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空夢の部屋

5月の天気ことわざ

五月晴れ。紫外線量は意外と多い。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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山に窓がかかると雨

 山にかかる雲の状態から雨を予想することわざはいろいろあるが、そのうちで山に窓がかかると雨ということが関東地方その他の地方でよくいわれています。山に窓がかかるというのは、山の稜線は高いところも低いところもあるのに対して雲の底辺がだいたい一定である時には、稜線の低いところに雲がみられず、あたかも窓があるように見えるからです。日本では平地を囲む多くの山は、その高さが1000〜1500mくらいですから、山に窓があるときには、下層雲が空をおおっている時とみて良いでしょう。下層雲には黒っぽく見える層積雲や乱層雲があり、これらの雲の雲底は平たく、また夏によく見られる垂直に発達する積雲も底部に平たく水平に拡がっているので山に窓がかかることになります。これらの雲が見られるようなときには、低気圧がかなり近づいている時に多いので、やがて雨が降り出すとみてよいでしょう。

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夜の稲妻雨招く

 雷はその発生原因によってわけられています。夏の午後に良く発生する雷は熱雷といって、天気の良いときに局所的に日射であたたまった空気が上昇して、これが動機となって発生する雷です。この雷は、夜になり地面が冷えてくると消滅してしまいます。これに対して低気圧が近づいてくるときに発生する雷があり、これを渦雷といいます。渦雷は発生した低気圧が襲来するときなどに良く発生します。また前線が発達すると、そこに強い上昇気流がが起こるので、このために雷が発生することがあり、こうした原因による雷を界雷といいます。夜の稲妻というのは、熱雷ではなく渦雷か界雷ですからいずれにしてもこれらによる稲妻が見られる時には、発達した低気圧が近づいている証拠であり、天気は下り坂で、やがて雨が降るとみてよいでしょう。この場合には大気が著しく不安定な時であり、意外な大雨が降ることがあります。

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山に黒雲がかかると大暴風となる

 雨も降らず、強い風も吹かないのに、山の中腹より高いところが黒い雲でおおわれることがあります。これは、上層でかなり強い風が吹いていて、この風が山に吹き当ると、山肌に沿って吹ぎあがり、この上昇気流が高いところで冷えて、この空気に含まれている水蒸気が凝結して雲となる場合です。こうした時には下のほうから次から次へと湿った空気が勢いよく昇ってくるので、雲を構成する霧粒が多くなるので濃厚な雨となり黒く見えることになります。これは、かなり発達した低気圧が近づいている時に多いので、やがて低気圧が到来して大暴風となることが多いようです。そしてまた、梅雨時から夏にかけては、太平洋に高気圧が発達し、太平洋のほうから水蒸気をたくさん含んだ空気が日本のほうへ流れ込んでいる時だけに、発達した低気圧が日本に近づくと黒雲のみられることが多いのです。したがって大雨の降ることも多くなります。

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山中にて霧谷間より立ち昇る時は雨、谷間へ降りる時は必ず晴れ

 低気圧が近づいて来る時にはしだいに空気中の湿度が高くなり、また風が強くなり、この風が山々の峰を吹きわたるさいに湿度の高い風が山に当って上昇すると冷えて霧が発生することになります。それで霧が谷問から立ち昇るように見える時には低気圧が近づいている時であるからやがて雨が降ることが多いと見てよいでしょう。一方天気がよい時には山肌が温められてその上の空気が上昇していわゆる谷風が強くなります。谷にある温まった空気が谷風となって山の頂に向かって流れると、高いところへ行くほど気温が下がり、空気に含まれている水蒸気が凝結して霧となります。したがってこの場合には気温の低い山の頂に近いところは霧が発生することとなり、しだいに下の方も霧が多くなるので霧が谷間に降りるように見え、そうした時は晴れるというわけです。

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月のかさ大きいほど雨近し

 月がさは雨近い兆しという意味のことわざは世界各地で広くいわれています。これは低気圧が近づいてくると、上空に水蒸気を含んだ南風が吹き込んで、これが冷えて小さい氷の結晶となり、これに月光が射すとプリズム作用により光が屈折して、かさが見られることになります。ところでこの場合、月のかさが大きいほど雨が近いということわざがあります。これについて、アメリカのミズリでジ・リーダーが観測した結果によると、小さいかさだと12〜18時間内に雨の降ることが多く、大きいかさでは24〜36時間内に雨が降るという結果を求めています。この正否は別として、低気圧が近づくにしたがって雲の高さや、雲を構成する水滴の大きさや濃度がちがってきてかさの大きさが変ることとなります。かさが大きい場合には、一つには雲でおおわれている範囲が広い場合であり、そうした時には低気圧がかなり近づいて来ている時であるから、やがて雨が降ると見てよいでしょう。

