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空夢の部屋

6月の天気ことわざ

梅雨前線の活動が気になる月。地球の温暖化と共に、線状降雨帯の発達や台風の早期襲来など気象の変化に要注意。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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朝富士にタ筑波

 朝は富士山が見え、夕方には筑波山が見えるような時にはその翌日は晴れるということが古くから東京付近でいわれています。朝に西にある富士山がよく見え、夕方には東にある筑波山ががよく見えるような時には、関東平野の西から東にわたる広い範囲の空気中の水蒸気が少なく澄明度がよく非常に天気のよい時です。東京から富士山までは約98キロあり、筑波までは約64キロあり、合わせて162キロの範囲にわたって澄明度がよいということは冬には大陸の高気圧に、また夏には太平洋の高気圧におおわれている時で、このような時には晴天が続くから朝富士にタ筑波といえます。この場合夏より冬の方が空気が乾燥しているので富士山も筑波山もよく見えます。一方春や秋にも移動性高気圧におおわれ快晴となり、富士山や筑波山がよく見えることがありますが、これらの季節には移動性高気圧のすぐ後から低気圧が進んで来るので必ずしも朝富士にタ筑波とはいえないでしょう。

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富士さんが笠をかぶれば雨

 富士山を人格化して富士さんといったものです。富士山が笠をかぶるというのは、山頂にあたかも笠をかぶったような雲がかかった時のことで、こうした雲は富士山にかぎらず高い山ではよく見かけることがあり、笠雲と呼んでいます。富士山に強い風が吹きつけると、その風上側の山肌に沿って吹きあがり、山頂近くに吹きあがった空気は冷えて雨を発生します。こうした雲が見られる時には低気圧が近づいて来て、すでに湿った強い風が富士山に吹きつけている時ですからやがて雨が降りだすことが多いのです。笠雲が見られてから24時間以内に少しでも雨の降る確率は63%くらいです。こうしたことは富士山以外の高い山についてもいうことができます。なお、同じ笠雲でも、頂上近くの周囲に均等に雲がかかっている場合には、天気がよく風が静かな時であるから.たとえ笠雲が見えることがあっても翌日雨の降らないこともあるようです。

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6,7,8月ごろ東南に株虹が出れば干天続く

 株虹というのは虹の上の方の部分が消えて見えない虹のことです。株虹は夏の天気のよい暑い日の夕方に夕立が降った後で見られることがあります。夏に暑い快晴の日が続くと、地面も地上の空気も著しく乾燥します。こうした日の夕方に雨が降ると地面や地面近くの空気が雨で湿り、水蒸気が増加しますが、雨が止むと気温がすぐに高くなり乾燥した空気になってしまうので虹の上層が消えて下層だけに虹が見られることとなり、いわゆる株虹が見られるのです。したがって株虹が見られるような時にはすでに干天が続いている場合であることが多く、そうして時にはその後も雷雨は別として本格的な雨は降らないことが多いのでこうしたことわざがいわれるのでしょう。要するに株虹は梅雨前線が発達する年や、真夏に低気圧や台風がよく通るような年には見られず干天気味の年によく見られるから、株虹が見られる時には大干害に注意したほうがよいでしょう。

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山に鉢巻雲がかかれば雨となる

 山の頂に近く、あたかも山が鉢巻をしているように見える雲が現われることがあります。この雲を鉢巻雲と言います。この雲は低気圧が近づいて来る時に現われることがよくあります。低気圧が近づいて来ると、空気の湿度が高くなり、風がやや強くなります。したがって水蒸気を多く含んだ風が山肌を吹ぎあがり、これが冷えて雲が発生することになるのです。こうした鉢巻雲はいつでも発生し、発生すると1日以内に雨が降り出すことがよくあります。しかし、夏の午後に見られる鉢巻雲の場合にはむしろ晴れることが多く、「山に鉢巻かかれば翌日晴れ」といっている地方がかなりあるようです。これは、夏の天気のよい日には山肌が日射であたためられて午後になると山肌に沿って上昇する谷風が発達します。そしてこの風が冷えて鉢巻雲となるのです。こうした鉢巻雲が発生するような時には、太平洋の高気圧の勢力が強く快晴となった日であるから、翌日も晴れることとなります。

