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空夢の部屋

4月の天気ことわざ

桜咲く。桜前線の北上は、全国民の楽しみ。

このページのことわざは、「天気予知ことわざ辞典」大後美保著
からの出典です。
著者および東京堂出版より掲載許可を得ています。

ギャラリー

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鍋の肌しめると雨

 鍋、なかでも金属性の鍋の肌が天気によりしめる ことがあります。金属性の鍋は熱容量が大きいから気温が高くなっても鍋の肌の温度はそれに比例して高くなりません。したがって、鍋の肌にふれるところの空気は冷えて、このために空気中に含まれている水蒸気が鍋の肌で露を結び湿ることとなります。太平洋沿岸地方では冬の間は乾燥していますが、中春以後になるとしだいに雨が多くなり湿度が高くなります。とくに低気圧が近づいてくる時にはその前面では南寄りの風が吹きます。この風は太平洋の方から吹くので、暖かく、湿度が高いのです。こうして空気が高温高湿になりますが、一方鍋の肌は気温より低温であるために肌がしめることとなります。いいかえれば、鍋の肌がしめるような時には、低気圧が近づいている時ですからやがて雨が降ることが多いのです。こうしたことは鍋の肌にかぎらず、金属性のものについては共通的にいえることです。

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夜空が澄んだ朝は大霜

 「夕方から冷え込み、夜空が澄んだ朝は大霜」ということが各地でよくいわれています。夜になって空に一片の雲も無く、多くの星が美しく輝き、風が無くしんしんと冷え込むような時には朝の冷え込みがひどく大霜となり、農作物などが大霜害を受けます。春にこうした大霜が見られるのは、西の方から流れてきた移動性高気圧に日本が覆われるときです。移動性高気圧が通るときには天気が良いので、夜間になると地面から空に向かって夜間放射により熱が逃げていくので地面が冷え、その上で空気が冷えます。しかも、移動性高気圧の内部では低気圧とちがって風が静かですから地面上で冷えた空気は上方の暖かい空気と混じらないので地面近くの気温が著しく冷えることになり大霜となります。ただ、同じ移動性高気圧でも等圧線の南の方がふくらんでいるときには、それほど気温は下がらず、北の方がふくらんでいるときほど寒冷な空気を持ってくるので霜に充分注意しなければいけません。

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蝶々雲が現れると雨が近い

 青空に孤立した雲が、あたかも白いいくつもの蝶が舞っているように見えます。こうした孤立した雲を蝶々雲といいます。この雲は、孤立して発達した絹積雲または高積雲の場合もありますが、また強い日射のために局所的に起る上昇気流のために発生した孤立した雲でもあります。大きな雲塊をなしていない片雲、すなわちちぎれ雲で、高積雲の一種。その高さは2000〜6000mくらいのところに発生します。台風が南の方から近づいて来る時など、その前面でこの雲がよく見られることがあります。ちぎれたように見える蝶々雲が非常に速く流れている時には、上空ですでにかなり強い風が吹いている証拠で、低気圧か台風がかなり近づいている時と見てよいでしょう。ふつうは、蝶々雲が空に速く流れ飛ぶような時には、その後18時間から48時間後に雨が降り始める確率が大きいようです。

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月の横に星あるときは晴天

 このことわざは愛知県下その他の地方でよくいわれています。月の横にある星が、無くなるようなことはありませんが、空の雲の状況、いいかえれぽ空中の水蒸気や水滴の含量増加により見えなくなることがあります。月の近くにある星が静かに見えるような時には空が非常によく晴れていて、空気の澄明度がよい時です。そしてこのように夜間がよい天気になる場合はふつうは日本が発達した高気圧におおわれた時です。とくに春や秋には時々大陸の高気圧が発達し、この高気圧の部が移動性高気圧となって日本の方へ移動して来ることがよくあります。このため日本が移動性高気圧におおわれると、空気が澄んでいるために月の横の星がよく認められしかもこの移動性高気圧の規模が大きいから、翌日も快晴となります。また春や秋には帯状の高気圧におおわれることもよくあり、この場合にも晴天が続ぎ、夜間は月の横に星が認められるくらし晴れて翌日は晴天となります。