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朝北風、夕南西の風は晴

 このことわざは南に海をひかえ、北に山をひかえている地方でよく言われていることわざで、関東以西の太平洋沿岸地方でよく言われます。これらの地域の、山麓地帯では天気のよい日の夜問には、山から吹き降す風である山風、いいかえれば北風が発達し、一方天気のよい日の昼問には、低地から山の高いところに向かって吹くいわゆる谷風が、すなわち南風が発生しやすいものです。また海岸に近い地域では、天気のよい日の朝には陸から海に向かって吹く陸風、すなわち北風が発達し、夕方には海面上の空気よりも陸の方の空気の方が暖められるために、海上の冷たくて重い空気が、陸上の暖められ軽くなった空気の下へ流れ込むことになります。上述のような山谷風や海陸風は、いずれも天気がよい時ほど発達するので、結局南に海をひかえる地方では朝北風、夕南西の風が吹けば晴れるといえることになります。ただ低気圧が南から近づいて来る時にも南西の風が吹くので、いつも適用できるわけではありません。

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トビが高く飛べば大風が吹く

 大風をともなうような低気圧が近づいて来ると、地面近くではまだそれほど強い風が吹かなくても、高いところでは強い風が吹き始めます。とくに海に近い山寄りの地方では、山に風が吹きつけると、そこで収敏して山に沿って吹き昇る風が強くなります。このように上層の風が強くなると、風を利用して飛ぶトビは、いつもよりも高いところを飛ぶようになりがちです。また、南の方から低気圧が近づいて来て風が強くなる時には、気温が上がり、湿度が高くなるというような変化に伴って、トビの餌となるような昆虫などが上空に多くなり、これらを追ってトビも高いところを飛び廻ることになります。いずれにしても、こうしたことから多くのトビが高いところを飛びかうような時にはやがて大風が吹くとみてよいでしょう。

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羽アリが多いと雨近い

晩春から夏にかけて、雨あがりの蒸暑い日の夕方に羽アリが群をなして飛んでいることがあります。 羽アリはふつうのアリのオスとメスが交尾期になって羽がはえ、いわゆる羽アリとなって巣から飛び出したものです。空中を飛びかい、交尾が終ると再び地上に降り、オスはまもなく死にます。メスは羽を落して産卵します。羽アリとなる季節や時期はアリの種類で違い、クロナガアリは春、クロオオアリは初夏、夏には最も多く、トビイロシワアリ、トピシロケアリ、クロサグアリ、アズマオオスアカアリ、クロヤマアリ、秋にはトビイロシリアリ、トゲアリなどが羽アリとなります。羽アリは蒸し暑い日の夕方に飛びまわることが多いようです。このような時には低気圧が近づいている時で、南寄りのなま暖かい風により蒸し暑い時ですから、アリの交尾には都合がよく、羽アリが飛び回るのを見かけることが多くなるのです。このような時には低気圧の温暖前線が近づく時でやがて雨となります。  

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ザクロの花咲きし後は霜降らず

ザクロには、実のなる実ザクロと、実のならない花ザクロがあります。花ザクロの多くは八重咲で、紅色、絞りなど種類が多いようです。ザクロが咲き始める時期は、関東以西の太平洋に沿う気候の暖かい南の地方では5月下旬ごろですが、それより北の地方や山の高いところへ行くほどおくれて咲き、東北地方では6月下旬に咲き始めます。開花し始めると4、5日で満開となり、2週間くらい咲き続けた後、7月中旬に終ります。ザクロの開花期に対し、平年の終霜日は多くの地方では、ザクロが咲き始める時期よりも約1か月もおそいので、普通はザクロの花が咲き始めた後に霜が降りることはありません。たとえば東京付近では、平年の終霜日は3月29日で、最もおそく霜の降りた日は5月16日であるのに対し、ザクロは6月の始めごろに咲き始めるから、ザクロの花が咲いてから霜の降りることはありません。もっとも非常にまれに中部山岳地帯や東北地方でザクロの花が咲いて霜の降りることはあるようです。