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夜鳴る雷は長雨

 雷が発生する原因にはいろいろあります。低気圧の中では局部的に強い上昇気流が起こり、そこに雷が発生することがあります。この雷を渦雷といいます。また前線に沿って強い上昇気流が起こり、そこに発生する雷を前線雷といいます。さらに夏の暑い日の午後に発生する雷を熱雷といいます。夏の昼間に発生する雷は太平洋の高気圧の勢力が強く、天気のよい日にみられるので長雨になるようなことはありません。
 ところが夜に雷鳴が聞えるような時には、渦雷か前線雷によるものとみてよいでしょう。これらは低気圧にともなう前線が発達した時にみられるので、いいかえればかなり発達した低気圧が接近している場合のことが多いので、降りだした雨がすぐ止むようなことはなく、少なくとも一日中雨が降ります。しかし、何日も降り続く長雨となるとはいえません。ただ、梅雨期の夜に雷鳴が聞かれるような時には、梅雨前線が発達した時ですから、長雨となることがよくあります。

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梅雨の初めに雷鳴あれば空梅雨となる

 6月にはいると次第に太平洋方面の高気圧の勢力が強くなり、北の方の大陸の 高気圧との間の前線、すなわち梅雨前線が形成されて梅雨に入ります。梅雨期に 雨が多いと水害を受けますし、また逆に梅雨期に雨が降らず干ばつ気味だと干害 を受けます。特に多量の灌漑水を必要とする稲作が行われている日本では空梅雨 も心配の種です。ところで梅雨について梅雨の初めに雷鳴が聞かれる年には空梅 雨になるということが言われています。雷は色々な原因で発生します。天気がよ いと地面が夏の強い日射を受けてその上の空気が暖まり軽くなります。その為そ こに強い上昇気流が起こります。この強い上昇気流が原因となっていわゆる熱雷 が発生します。したがって梅雨の初めの頃に雷鳴がよく聞かれるのは、天気が非 常によい証拠です。すなわち、太平洋高気圧の勢力が例年より早く強くなった年 であり、こうした年には、空梅雨となる可能性が大きいと言って良いでしょう。

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梅雨期に小雨ならば豊作

梅雨期に入っても雨らしい雨が降らない年があります。こうした年には太平 洋側の海に近い地方では朝のうちは雨が降るかと思うくらい曇りますが、日中は すっかり晴れ上がってしまいます。
 これは、梅雨期に天気がよいような日には、太平洋方面の気圧が高く南より の風が吹くために、朝のうちは陸の方から海に向かって吹くいわゆる陸風と、海 から陸に向かって吹く海風、すなわち南風との間に弱い前線ができて小雨が降る のです。また、北に山をひかえた山よりの地方では、朝方には山風すなわち北風 と、平地から吹き上がる南風との間に前線ができて、海岸に近い地方と同様に小 雨が降ることになります。こうした雨は、いずれも天気がよい日に見られる小雨 で、梅雨期にこうした小雨が見られるときには太平洋の高気圧の勢力が強い年で す。こうした年には、盛夏期にもこの状態が続くことが多く、晴天に恵まれて豊 作になることが多いようです。  

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梅雨に夕立雲が出れば日照り

夏の天気の良い日の夕方に、もくもくと空高く盛り上がる雄大な雲を見かけ ることがあります。この雲は雷を伴うことが多いので夕立雲と呼ばれます。夕立 雲は非常に天気が良く、地面が夏の暑い日射しで暖められて、そこに強い上昇気 流が起こって発生したものです。こうした夕立雲が、梅雨期に見られるような年 には、梅雨期には雨が少なく、真夏のような晴天がよく見られ、言い換えれば空 梅雨の傾向の年と見てよいでしょう。すなわち、例年より早く太平洋高気圧が著 しく発達し、この高気圧に日本がおおわれるため低気圧が通れず、連日快晴に見 舞われることになります。こうした年は概して梅雨期を過ぎても太平洋高気圧の 勢力が強く、晴天が続き、日照りとなりやすいようです。元来雨の多い梅雨期が 日照りとなると、多くの農作物が干害を受けます。東北地方が凶冷に見舞われる 年に、九州地方が干ばつとなる傾向があるようです。