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月が暈をかぶると雨

 夜、空が晴れている時に月の周囲に淡い白色または多少色彩を帯びた部分が見られることがあり、これを月暈(つきがさ)と言います。月の暈には直径44度の内暈と直径92度の外暈があります。月暈は氷の結晶による薄い雲、例えば巻積雲などに月の光が当たるために生じます。したがって、暈が見られる事は巻層雲のあることを証明することになります。巻層雲は低気圧の前面や側面によく現れます。すなわち、低気圧に伴う前線が近づいてくると、まず淡い刷毛(はけ)ではいたような白い巻雲が見られ、やがてこれよりさらに低く濃い中層雲や下層雲が現れて天気が悪くなります。従って巻層雲が現れて月に暈が見られるようなときは、やがて天気が悪くなるとみて良いでしょう。月暈によっては、翌日雨の降る確率はほぼ60〜80%くらいであるのに対し、24時間以内に雨が降る確率はおおよそ20%以下であるようです。

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朝曇は晴れ

 朝曇る原因には大きく分けて2つあります。その1つは低気圧が近づいて来る時で、この場含にはその低気圧の進行方向によってはますます天気が悪くなりやがて雨が降ります。したがって朝曇は晴れとはいえません。
 これに対して春から初夏にかけては、朝どんより曇っているので雨かと思うと快晴になることがあります。これは元来天気のよい朝に発生する雲で曇るのです。天気がよいと地面からの夜間放射量が多いために地面近くが冷えます。ところがこの冷えかたが場所によって違います。たとえば、海上よりも地上のほうがよけいに冷えます。また盆地のようなところでは、低いところほど冷え込みがひどいものです。このような関係から場所により冷たい気団と暖かい気団ができ、両気団の隣接面では暖かい空気が冷たい空気に冷やされて空気中の水蒸気が水滴となり雲が発生します。この雲は太陽が高くなり気温があがるとしだいに消えて晴れあがります。それで天気図を見て高気圧におおわれていれば、朝曇でも晴れるとみてよいでしょう。

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サクラの花の色うすい年はいつまでも寒い

 サクラの花の色には、開花の頃の天気が大きく影響するようです。花の主な植物色素は、クロロフィル・キサントフィル・カロチンなどです。これらの生成は日光や気温など気象と密接な関係があり、一般に気温が低く太陽光線を受ける割合が少ない場合には、色素の生成が低下します。すなわち、開花時に曇天が多く、日照の少ないときや、いつまでも寒い日が多く、なかなか暖かくならないような年には、色素の生成が少なく、サクラの花は白っぽくなります。花見だというのにまだ寒く、からっと晴れた日が少ない年です。これは大陸方面の高気圧があまり衰えず、一方太平洋方面の気圧が高くならず季節のすすみが遅れていると考えられます。このような年は、農作物の成長も遅れ気味となりますから、寒さの害には特に注意することが必要です。

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コブシの花横向きに咲く年は大風多し

サクラよりやや早く、大弁の白い大きな花弁を持った花が咲き始めます。葉のない枝に転々と白い花が咲き、満開のコブシを遠くから眺めるとあたかも雪が積もったかのように見えます。花のまだあまり多くない時期に咲き始め、目立つ花でもあるので、この花の咲き方から先の天気を占うことわざがいろいろ言われています。サクラの花と違い花弁が大きく風当たりがよいため、強い風が吹くと花が風下になびき、横向きに咲いているように見えます。この花が咲く頃には、春の大風の吹く頃ですから、このようなことが言われ始めたのかもしれません。ただ、コブシの花が咲き始める頃の風の強さと、台風の襲来回数とが特に密接な関係にあるわけではないので、コブシの花が横向きに咲いたからと言って、台風(大風)が多い年とはいえないでしょう。 

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タンポポの葉が地を這うと晩霜あり

春にタンポポの葉の付き方をみると、葉がいくらか上向きに付いている時と地面にはっているときがあります。葉が地面をはっているような年は、春が概して暖かく、雨の多い年であるとみてよいでしょう。早春の天候がこのような年には、植物細胞の浸透圧が概して低くなり、耐寒性が弱くなっています。それでその後低温に見舞われるようなことがあると著しい被害を受けることとなります。こんな経験が何度かあると、その経験が過剰評価されて「タンポポの葉が地をはうと晩霜あり」といわれるようになったのだと思われます。
 しかし、実際には春が暖かく雨が多いような年に、春から初夏にかけて著しい低温がみられる確率はむしろ小さいので、それほど心配する必要はないと思われます。