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朝雨は女の腕まくり

朝の雨は降ってもすぐ止むことが多いことを、「女は腕をまくりあげて威張ってみても、すぐへこたれてしまう」とたとえています。こうしたことがとくにいえるのは、海岸に近い地方の晩春から初秋にかけてです。この季節には夜間に陸地が冷えるにしたがって、陸から海へ向かって吹く陸風がみられるようになります。このとき内陸の上層に低気圧ができると、上層では陸風と反対方向の風が吹くこととなります。この風は暖かく湿気を含み、これが内陸の寒気と接触し前線が形成され、雨が降ることとなります。この場合には、夜があげて陸地が暖まるにしたがって風向が変り、海風が吹くようになると前線が消えて天気もよくなります。元来こうした朝雨は高気圧におおわれて天気がよく、地面が冷えた時に起るので、日中は晴天となることが多いようです。朝雨でも低気圧に原因するものは必ずしも天気がよくなるとは限りません。この種のことわざは「朝雨みのいらず」などといい古くからいわれています。それにしても現在の男女平等の世の中では違和感のある例えであり、このようなことわざは、これからすたれていく運命にあるのではないでしょうか。

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五月に天気良ければ干ばつ

5月から6月にかけての天気から、その年の夏が干ぱつになるかを予想することわざが昔からいろいろいわれています。例をあげれば「旧4月8日に雨降ればその年は干ばつあり」「旧4月28日に雨降らざれぽ空梅雨来る」「旧暦4月1日ないし3日、5月1日ないし5日、この間に雨降らざるときは干ばつの兆し」その他があります。夏の干ばつは、太平洋に発達する高気圧の勢力が例年より著しく強く、これに日本がおおわれるために起きます。こうした高気圧の発達は移動性高気圧とちがって広い地域の天候を支配する大気の大環流によるものです。したがって従来の夏の大干ばつ年についてみると、いずれの年にも5月のごろからその兆しが見られ、晴天が多くなっています。したがって梅雨の走りの見られる5月の天気が、晴天の多い年には夏に干ばつとなる可能性が大きい。昭和14年の大干ばつもそうでした。

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春雷は日照り

春に雷が多い年の夏には日照りとなる年が多いという意味のことわざは各地でよくいわれています。一般的には「四月雷は日照りのもと」(ただし四月は新暦の五月)といわれ、岩手県では「四月雷、馬鍬つるせ」、福島県では「春早く雷鳴のあるのは日照りの兆し」、香川県では「四月雷は地底が割れる」などといわれているようです。いずれにしても新暦の五月のころに雷が多いような年の夏には日照りとなるというのです。元来雷は夏に多いものです。夏の天気のよい日には強い太陽の光で地面が熱せられて、その上の空気が軽くなって上昇し、この上昇気流のために熱雷が発生します。したがって夏に雷が多いような年は天気のよい日が多く、豊作となります。ところで春雷は早く夏型の天候となった年というよりも、このころ東西に伸びた前線がよく発達し、これに伴って雷が発生することが多い年で、こうした年は太平洋高気圧の勢力が例年より早く強くなる事が多く、夏に日照りとなりやすいのです。

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ホタルが家の中にまいこむ年は災害多し

ホタルは五月にはいるとやがて南の地方で見られるようになり、五月下旬になると関東以西の太平洋沿岸地方や四国、九州の多くの地方で姿を現わします。六月中には東北の北東部を除く本州のいたるところでも見られるようになります。川べりをホタルが飛びかう風情はこの季節に欠くことのできない風物詩でしたが、最近はめっきり少なくなりました。ホタルは夕方に薄暗くなると光を点滅しながら飛び交い始め、夜半近くに盛んに飛びかい、その後は草の中にかくれて飛ばなくなります。またふつうは雨の日の夕暮れには飛びません。ホタルが家の中に舞いこんで来るような年に災害が多いというのは、雨が多く河川が増水すると、水辺で多く見られるホタルが逃げて、時には家の中に舞いこむことがあるからです。このようにホタルが家の中にまで舞い込むような大洪水がある年には、とかく風水害は多い年であることが多いので、こうしたことわざが言われたのでしょう。