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梅雨中の雷は晴近し

梅雨中には、日本付近に梅雨前線が停滞するので、熱雷はもとより前線雷も あまりみられません。しかし、梅雨中に太平洋高気圧の勢力が強くなり、梅雨前 線が一時北上して太平洋の高気圧におおわれて真夏のような日を思わせるときが あります。こうした時には梅雨前線の通過にともなう前線雷や、その後の一時的な晴天 にともなう熱雷が見られることがあります。梅雨前線が北上して晴れるときには 、梅雨前線がまた南下するまでに何日もかかるので、「梅雨中の雷は晴れ近し」 といえるわけです。
 また梅雨中には低気圧が通るときがあり、この低気圧にともなう前線が一時 発達して、そこに前線雷が起こることもあります。この場合には、低気圧が通っ てしまうと一時晴れることもあるので、この関係からも梅雨中に雷があるときは 晴れが近いことが多いといえます。

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子供が騒ぐと雨

「子供が騒ぐと雨」ということは全国的によくいわれていますが、子供ばかり でなく、多くの動物にも一般的にこうした傾向があり、「ネコが騒ぐと雨」「カ ラスが騒ぐと雨」等ともいわれます。低気圧が近づいているときには、その前面では暖かい南よりの風が吹き込ん できて温湿度が高くなります。こうした天候の変化は当然人間の生理作用や自律 神経に影響します。低気圧が来て湿度が高くなると蒸散量が減少し、気圧が低く なるために脳の内圧が高くなり、また空気中の陽イオンが増加することがあり、 これらが精神をイライラさせるのです。 人体の内臓や血管の働きを支配している自律神経が特に敏感に人は、天気の 変化が身体に刺激となってはたらき、その結果精神状態に影響してイライラした り騒いだりするようになります。大人は自制心がありますが、子供はそれがない ので騒ぐことになります。なお、低気圧が近づくときに、殺人・暴動などがよく 起こるのも同じような原因と考えられています。

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頭髪がいつもより伸びるのは雨の兆し

太平洋沿岸地方では低気圧が近づいて来るとその前面では南寄りの風が吹きます。この風は海を渡って来る風ですから湿度が高く、この風に吹かれて頭髪が湿り伸びるのです。しかし実際には毛の伸びは感じないほどわずかのようです。ただ毛が湿ると髪のふくらみが減じて伸びたように感じることが多いようです。
 元来、毛は湿度に敏感です。この性質を利用して古くから毛髪湿度計が造られ湿度の観測に使われています。正確に測るためには湿度の変化に比例して正確に伸縮する毛が必要です。湿度計の毛髪としてはフランス美人の毛が使われていましたが、戦時中この毛が輸入できなくなった時に、代用品として馬毛、羊毛その他の動物の毛や、麦のノギなど植物性のものについても研究されたようです。しかしフランス美人の毛にまさるものはなかったとのことです。したがってこのことわざで雨が予知できるすれば、フランス美人が最も正確に雨を予知することができることになりますね。

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セキレイが水辺遠く巣くう年は洪水あり

日本にいるセキレイはキセキレイ、セグロセキレイ、ハクセキレイの三種で、いずれも留鳥もしくは漂鳥です。本州の中部を境として、南の地方では冬鳥として知られていますが北の地方では夏鳥です。北の地方では夏になると渓谷などでよく姿を見かけます。セキレイをイシタタキ、イワタタキ、シリタタキと呼ぶように、たえず尾を小きざみにいそがしく上下に動かしながら、谷川の石から石へと飛び歩きます。よく目にとまる鳥です。『セキレイが水辺遠く巣くう年には洪水あり」といわれています。元来、セキレイは水の中を泳ぎまわる水鳥ではないので、雨が多く降り、河川の水が増水すると、いままでの河畔から遠く離れたところに巣くうようになります。このような時には、続く雨に伏流水も多く、大雨が降るとすぐ増水して洪水となりやすいので、このようなことわざがいわれるのでしょう。

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頭痛・神経痛・腰・関節・古傷などが痛むときは雨が近い

 物理的、化学的な強い刺激によって起る一連の障害についてのカナダのハンス・セリエ博士のストレス学説によると、生物体が何らかの傷害的な刺激を受けると、体内ホルモンがアンパランスを生じ、このためいろいろな障害が起るいわゆるストレス病にかかるといわれています。すなわち、ストレス刺激が与えられると、その刺激が間脳へ行く一方、副腎髄質を刺激してアドレナリンを出して抵抗しますが、もう一方では刺激が脳下垂体へ行き、ここから副腎皮質を刺激してホルモンを出させるACTHというホルモンを出します。この作用により副腎皮質が急速に発達して、炎症を起し、結合組織の増殖を促してストレス刺激に抵抗します。このとき脳下垂体から出る成長ホルモンも同様に働きます。こうした生理変化により頭痛、神経痛、関節、古傷などが痛むので、これは天気変化から身体を守る積極的な防衛反応で、雨が近い時によく見られます。 