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遠くの音が聞こえるようになると天気が悪くなる

時により遠くの鉄道や自動車や工場や波の音などがよく聞こえることがあり、こうしたときは天気が悪くなると言われます。音波が空中を伝わる速さは、空気の温度により違い、気温が一度高くなるごとに音速は約0.6m速くなります。気温の垂直分布をみてみましょう。天気の良い日は、地面がよく暖まるので、その輻射により低層の空気は暖められる一方、高層では温度が高くならないので、高層ほど音波の伝搬速度が小さくなり、音の聞こえなくなる地域、すなわち音蔭(無音域)が狭くなります。ところが雲がでて日射しが弱くなると地面の影響による、気温の違いが少なくなり、遠くまで音がよく聞こえるようになります。要するに、遠くの音がよく聞こえるのは、空に雲が多くなった証拠であるとみてよいでしょう。

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女心は4月の空のごとし

ここでいう4月とは陰暦の4月ですが、その頃になると大陸の高気圧の勢力が次第に弱くなり、その一部が移動性高気圧となって日本の方へ流れてきます。その高気圧が通るときは、青空に覆われ晴天となりますが、通過してしまうとその後から低気圧が来て再び天気が崩れ雨が降ります。このように移動性高気圧と低気圧が交互に来るので、天気が激しく変わります。この変わりやすい天気を女心の変わりやすいことにたとえてこのように言うのでしょう。女心は誰でも4月の空のように変わりやすいわけではありませんが、男にとって一つの戒めとして心しておくべきことわざなのかもしれません。一方、同じような気象状況が秋にも見られ「男心と秋の空」と言われます。(最近は春はあまり聞かれず、秋に女心と秋の空と言ったりします) 何かなまめかしい春の天気を女心にたとえ、秋の空の変わりやすさを男心にたとえ、おあいこというところでしょうか。

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櫛が通りにくい時は雨の前兆

毛髪は湿度に非常に敏感で空気が乾燥すれば縮み、湿潤になると伸びます。この性質を利用して毛髪が湿度計に使われています。空気中の湿度が高くなると、毛髪が伸び、毛質によってはちぢれる傾向もあるので、櫛が通りにくくなるのです。日本に低気圧が近づいてくる時には、太平洋の方から暖かい湿った空気が吹き込むので、毛髪が伸びて櫛が通りにくくなります。したがってこのような時にはやがて雨が降るとみてよいわけです。櫛を使わないでも、自分の頭の毛にさわってみて、その伸縮の手ざわりから天気を予報する人もいるくらいです。湿度計に使う毛髪はフランス美人の毛がもっともよいといわれています。戦時中は輸入できず毛髪の代用品がいろいろ考えられましたが、毛髪にまさるものはなかったとのことです。有名な物理学者である田中館博士はある盲人がフンドシの湿りぐあいで雨をよく予報したという笑話をされていたようですが、これほど湿度の変化は雨の予知に役立つのです。

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月いつもより輝き冷えるときは霜となる

春や秋の夜に空に月がこうこうと輝き、しんしんと冷えるような時には、発達した移動性高気圧が日本の上を通る時です。移動性高気圧は大陸の方から流れて来るので水蒸気の含量が少なく、空気が乾燥しているので、空が澄んで月がいつもより鮮明に輝いて見えることになります。移動性高気圧は元来寒冷な気団ですが、そのうえ、雲がなくよく晴れるので、夜間には地面から空に向かって放射により逃げてゆく熱量が多くなります。それだけ地面近くの冷え込みがひどくなり、大霜となりやすいので霜害に充分注意しなければならないのです。月が普段より輝いても風が強いと地面近くの冷えた空気が、上層の高温な空気と混じるので下層はそれほど冷えないことになります。
 ところで移動性高気圧の圏内では風が弱いから余計冷え込み霜害を受けることとなります。昼間には「空の異常に青く澄むときは降霜の兆し」ということ.がよくいわれています。

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スズメが朝早くさえずるときは晴れ

 朝早くからスズメのさえずりが盛んに聞えることがよくあり、このような日は天気がよいと昔からいわれています。スズメは夜は眠り、朝眠りからさめはじめる時に、日によりやかましいほどよくさえずります。スズメがいつごろ眠りからさめてさえずりはじめるかについては、いろいろと調べられているようです。高田蒔氏によると、生態電離曲線研究の結果、日の出後にスズメが鳴くようなことは一回もなかったようです。また鹿角義助氏が調査したところによると、スズメの覚醒時刻は日の出の前15分前後のことが最も多いという結果を得ているようです。このようなことから見ると、天気のよい日には、朝から空に雲が少なく、それで夜明けが早くなるために、その刺激を受けて本能的に早くさえずることになるのでしょう。 