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鯛東風(たいこち)は雨降らず

 このことわざは瀬戸内海の鯛のよくとれる地方でいわれています。瀬戸内海では五月中旬から六月上旬までの一ケ月間が鯛の最もよくとれる時期なのです。このころに西から移動して来た高気圧が日本の東方海上にあり、夏型に近い気圧配置となり、低気圧が東支那海から日本海に抜ける時には天気がよく、東ないし南東の風が吹いてよく晴れます。また、たとえ雨が降っても大雨とならずに雨量が少ないのが常です。このような気圧配置になると、晴天が一週問から10日間くらいも続くことがよくあるので、これを「四月(陰暦)のいぽし」ともいい、以前は塩田業者には都合のよい天気で歓迎されたようです。ただ年によっては、このころ梅雨の走りが見られ、そのため鯛東風の晴れが長く続かないこともあります。しかしこの走り梅雨もそう長続きしない状況の場合が多いようです。 

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蒸し暑い翌日は雨

今日はいやに蒸し暑いなあと思う時があります。こうした日の翌日には雨が降ることがよくあります。雨の降る主な原因は低気圧です。低気圧は時計の針と反対方向の大きな空気の渦巻ですから、その前面では南寄りの風が吹きます。日本で南風といえば多くの地方では太平洋の方から吹いて来る風ですから、湿気を多く含んだ暖かい風であり、蒸し暑く感じることになります。したがって、春や秋に蒸し暑く感じる時には低気圧が通り雨が降るとみてよいでしょう。そして低気圧が通ってしまうと気温が下がり、からっとした天気になります。台風の場合には、温帯低気圧の場合よりも接近により一層強い蒸し暑さを感じます。なお、日本海沿岸地方は、低気圧が近づいて来ても南風が中央山脈を乗り越えるために、フェーン現象を受けて空気が乾燥するので、低気圧接近のさいにそれほど蒸し暑さを感じません。それで、このことわざは東海地方から東北南都地方にかけてよくいわれています。

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落陽時に無風ならば晴れ

低気圧が近づいてくる時や、その勢力圏内では落陽時に特に風が弱くなるということはありません。これに対し、高気圧の勢力圏内では、一般風は低気圧の時にくらべるとがいして弱いものです。しかし、この場合には、海陸風、山谷風、湖風、川風など、局地風が発達します。局地風は、天気がよいと場所により昼間の暖まりかた、夜間の冷えかたがちがい、そのために冷えた重い空気が、暖かい軽い空気の方へ流れることにより起る風なのです。
 そして、前述のような局地風は、いずれも夕方と朝方に風向が反対方向に変り、この風向の変る時には一時、凪(な)いで無風に近くなることが多い。したがって日中天気がよく、落陽時に無風になるような時にはかなり優勢な高気圧におおわれている時ですから、その翌日はだいたい晴れるとみてよいでしょう。しかし、雲が厚く、曇っていて落陽時に無風な時には必ずしも晴れるとはいえないでしょう。

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春風秋よし

「春風秋良し」または「春先、三度大きい春風があれば作がいい」ということが昔からいわれています。これらは春に風がよく吹くような年には夏の天候がよく、夏作物が豊作になるという意味です。春にいつもの年よりも強い風がよく吹くような年はどのような年かというと、早春に大陸高気圧の勢力が強く、強い偏西風が吹くことの多い年や、発達した低気圧が通り、その後から高気圧が張り出し強い風が吹くような年です。こうした春の強い風の原因は、だいたい春に大陸の高気圧の勢力が異常に強い時であり、このような年には、とかく夏に太平洋の高気圧の勢力も強いことがよくあります。夏に太平洋の高気圧の勢力の強い年には夏が高温で、稲作その他の夏作物が豊作となる傾向があるので、こうしたことがいわれるのです。「冬寒ければ夏暑し」ということわざとだいたい似ています。

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春、雨多ければ干害あり

春に雨が多いような年には夏が日照りとなることが多いとよくいわれます。実際にはどうかを岡山について調べてみると、明治37年、同39年、同42年、大正13年、昭和9年、同14年は夏が干ぽつであり、このうち明治37年だけが春4月の降水総量が平年よりも32.7ミリも多かったのですが、その他の年はいずれも少なく、むしろ夏に大干ばつとなる年には春のころからすでに雨の少ない傾向がうかがえ、春、雨多けれぽ干害ありといえないこととなります。おそらく春に雨が多いと干害があるというのは、春に夏の分の雨までも降ってしまうので、その後が干ばつになるだろうというような推理からいわれるようになったものでしょう。したがって春に雨が多く夏の干害を心配する必要はないでしょう。また春に雨が多ければ夏にも雨が多く水害を受けることがあるとみたほうがよいでしょう。

