多いようです。また北西季節風の下層は対馬暖流で暖められ、この暖かい気層と、その上を流れる寒冷な気層とが、時に転倒を起し、下層の暖かい空気が猛烈な勢いで上昇してそこに雷雲が発生することがあります。こうした雷を俗には『雪おこし」「ずりおこし」などと呼んでいます。これらのことわざの当る確率は77%くらいであるとされています。

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一月の寒の入りに雷鳴あれば、その年大雪あり

雲といえば夏を思い出すほど、夏の雷は印象的です。しかし、発雷数は少ないのですが、雷は他の季節にも発生します。空が雷雲でおおわれている時に、また雪が降っている時に突然雲の中からドンドンとか、ゴーという底力のある雷鳴が聞える冬雷は夏のそれとはちがい何か不気味な感じがします。
 冬の雷家の暗きに鳴り籠る (誓子)
雷鳴は聞えながら、雷光は見られないことが多く、落雷はほとんどありません。この雷は発達した前線のところで強い上昇気流が起こり、そこで発生した前線雷です。ところで二月の寒の入りに雷鳴あれぱその年大雪あり」ということが昔からよくいわれますが、寒の入りの日の雷鳴がとくに大雪と密接な関係があるわけではありません。しかし、この頃、雷鳴がよく聞かれるような年には、大陸の高気圧の勢力は強く、前線が発達しやすいので、冬に大雪が降ることがあるので、こうしたことがいわれるのでしょう。とくに日本海沿岸地方でこの傾向は顕著です。

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寒中霜を見るときには晩霜あり

「大寒中霜まく時は、まきたる日より百日後に霜害あり」とも言われています。冬の大寒中、すなわち1月20日〜3月3日頃までにかけて霜が見られるような年には晩霜害をよく受けるので注意した方がよいということです。大寒中の濃い霧は2つの原因により発生します。その一つは夜間の冷え込みがひどいときに、空気中の水分が凝結して霧となる場合です。言い換えれば、朝霧は放射冷却による霧と意ってよいでしょう。今ひとつの原因は、南の洋上の水蒸気をたくさん含んだ空気が流れ込んでこれが冷えて濃い霧を発生する場合です。いずれにしてもこうした冬の天候と百日後の5月から6月にかけての霜害とが直接関係あるかというと、そのような根拠はあまりないようです。ただ冬の霧のうちには、寒さの厳しいことによる冷却霧があります。この場合、春にも引き続いて大陸の高気圧が優勢で、晩春に発達した移動性高気圧がよく通り霜害を受けることもありますから、寒中に霧がよく発生するような年には一応晩霜に警戒した方がよいと思われます。

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冬、山に霧多きは大雪の兆し

冬の大雪の原因は日本海沿岸地方と太平洋沿岸地方でややちがいます。日本海沿岸地方では西高東低の気圧配置がくずれて、季節風がやや弱くなってきた時に陸風と季節風とによってつくられる局地的な前線や、また日本海中部の気圧がやや低くなり弱い低気圧が東進する時に大雪が降ることが多いようです。いずれの場合にも、大雪の降り始める前の風向はだいたい南東の風で、陸から海の方向へ吹く風ですから、このために山に霧が多く発生するようなことはありません。
 これに対して太平洋沿岸地方で見られる大雪は日本の南の海上を低気圧が通る時です。この場合にはその前面では南東の風が吹き、この南の方からの水蒸気をたくさん含んだ空気が山に吹き込んで冷え、霧が発生することになります。この場合、南風に含まれている水蒸気量が多い時ほど濃い霧が発生することとなり、そうした時にはやがて低気圧が来て、大雪が降ることがよくあります。

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鶴の仰ぎ鳴くは晴、うつむき鳴くは雨

 日本に渡来するツルには大型なタンチョウヅル、マナヅルと小型なナベヅルなどがあります。これらは初冬の頃にモンゴルや満州方面から渡って来ますが、その数は近年著しく少なくなったようです。江戸時代以前には日本の各地で冬にツルの姿が見られたそうですが、今では北海道や鹿児島阿久根地方にわずかに渡って来るだけです。ふつうは10月中・下旬に渡って来て、3月上中旬に渡去しますが、渡って来る時期の気温は日平均気温で北海道では8〜10度ですが、阿久根では17〜18度です。春に渡去する時期の気温は北海道では−4〜−3度ですが、阿久根では13〜15度で、渡来並びに渡去の時期の気温は北海道より九州の方が遙かに高いことが注目されます。ツルは天気には案外敏感で、寒さの厳しい時には身じろぎもせずじっと立ちつくしています。天気がよいと空をあおいで元気に鳴き飼をあさり、天気が悪くなり始めるとうつむきかげんで鳴くのでこうしたことわざがいわれたのでしょう。