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鯖雲は雨

このことわざは広島県その他の地方でがたり広くいわれています。鯖雲とはサバのうろこを思わせるように見える雲のことで、気象学の雲の分類でいえば絹積雲に相当します。絹積雲は上層雲であって高さ7000メートル以上の高いところにできる雲のことをいいます。空に全く雲が無く、すっかり青空でおおわれているような時は、日本が広範囲にわたって高気圧におおわれている時ですから、全く雨の心配をしないでもよいのですが、絹積雲が見られるような時には、西の方から低気圧が、あるいは南の方から台風が近づいて来る時です。よって雨が降り始める可能性があります。しかしこの雲が現れるのは、低気圧や台風がまだかなり遠いところにある時なので、その後の気圧配置の変化によっては、これらの進路や盛衰が著しくちがってくるので、鯖雲が雨ということわざの当る確率は、そう大きくないと見てよいでしょう。たとえ雨となるとしても翌々日以後となることが多いでしょう。 

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桜の白花多く咲く年は豊年

サクラの花が咲くころに曇天や雨天が多く、日照が少ないと、花弁に花青素の生成が少なく、花の色が白っぽくなりがちでです。したがってサクラの白花が多い年とは、地方によってもちがいますが、関東以西では三月末から四月なかぱのころ、東北、北海道では四月中旬から五月中旬ごろということになります。このころは春霧の季節で、年によっては暴雨天の日がかなり多いことがあります。暴雨天が多いと朝の冷え込みがひどくなりませんから、結局こうした年には稲苗その他の農作物が霜害をあまり受けないこととなり、その結果豊年となることがよくあったのでこうしたことわざがいわれたのでしよう。稲作について「苗半作」といわれた時代にはたしかにこうした傾向もあったでしょう。しかし最近は、昔とちがって温床の温度管理が人工的にゆきとどいていますから、苗床が霜害を受けるようなことは少なく、むしろサクラの白花が多くない年のほうが豊年となることが多いともいえます。

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朝の川もや白きは晴れ

朝早く川を眺めると、川の上一面にもやがかかっているのを見かけることがよくあります。こうしたもやはとくに早春から晩春にかけて見られるものです。このもやは河川の水が蒸発して川の上に浮遊する水蒸気の量が多くなり、これがもやとして見えるのです。天気のよい日は地面や空気が夜間放射によりよく冷え込むのに対して川の水は熱容量が大きいためにそれほど冷えません。このため河水が蒸発してもやとなるのです。こうした時には川面から水蒸気がたちのぽるさまが目でよく見えるほどです。このように水蒸気がもやとなって川辺にただよい、白く見える時は空気中の水蒸気の量がある程度以上多くない時です。また冷込みがひどい時など川もやがよく発生するので、こうした二つの条件は朝方の冷え込みがひどい時、いいかえればよく晴れている時に見られることが多いものです。結局朝の川もやが白く見えるような時には晴れるといえます。

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ツバメが低く飛べば雨近し

ツバメは四月上旬ごろに南の方から渡って来て、ピチピチピチ・チチチジュイーと早口にさえずりながら、時には地面すれすれに低く飛び交うことがよくあります。地面すれすれに飛び交うのをツバメの水はちといいます。ツバメが低いところを飛び交うのは、低いところにツパメの餌となる虫が多く、これを飛びながら捕えるためで、時には得意のツパメ返しをして反転して虫を捕えたりします。ツバメのヒナの育成期に当る五月から六月にかけてはヒナを養うためにとくにこのようにして昆虫を捕えては巣へもどります。ところがツバメがいつも低いところを飛び交うかというとそうではありません。ツバメの好む昆虫は低いところを飛んでいて、そのような昆虫がとくに多く発生する時に低く飛ぶわけです。低気圧が近づいてくると、気温や湿度が高くなり、そのため昆虫が多発するので、ツバメが盛んに低空飛行をし、これが低気圧接近、すなわち雨の近いことのバロメーターとなるわけです。一説には、低気圧が近づくと湿気が多くなり、羽が重くなるために昆虫が低く飛ぶともいわれています。