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4月(旧暦)に雨降れば百姓やめて奉公せよ

昔は陰暦が使われていたので、4月とは現在のだいたい5月のことで、このころに雨が多い年には百姓をやめて奉公に出たほうがよいということをいっていたようです。これはそのような年には、その後夏にかけての天候が悪く、多くの農作物が不作となるからです。
ところでこのことはそのまま、いいかえれば太陽暦の4月についてもいえます。4月に雨が多く、例年より気温が低いような年には夏期の気温も低くなる傾向があります。たとえば新潟について4月の気温と8月の気温との相関係数を求めて見ると密接な関係があり、4月の気温が低ければ8月の気温も低くなる傾向が強いようです。このような関係から見ると、4月の気温が低い年には稲作が不作となるともいえます。この関係は地方によりちがい、4月の気温と米収量との相関を見ると、群馬県や、宮城県では、他の地方に比べて関係が深いようです。

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あばら骨状のすじ雲は雨

すじ雲とは絹雲(けんうん)のことで、青空にあたかも細く白い絹糸が何本も流れているように見える美しい雲のことです。この雲は上層雲であって高さ6000メートル以上の高い所に現われる雲です。この種の雲もよく観察するといろいろな型があります。直線に近いがややうねった繊維状(せんいじょう)の毛状絹雲(もうじょうけんうん)や、雲の端がかぎ状あるいはコンマ状になったかぎ状絹雲や、色がやや暗色な濃絹雲(のうけんうん)などがあります。
 青空に白いすじ雲が見られる時には晴天が続きますが、すじ雲が暗色で、やや曲った繊維状を呈していて、ところどころにかぎ状絹雲が点在している場合には、同じすじ雲でもやがて雨が降ることがよくあります。この場合、とくに幹となる雲から左右に枝が何本も出てあばら骨のように見えるすじ雲が現われる時にはやがて雨が降ることが多いようです。これは低気圧が接近し、太平洋の方から暖気流が流れ込んでいる時であるからです。

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着物を裏返しに着ると雨

着物を裏返しに着ると雨が降るという科学的な根拠はありません。しいて理屈をつけると、低気圧が近づいて来るような時には、とかく気分がすぐれず落着かず、注意力が散漫となりイライラしがちとなり、うっかり着物を裏返しに着てしまうことがあります。
また雨が降る時には、低気圧が近づくために、太平洋沿岸地方では海を渡って来た湿気を含んだ南風が吹き込みます。このため着物が湿り、湿ると乾いている時よりも脱ぎにくくなり、そのため着物を脱ぐ時に嚢返しになりやすく、次に着物を着る時つい裏返しに着てしまうこともある。子供はよく着物を裏返しに着て面白がったりするが、裏返しに着ると裏側が土などで汚れたりするので、そのようなことをしないように子供のしつけとして裏返しに着ると雨が降って外で遊べなくなるからこのようなことをいったのでしょう。このような意味では天気を予知することわざではないといえます。

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クヌギの花が平年よリ多く咲いた翌年は大雪

初夏の野生植物の状態から翌年の冬の雪の降りかたを予想することわざがいろいろいわれています。なかでも「クヌギの花が平年より多く咲いた年は大雪」ということが雪国ではよくいわれます。クヌギは雌雄同株の落葉喬木で5月ごろに新枝の茎部に黄褐色の細花を穂状につけます。冬に大雪が降ると、雪でクヌギの花芽がおおわれて寒さから保護されることとなり、その結果冬に大雪の降ったような年には花が平年より多く咲くこととなります。こうしたことはサクラでもよく認められ、雪面上に出ていた枝には花が咲かず、雪面下の枝の花だけが咲くことがあります。
 ところで大雪には、6年、7年、11年、12年などの周期があり、大雪期には何年間か大雪が降り続くことになります。したがって、クヌギの花が大雪に埋まり寒さから保護されて多く咲くような年の翌年には大雪となる確率が高くなり、こうしたことわざがいわれるようになったのでしょう。

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雲が沖から静かに上ればよい天気

このことわざは主に日本海に面した北陸地方などでよくいわれています。この地方では雲が山の方から海の方へ向かって、いいかえれば北に向かって移動するような時には日本海を低気圧が通る時ですから、この低気圧の影響を受けて天気が悪くなることが多いのです。
 ところが反対に雲が海の方から陸の方に向かって静かに移動するような時には、低気圧がすでに去ってしまい、近くに低気圧の無い時ですから、天気もよくなると見てよいでしょう。雲の動きが速い場含にはたとえ天気がよくても、近くに低気圧が進んできている時ですから、そのよい天気は長続きしません。
 また冬には低気圧が通ってしまっても、大陸の優勢な高気圧から寒波が押しよせてきて、これが山脈に吹ぎあがり、雪が降ったりして天気はかえって悪くなります。このことわざで最もよく通用するのは夏です。夏には日本海に面した地方ばかりでなく、太平洋に面した地方でもこうしたことがいえます。