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冬に三日の大荒れなし

冬にはシベリアに高気圧が発達し、西高東低の気圧配置になることが多いものです。このような時には強い北西の風が吹き、太平洋沿岸地方もこの高気圧におおわれます。そのため台湾沖の東方洋上で発生して北東へ向かって進んで来る低気圧、いわゆる台湾坊主は日本列島の沖を東進することとなり、強い風雨に見舞われることはありません。しかし冬にも時にはシベリア高気圧の勢力が弱くなることがあり、この場合には日本の上を低気圧が通り、かなり強い風雨や風雪に見舞われることがあります。しかし、この場合にも、他の季節とちがって、シベリア高気圧による偏西風が強いので、低気圧が押し流されて、その東進の速さが他の季節より速いのです。したがってこの低気圧にともなう大荒れは3日以上も続くようなことはあまりないので、昔からこのように言われたのでしょう。

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寒が暖かいと凶作

このことわざは山形県その他の地方でよくいわれています。「寒が暖かいと凶作」というのは、冬の寒のころの気候がいつもの年よりも暖かい時には夏の気温が低く冷害を受けて凶作になりやすいということをいっているわけですから、このことわざが正しいかどうかは寒のころの気温と夏の気温との関係を調べればわかるはずです。
 そこで、寒のころの気温、すなわち一月の気温と豊凶と最も密接な関係にある八月の気温との関係を鈴木哲夫氏が調査した結果によると、この相関係数は石巻ではマイナス0.38、秋田ではマイナス0.14という値が求められています。
 これらの相関係数はいずれも55年間の気温統計から求められたもので、この結果によると、寒が暖かいと夏は低温で凶作となる傾向は認められますが、こうした関係はそう密接であるとはいえないようです。また昭和24年は暖冬で、夏には強い台風に3回襲われていますが、それほど顕著な凶作とはならなかったようです。「冬寒ければ夏暑し」といわれることに関連して(逆のパターンとして)このようにいわれるのでしょう。

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フクロウが鳴くとお天気

寒い冬の夜にゴロッ、ゴロッ、ゴロッポーコーというフクロウの鳴き声を聞くとさびしさの中に何か無気味さをおぼえるものです。また「フクロウに人買舟のすべり出る」(拐童)という句もあります。こうしたことからフクロウは「魔の鳥」とも「不幸を招く鳥」ともいわれています。昔はフクロウの鳴き声を聞いて天気を予知することわざがよくいわれていました。「フクロウが鳴くとお天気」ということが最もよくいわれていましたが、一方『フクロウが遠く鳴くと翌日天気、近く里で鳴けば荒れる」などともいわれていました。夜間のお天気が良いとフクロウが盛んに活躍するので鳴き声がよく聞かれ、こうした時には普通はその後一日くらいは天気の良いことが多いので「フクロウが鳴くとお天気」ということわざが広くいわれるようになったのでしょう。しかし天気はフクロウの鳴き方によっても違い、そのため「フクロウが糊付けほせと鳴けばお天気」「糊付けホホ』または「糊とめおけと鳴けば雨」といわれ、フクロウの鳴き方で天気は違うようです。

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寒に霜多き年は夏干ばつあり

寒に霜が多い年というのは寒のころの寒さがいつもの年よりも厳しい年です。どのような年に寒の寒さが厳しいかというと、寒のころ大陸の高気圧の勢力が例年よりも強く、そのためシベリアから日本の方へ寒冷な空気が多く流れて来るような年です。
 一方夏の干ぽつはどのような時に発生するかというと、太平洋の高気圧の勢力が例年より著しく強く、この高気圧に日本がおおわれる時です。このような場合には、日本付近を低気圧が通ることができず、また前線も発達しないために晴天が続き干ばつとなります。したがって寒に霜多き年は夏干ばつというのは、冬に大陸の高気圧の勢力が強い年には夏に太平洋の高気圧の勢力が強くなる傾向があるからです。「冬寒ければ夏暑し」ということわざがありますが、表現はちがいますが内容はだいたい同一のものとみてよいでしょう。このことわざと反対に冬が暖かければ夏の雨が多いかというと必ずしもそうしたことはいえません。