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春の南風は三日雨降らず

雨は低気圧が通る時に降ることが多いものです。雨の原因となる低気圧は時計の針と反対方向の渦巻ですから、大陸のほうから日本のほうへ移動してきた低気圧の前面では南風が吹くこととなります。したがって普通は南風が吹けばやがて低気圧が来て雨が降ることが多いのです。そのため「南風は雨近し」とか、「南風は雨を運ぶ」ということが各地でよくいわれています。
これに対して春については反対に「南風が吹くと三日雨降らず」ということがいわれています。春になると、低気圧と移動性高気圧とが交互に通ります。この場合、低気圧が日本海側を通ることがよくあり、冬には見られなかったような南寄りの風が吹き、低気圧が通ってしまうと、その後から移動性高気圧がきて,西の地方からしだいに晴れます。移動性高気圧の移動の速さによってもちがいますが、日本がこの移動性高気圧の勢力圏内に包含されている期間はだいたい三日くらいですから、南風が吹けばその後三日雨降らずといえるのです。

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春雨多ければ夏干ばつ、秋に雨が頻繁で洪水あリ

春に雨が多かった年にたまたま夏が干ぽつであり、しかも秋に雨が頻繁に降って洪水となった年があったのでこうしたことが言われだしたのでしょう。またこうした解釈のしかたは均衡説の理論にのっとっています。すなわち、春に雨が多ければ、その分を取りかえすために夏には雨が少なくなり、また夏が干ばつだと、その分を取りかえすために秋には逆に雨が多く降り洪水が出るという思想からいわれたものです。実際には、春雨多ければ夏干ばつ、秋に雨が頻繁に降り洪水が出るという気象学的な根拠は何もありません。ただこのことわざは、春雨が多かったからといって夏の干ばつを油断しないようにし、また夏が干ばつだからといって秋に洪水があることに油断しないようにというようなことを示唆する意味からみれば、意義あることわざといってよいでしょう。

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夕焼けは晴れ

「夕焼は晴」ということわざは世界各地でいわれています。夕方となり太陽が地平線に近くなると、太陽光線が長い空気の層を通るために、空気分子や細塵のために太陽光線のうちの波長の短い青色などの光線が散乱して、波長の長い赤色や黄色の光線だけがわれわれの眼に入るので赤く見えることになります。このように赤や、それに近い長波長の光線だけが残るためには約400キロメートルの気層を通らなければならないこととなり、しかもこの間の水蒸気量が少ない時ということになります。
 元来、天気が悪くなるのは、西の方から低気圧が近づいて来るためで、低気圧の進行速度は夏はややおそく平均して時速30キロメートルくらいですが、その他の季節にはこれより速く40キロメートルくらいです。よって、夕焼が見られる時には西から低気圧が近づいて来る時でも、その後雨が降り始めるまでには13時間以上かかるから、夕焼の翌日は晴れると見てよいのです。

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西風は晴れ、冷風も晴れ

西風が吹く理由にはだいたい2つあります。その1つは冬によく見られる場合で、大陸の高気圧が発達し、日本の方へ張り出し、西高東低の気圧配置となって西風が吹く場合で、この場合には太平洋沿岸地方の多くは晴れることが多いようです。今一つの場合は低気圧の中心が東進するさいに西寄りの風が吹く場合で、この場合にはすでに低気圧が通り過ぎたことになるので当然晴れることになります。また太平洋沿岸地方では暖かい風は海の方から吹いて来る南風であり、こうした南風は低気圧や台風の前面で見られるから暖かい風が吹けばやがて雨が降ることになります。これに対して冷たい風は、大陸の方から吹いて来る風の場合に多く、いいかえれば大陸の高気圧が張り出したり、移動性高気圧の通る時であるから、この場合にも晴れることになります。このことわざは日本の太平洋沿岸の多くの地方で、冬以外の季節でだいたい的中するとみてよいでしょう。

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カラスが田の中に巣を作るときは晴天多きしるし

日本で見られるカラスにはハシブトカラスとハシボソカラスの2種があります。これらは冬には一緒に暮らし、春の繁殖期になると別々になります。またこの2種の雑種はできません。ハシブトカラスはハシボソカラスよりも身体が大きく、くちばしが太くなっています。カラスはイモムシやバッタなどの害虫を食べますが、時には雑草の種も食べます。そして調査によるとハシブトカラスの食餌は40%が動物質で、58%が植物性で、残り2%がいろいろな雑物です。一方ハシボソカラスは動物質の食餌が30%で、他の70%が植物質です。
 カラスはふつうは高い木の上に巣を作りますから、田の中へ巣を作るのは珍しいことです。晴天続きの時には田の水が減り、植物性食餌が手近にある田の中にも巣を作るようなことがあり、こうした時にはすでにかなり晴天が続いた時なのでこのようにいわれるのでしょう。