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花多ければ大風

サクラの花が散るころになると、しだいにいろいろな花が咲き乱れる季節にはいります。多くの花が咲き美しい季節ですが、このころに花が多く咲く年には大風が吹くという意味のことわざがいろいろいわれています。たとえば「キリの花多ければ大風あり」「ナシの花つき多く、よく咲く年は暴風多し」「ナスの花よく咲く年は大風」などといわれます。これらは、暴風に見舞われるような年には植物があらかじめその暴風にたえるように花着きが多くなるという考えからいわれだしたように思われます。たしかに実際にも、植物は天気がよく、強い風が吹いて栄養体が痛めつけられるような時には開花が促進される傾向がある。
 しかし植物が今後の大風を予想して多くの花を着けるようなことはありえない。ただ、春から初夏にかけて花がたくさん咲くような天気の良い日の多い年、いいかえれば太平洋の高気圧の勢力の強い年には台風が多く襲来することが多い傾向があるので、こうしたことわざがいわれるようになったのでしょう。

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雷はげしく鳴るときは後晴れ

このことわざは日本海沿岸地方、とくに北陸地方でよく当ります。雷の原因にはいろいろありますが、そのうちでも前線に伴う雷、すなわち前線雷と夏の暑い日の午後に発生する熱雷については、こうしたことがいえます。低気圧は、温暖前線と寒冷前線を伴います。いずれもこれらの前線が発達する時には、この前線に沿って強い上昇気流が起こり、雷が発生してはげしい雷鳴が聞えます。この場合には、低気圧はふつうは西から東へと移動しているので、低気圧が通過すれば晴れることになります。
 しかし、冬には大陸の方から偏西風が吹いてきて、これにより形成された前線で発生した雷の場合には、雷がはげしく鳴ってもその後晴れません。また夏になると、地面が強い日射であたためられて、局地的に上昇気流が起こり、このためいわゆる熱雷が発生します。この場合には発達した高気圧におおわれて天気が非常によい時ですから、ふつうはその翌日も晴れることが多いようです。 

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朝霧は10時頃までには晴れる

前夜寝る時には星が輝き快晴であったのに朝起きてみると濃い霧があたり一面にたちこめていることがあります。霧はいろいろな原因で発生します。低気圧の前面では暖気が吹き込み、これが冷えて霧が発生することがあります。また北日本の太平洋沿岸地方では初夏の頃に濃い海霧におそわれることがよくあります。こうした原因による霧は、夜が明けて日が高くなり、10時を過ぎても消えないことが多いようです。
 ところが朝の濃霧で10時頃になると消えてしまう場合があります。こうした霧は夜間の冷え込みのひどい時に、いいかえれば快晴で夜間放射が盛んに行なわれた時に発生した放射霧です。したがって、元来天気がよいので、夜が明けた時は濃霧におおわれていても太陽が高くなり、地面近くの気温が高くなるにしたがって消えてゆきます。そして朝霧が10時ころまでに消えて晴れあがるような日は、その日1日はだいたい風の静かな快晴に恵まれるとみてよいでしょう。

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高い山に笠雲が現れると雨

山で見られる笠雲というのは、山の頂上近くに、ちょうど笠をかぶったように見える平らな雲のことであって、これはレンズ雲の一種です。低気圧が近づいて来ると、その前面では水蒸気を多く含んだ南寄りの風が吹き、山に吹きあたり、山肌にそって吹きあがって冷えて山頂近くに現われた雲です。したがって笠雲が現われたときには上層の風がかなり強い南寄りの風となった時であり、いいかえれば低気圧が西の方から近づいて来た時ですから、やがて低気圧の襲来により雨が降り出すことが多いのです。
 こうした現象はとくに孤立した山でよく見られます。富士山の笠雲について、笠雲が現われてから24時間以内に、少しでも雨の降る確率を調べた結果は63%で、一日以上先の雨の降る場合を考えるさいには、かなりよく当ると見てよいでしょう。ただ夏には天気のよい日に谷風が発達して似た雲が発生するので、これと区別しなければならないでしょう。