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朝グモの巣に水滴ついていれば晴れ

クモは初夏のころに卵をはらみ、大きくふくれた卵嚢がやぶれると、無数の子グモが、ケシの粒をまいたように散らばります。クモはその形態が怪異であるし、小虫をつかまえて体液を吸うので、あまり好感を持てる虫ではありませんが、昔から「クモ下がれば喜びあり」といわれ、とくに婦女に喜びごとがあるとして祝ったりしたようです。クモの巣にはいろいろあります。丸い網、棚のような網、皿のような網、扇形の網などあり、芸術品のようです。このクモの巣から天気を予想することわざは、昔からいろいろいわれています。たとえば「クモの巣が朝からかかっていると天気がよくなる」ともいわれます。クモは日中よりも夕刻のやや湿度の高くなった時に巣を張ります。そして夜間、風雨が強い時には巣を張りません。しかし天気が急変することもあり、前日に張った巣が残っていることもあるので、朝巣がかかっていると必ず天気がよいとはいえません。また「朝クモの巣に水滴がかかっていれぱその日晴天」ともいわれています。これは、「朝霧深きは晴れ」に共通した現象です。

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西の虹は晴れる

西の空に虹が見られる時にはその翌日は晴れるということわざは多くの地方で昔からいわれています。
西の空に虹が見られる時は西の方の空が晴れている時です。低気圧も高気圧も西から東へ移動し、それにともなって天気も西から東へと移動します。したがって西の空が晴れる時は、低気圧が接近する時ではないので翌日も天気がよいといえます。また夏の天気のよい暑い日の夕方に雷雨が降ることがよくあります。この雷雨が通り過ぎた後で美しい虹が見られることもあります。夏の雷雨は、地面が強い日射であたためられて、その上の空気が軽くなり、上昇気流が起ることにより発生することが多いようです。こうした時には太平洋の高気圧の勢力が強く、日本をおおっている時ですから、その翌日も雷雨以外の原因による雨が降るようなことはありません。また春や秋には低気圧と高気圧とが交互に通り、西に虹が見られる時には高気圧が来る時ですから、この場合にもその翌日は晴れることになります。

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アマガエルが低いところにいれば晴

木の葉と見まちがえるような青い色の枝ガエル、青ガエルともいわれるアマガエルは足の指先に吸盤があるので木の葉や枝に登ることができます。このカエルが低いところにいるような日は晴れるということが昔からいわれています。これについてカエルを大きなビンの中に階段といっしょに入れて実験したところ、天気が良いと高いところに登り、雨が降りそうな時には低いところに降りて、この登り降りによる雨天の的中率は70%であったといわれています。この実験について、三石厳氏は次のように説明しています。すなわちしめっぽい身体のカエルをビンの中に閉じこめた場合に、その中の湿度が低く、天気が良く.気温が高ければカエルの皮膚の温度が高くなります。そのためカエルの皮膚についている水の温度も高く、酸素がとけにくくなり、呼吸が苦しくなるので、階段を登ってビンの口に近いところに行き、皮膚の水分を蒸発させ、皮膚の温度を下げようとするのだというのです。

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クモの巣が朝かかっていると天気が良くなる

クモの巣と俗にいわれているのはクモが食物を捕える仕かけであっていわゆる巣ではありません。このいわゆるクモの巣にはいろいろあります。代表的な丸形をしたいわゆるクモの巣はオニグモが作り、ジョロウグモは丸細ですが、不規則な太いもつれた糸でできた別の網があって三重の網からなりたっています。また夏の終りから秋にかけて見られるオウギグモの網は扇子を半ば開いたような三角形の網です。いずれにしても、多くのクモは日中よりも夕方のやや湿度の高い時から巣を造り始めます。しかし、夕方から夜間にかけて風雨が強い日には巣を張りません。たとえ張っても風が強いと朝にはやぶれてしまいます。したがって、日本が高気圧におおわれ風が静かで快晴な日の朝に軒先などにクモ巣が見られることが多いのでこのようなことわざがいわれるのでしょう。朝クモの巣がかかっている日の天気確率について調べた結果の一例では晴天56%、曇天28%、雨天16%となっています。