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冬 北風つのれば雪となる

冬に西高東低の冬型の気圧配置となり、北ないし北西の強い季節風が吹く時にこの風をまともに受ける日本海側の地方や中部山岳地帯では雪が降ります。この場合に、日本海を渡ってきた季節風が日本の中央山脈に吹ぎあがって、雪が降るので、こうした雪は平野地帯よりも山寄りの地帯に多くの雪をもたらすことが多いものです。そして、北西の季節風のもっている水分を日本海側に雪として降らしてしまうので、太平洋側の地方は晴天に恵まれます。
 ところで、同じ北西の季節風でも気圧の配置によって風の吹きかたが違います。寒冷前線が通った直後に大陸の高気圧が張り出して来て、気圧傾度が大きくなり、強い北西の風が吹く場合と、千島列島方面の低気圧が急に発達し、このために西高東低の気圧配置となって強い北西の風が吹く場合とがあり、ふつうは後者の場合の時のほうが多くの雪が降る傾向があります。いずれにしてもこうした原因による雪は大雪とはなりません。

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寒中の雷は豊作の兆し

寒中に雷鳴を聞くことがよくあります。寒中の雷は夏に発生する熱雷と違って大陸高気圧が日本の方へ張り出し、その際季節風の吹き出しによる寒冷前線が通過するときに、この寒冷前線の滑走面に沿って強い上昇気流が起り、そのために発生する雷です。したがって寒中に雷がよく発生するような年は、いつもの年より大陸高気圧が、日本の方へ張り出すことが多く、いいかえればいつもの年よりも寒気の厳しい年とみることができます。
 ところで「冬寒ければ夏暑し」ということわざがあるように、冬に寒さの厳しい年には、とかく夏が暑い傾向があるので、結局、寒中に雷がよく発生するような年は豊作となる傾向もないとはいえません。これに対し、元来雷は夏に多く、冬に雷が多い年は異常な年とも思われるところから、反対に、「寒雷は凶作」ともいわれます。もっと寒雷が多く、大雪が降り雪害を受けて凶作となる作物もあるので寒雷だけの影響でない場合もあります。

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冬、月夜のときは翌朝か、翌日の昼から雪

冬には西高東低の気圧配置となるので、日本海沿岸地方は日本海を渡って来た水蒸気を沢山含んだ北西の風をまともに受けて、雲が多く発生するから、月夜はほとんど見られません。したがってこのことわざは冬に月夜が比較的よく見られる東海地方から関東地方にかけていわれています。太平洋沿岸地方ならその他の地方でもこうしたことがいえます。冬の夜にこうこうと輝く月が見られるような時は大陸の高気圧に広くおおわれ非常に天気のよい日です。こうした状態で3、4日も続くことがよくありますから、月夜のときに翌朝か、翌日の昼から雪となるとはかならずしもいえません。
 空が晴れていても暗夜の時よりも月夜の時のほうがさむざむとした印象を受けるので翌朝か翌日に雪が降るといったのでしょう。いずれにしても雨か雪かいずれかになるかは、寒さで違い、気温が0度以下なら必ず雪となり、気温が6度以上なら必ず雨となり、2度なら50%が雪になります。

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炭火のよくおこるは晴れ

木炭が燃料として多くの家庭で使われていた時代には炭火のおこりかたから天気を予知することわざがよくいわれていました。木炭は元来吸湿性が高いために、空気の湿度が高くなると湿気を吸収して湿るために火つきが悪くなります。一方冬に天気がよい日には、大陸の高気圧におおわれ、とくに太平洋沿岸地方は北西風が中央山脈を吹き越える際に、その中に含まれている水分が雪や雨となって降り、その結果乾燥した風、すなわちフェーン風となるために木炭が乾燥して炭火がおこりやすくなります。すなわち冬には炭火がよくおこるような日は西高東低の気圧配置であり、太平洋沿岸地方は晴れることとなります。
 それに対し、このような時には日本海沿岸地方や中部山岳地帯などは逆に天気が悪くなり、雪が降ったりします。西高東低の気圧配置は数日くらい続くこともよくありますから、炭火がよくおこるような時には当日はもとより2〜3日晴天が続くと見てもよいでしょう。

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冬の夜ざえは雨近し

冬になると大陸の高気圧が発達して西高東低の気圧配置になることがよくあります。この場合には強い北西風が吹き、日本海側には雪が降りますが、関東以南の太平洋側では晴れることが多く、風向がとくに西にかたむくと風が強くなり、寒気がきびしくなります。こうした季節風の吹き出しは2日くらい続きますが、この場合には東支那海上や、太平洋上の水蒸気を含んだ空気が吹き込むので、星がきらきら輝くような夜ざえとはなりません。
 これに対し、北高南低型の気圧配置となり、日本中が北風となる時には、気温が案外下がらないで、風もそう強くありません。そして風が日本を縦走している中央山脈を乗り越える時に、日本海側に空気に含まれている水蒸気を雨や雪として落としてしまうので、太平洋側の空気は乾燥し、夜ざえとなります。そしてこのような時には、太平洋側に低気圧が接近することがよくあるので、夜ざえは雨近しということになるわけです。