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身体に寒いと感じるときは天気が良くなる

寒いと感じる温度は季節によりちがいます。たとえば東京では夏のように気温が25度以上の暑い季節には22度以下に下がると寒く感じ、春や秋のように気温が17〜18度の時には10度以下に下がると寒く感じ、真冬のように気温が10度くらいの時には気温が2〜3度以下に下がると寒く感じるようです。このように寒いと感じる温度が季節によりちがうのは人間の温度感覚の慣れが関係するからです。
 一般には、夏は寒いと感じるような気象変化は小さく、また冬は元来寒い季節であるために、多少気温が下がっても寒さをそれほど痛切に感じないものです。今日は寒いという感じを痛切に感じる季節は春と秋です。春や秋には移動性高気圧と低気圧とが交互に通ります。移動性高気圧は元来大陸の方から流れてくる寒冷な気塊であり、しかも移動性高気圧におおわれた地域は晴れるので、夜間放射量が多く夜間の冷え込みがひどく強い寒さを覚え、こうした日はだいたい快晴になるとみてよいでしょう。

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春の北風は晴れる

春には移動性高気圧と低気圧とが交互に通り、それにともなって天気が変化する低気圧が日本海を抜けることがよくありますが、このような時には南風が吹いて雨が降ります。低気圧の後から移動性高気圧が来る時には、その前面では北寄りの風が吹き、やがて高気圧におおわれるから天気はよくなります。また移動性高気圧が来なくても、低気圧の通った後で大陸の高気圧が発達することがあり、この場合にはいうまでもなく北風が吹き、日本はこの高気圧の勢力圏内に包含されるので晴れることとなります。
 しかしこの場合に、大陸の高気圧の勢力は冬ほど強くならないので、強い北風は吹きません。また春には冬のころよりも日本海の水温が低くなっているので、大陸から吹き出してきた風が日本海を渡るさいに供給される水蒸気の量が少なく、このためにも冬のように日本海沿岸地方では北風が吹くために雨や雪が降ることはありません。 

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南風は馬鹿風でやむことを知らない

このことわざは北陸地方でよくいわれています。4月から5月にかけて、太平洋の高気圧が著しく発達して日本の方へ張り出している時に、日本海を低気圧が通ると、太平洋の気圧が高く,日本海方面の気圧が低いために太平洋の方から日本海に向かって南風が吹きます。この風は日本の中央山脈を吹き越すことになるので、フェーン現象のために日本海側の地方ではかなり強い南風が吹くことになります。この場合には太平洋の高気圧が著しく発達していて日本の方へ広く張り出している場合なので低気圧が通るようなこともなく、昼夜を通じてかなり強い南風が何日も吹き続くこととなります。
 この南風は中央山脈を乗り越えるさいにフェーン現象により乾燥するので、こうした状態になる時に火災が発生すると大火となる恐れがあるから火の元に充分注意しなければいけません。この馬鹿風は、太平洋の高気圧の勢力が衰えるか、日本海の低気圧が通り過ぎてしまえばおさまります。

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大霜の後暖かきは雨近し

春や秋には時に朝方の最低気温が著しく下がり、霜が厚く降り、いわゆる大霜となることがあります。こうした大霜はどのような時に見られるかというと、ふつうは春や秋には西から東に向かって日本の上を移動性高気圧と低気圧とが交互に通りますが、この時とくに発達した移動性高気圧が通る時に、いわゆる大霜となり、その後から低気圧が来る二とがよくあります。 低気圧が近づくとまず南風が吹き暖かくなり、やがて雨が降ることが多いのでこのようなことわざがいわれるのでしょう。
 こうした関係から大霜による霜害対策や、このころ行なう農作業の手順にはこうした天気変化に注意して行なう必要があります。しかし、日本付近が帯状高気圧におおわれ、移動性高気圧に続いて低気圧が通らないで続いて移動性高気圧が通ることもあります。この場合には最初の大霜による被害の状況から対策をさらに強化することができます。いずれの天気になるかは、現在では天気図を見ればおおよそ判断することができるでしょう。