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山に帯雲がかかると雨

山の中腹に、あたかも山が帯をしめているように見える雲が発生することがあります。こうした雲を帯雲といい、帯雲が見られるとやがて雨が降るという意味のことわざは各地の高い山についていわれています。
しかしこの場合に同じ帯雲でも、そのかかり方によっては必ずしも雨が降らず晴れることもあるのです。元来、帯雲は山肌に沿って湿度の高い空気が上昇する時に発生します。いいかえれば湿度が高く天気のよい時に発生するわけです。ところが、低気圧が近づいて来ると、まず東寄りの風が吹き、この風が高いところほど強いので、帯雲が発生しても東側の雲は吹きちらされて、帯が切れることになるわけです。こうした時には西から低気圧が近づいている時ですから、やがて雨が降るとみてよいでしょう。
しかし、山の西側の帯雲が切れている時には、強い西風が吹いている時で、いいかえれば低気圧が東側にある時ですから、雨が降らずに晴れることがよくあるのです。 

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波状雲がでると雨の兆し

波状雲とは海の波のように見える高積雲のことで、ふつうは高さ2000m以上6000mのところに発生します。この雲は幾分濃淡のあるやや大きな雲塊が群がっていることや、あたかも海の波のように波状形に並んで見えることがよくあります。そしてこの雲に太陽や月がおおわれると美しい光環が見られます。波状雲は上・下両層の空気の流れや、気温がちがうと、その境目に発生する雲で、いいかえれば大気中に不連続面がある場合に発生する雲ですから、この雲が見られる時には、やがて雨が降ることがよくあります。それでは実際にこの雲が現われ雨となる確率はどのくらいかというと、もと気象台職員の大地四郎氏が東京で調べた結果によると、高積雲のうち絹雲の場合には25%.高積雲の場合には58%、高層雲の場合には55%、層積雲の場合には50%の割合で雨となるという結果が得られています。 

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富士山に隈取雲(くまどりぐも)が現れると天気悪くなる

富士山の隈取雲とは山肌に接して山の形と同じ形に現われる雲のことで、別名としては「かいまき雲」とも呼ばれています。この雲は、上層に異常に高温多湿な空気が流れ込んで来る時に温度の低い富士山の山肌に触れて冷えて、この空気に含まれている水蒸気が凝結して水滴となり雲となったものです。天気が悪くなる原因の多くは西の方から低気圧が近づいて来る場合です。この場合低気圧は時計の針と反対方向の渦巻であるために、その前面では南寄りの風が吹くこととなり、この暖かい南風が富士山に吹きつけて隈取雲ができることとなります。
 したがって富士田に隈取雲が現われる時には低気圧が西の方から近づいて来た時であるから、やがて雨が降り始めることが多いようです。
 なおこうしたことは富士山をいずれの方向から見てもいえることですが、ことわざとしては従来富士山の北麓地方でよくいわれています。

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鳥類が木の高所に巣を作る年は洪水有り

鳥類が洪水の出ることを見越して、あらかじめ高い所に巣を作るというような能力があるとは思われません。元来洪水の主な原因は梅雨前線と台風です。梅雨前線が日本の上に停滞しがちな時には、何回も洪水に見舞われます。また台風の襲来の状況を見ると、台風がよく襲来するいわゆる台風年と全く台風の襲来しない年があります。たとえば、昭和22年には6月末、8月末、9月上旬、10月中旬に、また昭和40年には8月上旬、9月上・中旬に台風が襲来し、昭和42年から昭和55年にかけては台風があまり襲来していません。
 このような関係から、梅雨時の大雨や台風にともなう豪雨により、一度洪水が見られるとそのような年には、その後もしばしば洪水に見舞われる傾向があります。したがって鳥が巣を作る時に洪水となり、そのため木の高い所に巣を作るような年には、その後も洪水の見られることが多くなるので、こうしたことがいわれるのでしょう。

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雲が北へ飛ぶと晴れ

雲が北に飛ぶ時にはいうまでもなく、この雲の高さのところでは南風が吹いている時です。雨の原因となる低気圧や台風はいずれも時計の針と反対方向の大きな空気の渦巻です。この渦巻は日本の位置する北半球では左巻の渦巻なのです。こうした低気圧や台風が南の方から日本へ近づいて来る時には、これらの内域の気圧の低いところに向かって空気が流れ込むので、雲が北に飛ぶ時にはすでに低気圧や台風が北に去った時ですから晴れると見てよいでしょう。
 ただこの場合注意しなければならないことは、この場合の雲は、黒い層積雲や乱層雲など高さ2000メートル以下のところに現われる下層雲についていえるので、これより高層にある中層雲や高層雲については必ずしもこのようにいえません。なお層積雲や乱層雲が反対に南へ勢いよく流れるような時には、台風が近づくことがあるので暴風雨に注意する必要があります。

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北風が南に変わると雨、南風が北に変わると晴

大陸の高気圧が発達し、その勢力圏内に入ると北寄りの風が吹き天気がよくなりますが、大陸の高気圧の勢力が弱くなり、太平洋の高気圧の勢力が強くなって南風が吹くようになると大陸の高気圧と太平洋の高気圧との境に前線が発達してこのために雨が降ります。こうした原因による雨は梅雨期によく見られ、この降雨は長続きします。また日本付近を通る低気圧の多くは西から東へと移動し、低気圧は時計の針と反対方向の大きな空気の渦巻きですから、北風が吹いて晴れている時にその風が南風に変るような場合には、低気圧が西ないし南の方から接近してきている時で、やがて雨が降り始めることが多いものです。低気圧が通り過ぎると、低気圧の後面では北風が吹くことになるので、南風が北風に変る時には低気圧の中心が通り過ぎた場合であり、晴れあがることが多いのでこうしたことわざがいわれるのでしょう。また梅雨前線が北上する時にも風向と雨との関係について同じようなことが認められます。

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南が西にまわって雨となる

南が西にまわってというのは、南風が西風に変るという意味で、そうした時には雨が降り始めることがよくあるといわれています。低気圧は時計の針と反対方向の流れの大きな渦巻ですから、低気圧が西の方から近づいて来る時にはその前面では南寄りの風が吹くことになります。南風は低気圧の前面でなくても、太平洋の高気圧の勢力の強い時や、日本海側を発達した低気圧が通る時にも吹きます。また夏の天気のよい日の太平洋沿岸地方では海風が発達し南風が吹きます。こうした原因により南風が吹く時にはだいたい天気のよいことが多く、やがて雨が降るようなことはありません。しかし、南風がしだいに西風に変る時には、低気圧の中心が、近くの北側を通る時によく見られるので、この低気圧の中心から南東に伸びている前線が通過するために本格的な雨降りとなることが多いのです。ただ冬期には西風に変る時は大陸の高気圧が発達する時で、太平洋沿岸地方は晴れることが多いようです。 

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尾曳(おびき)すじ雲は雨の兆し

尾曳すじ雲とは尾曳絹雲のことであって、青空にいくつかの頭をもった暗色の雲が白い尾をひいて西から東へと移動してゆく美しい雲のことです。この雲の形の変化は速いのですが、動きも速く、西に現われたかと思うと、東へ去って行きます。上空7〜8000メートル以上の高いところでは常に強い西風が吹いています。これをジェットストリームといい、この風は夏は弱く、風速は一秒間に4〜50mですが、冬には強く6〜70mにもなります。
 台風が南側を通り過ぎた時にはその北側に、また発達した低気圧の前面に南寄りの風が吹き、この高温多湿な空気が高層の寒冷な空気に吹き込むと、そこに尾曳すじ曇ができ、この雲はジェットストリ−ムに流されるので、雲の形や動きの変化が大きくなります。いずれにしてもこうしてできた尾曳すじ雲が上空に現われた時にはやがて発達した低気圧が訪れることがよくあるので、風雨を警戒したほうがよいでしょう。

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早朝のにわか雨は必ず晴れる

「早朝のにわか雨は必ず晴れる」ということわざは主に海岸に近い地方で夏によくいわれています。
夏の天気のよい日には、夜になると海面よりも地面の方が冷えるので、その上の空気が重くなり、陸から海に向かっていわゆる睦風が吹くことになります。早朝には陸地が最も冷えるので、陸風が最も発達します。ところが夏に高気圧の勢力が強く、天気がよいような日は上層には太平洋高気圧による南風が吹き込むことになるので、陸風と海風とが形成される不連続線が発生し、このために雨は早朝に降りすぐ止んでしまいます。こうした日の日中は晴れあがるのです。同じようなことは山麓地帯についてもいえます。夜間は山風が発達しますが、昼間は谷風が発達します。したがって朝、日光を受け山肌が暖められると、気温の低い山風と気温の高い谷風との間に前線が発達し、これにともなって雨が降りますが、こうした日の日中は快晴となります。