野鳥は、採餌や繁殖のため、自然現象に合わせて生活を少しずつ変化させていると思われます。特徴的な野鳥のそんな生活の様子は、じっくり観察すると天気を占うよい目安となるのかもしれません。
マオ(アオバト)が鳴くと天気が悪くなる
この鳥は「アォーオー アォーオー」とか「 ワォー ワォー」「マーオ マーオ」などと寂しげな声で鳴きます。この鳴き声 から各地で、マオ、ワオウ、オエオ、マオウドリなどと呼ばれています。青森県
・愛媛県・大分県では「マオが鳴くと必ず天気が悪くなる」といい、その鳴き声を雨天の予兆としました。和歌山県では「雨が降るからアオバトを鳴かすな」と言うところもあるようです。
この鳥がよく鳴くのは、梅雨に入る繁殖期です。また鳴き声が暗く寂しいものなので、こんなことわざができたのでしょう。
アカショウビンが来ると天気が悪くなる
この鳥は、夏鳥として南の国から渡ってきます。そして、山地のよく繁った林や、渓流、湿った斜面、池などで生活します。サワガニ・カエル・カタツムリ・魚・トカゲなどを食べます。繁殖期には夕方「キョロロロー」というふるえ声で鳴き、飛び立つときには「キョロ キョロ キョロ」と鋭く鳴きます。この鳥がよく鳴く繁殖期が、ちょうど梅雨の6月から7月であること、雨天の日や曇りの日には日中でもよく鳴くことから、昔の人は天気予報の一つとして用いていたのでしょう。このような特徴からアカシヨウビンは「水恋鳥」とか「雨乞鳥」と呼ばれているようです。また、体の色が真っ赤なのでナンバン(唐辛子)ドリとも呼ばれて います。
雪の深い年にはウソが多い
ウソは秋から冬にかけて山から平地に下りてきて、数羽から数十羽の小さな群で生活します。はさみのように鋭いくちばしを使って桜のつぼみをスパリスパリとかみ切っていきます。口をもぐもぐと動かし、花の芯だけを抜き取って食べてしまいます。たった十数羽のウソが花の名所を台無しにしてしまうこともあり、早春の頃新聞記
事になることもあります。 「雪の深い年にはウソが多い」というのは、石川県金沢地方のことわざです 。山地に雪が多く、草木の実り方が少なく食べ尽くしたときに、ウソは群になって平地に降りてくるのです。
カササギの巣が高い年は風が吹かぬ
カササギは九州佐賀平野を中心に、九州北部に棲 んでいる鳥です。この辺りには普通に繁殖し、高い木や電柱の上に、枯れ枝を集めて球形の巣を作ります。エサはカエルやミミズ、昆虫類・木の実や穀類など雑食です。「カササギの巣が高いと風が吹かぬ」とは佐賀地方のことわざですが、根拠は定かでありません。中国で言われていたことが日本に伝わり、そのまま九州で
広まったようです。中国の古い書物「本草綱目(ほんぞうこうもく)」や「淮南子( えなんじ)」には「カササギは、来る年の風向きを知って巣作りし、風の多いときはそれを予知して、必ず低い所に巣を作る」と書かれています。
カモメの高鳴きしけのもと
漁師さんは、カモメなどの海鳥に魚の群を見つけてもらうだけでなく、海の天候も教えてもらっているようです。「鴎の高鳴きしけのもと」(対馬)は、低気圧が来る前は次第に風が強くな
り海が荒れてくるので、カモメが陸の方に避難して盛んに鳴く様子を示していま す。こんな時やがて低気圧が来て、海は大荒れになります。同じようなものに次のことわざがあります。
○カモメが里近く来て鳴けば海が荒れる(青森・広島)
○カモメが陸上がりするのは海がしける兆し(宮城)
○カモメが魚捕りに出ている日は海は荒れない(隠岐)
ツバメが低く飛べば雨近し
これは、よく言われることわざで、一度は耳にしたことのある人も多いことでしょう。低気圧が近づくと気温や湿気が高くなり、虫が多く出てきます。その
羽は湿気で重く、低いところを飛ぶのでエサを求めて燕は低いところを飛ぶわけです。この天気予知は結構当たるようです。その他には次のものがあります
○ツバメが群れ飛ぶは雨(北海道十勝地方)
○ツバメが高く飛ぶは雨(広島県その他)
○ツバメが水を浴びると雨
ダオが渡ってきたから田の支度にかかる
ダオとは、特別天然記念物であるトキのことです。ニッポニア ・ニッポンの学名を持つこの鳥は、「タァー タァー」とか「ダオー ダオー」 「クワッ クワッ」といったように鼻にかかったような声で鳴きます。それで、この鳥のことを方言でダオ、ダオン、ドウ、タウなどと呼んでいます。かつては北海道
から九州まで、特に東北地方にたくさんいたようです。春になり木の芽が吹き出 す頃、南の国から渡って来て、雪が降り出すまでいたようです。「ダオが渡って
来たから田の支度にかかる」とは青森県下北郡に残る言い伝えです。
ヒバリが空高く上がると晴天
ヒバリが空に上がる高さは、普通100mくらいと言われています。同じ高 さでさえずっていても、水蒸気の量が多いときは地上に音が良く伝わるので、鳴き声は低く聞こえ、
少ないときには高く聞こえます。つまり、ヒバリが高く上がって鳴いていると思われるときは、水蒸気が少ない、つまり高気圧におおわれているときです。次の日も晴れることが多いようです。これに対し「
雲雀の舞い上がりが低いときは、暴風の前兆」という諺もあります。春には大風 が吹くことがよくあり、上空は強風でヒバリは高く舞い上がれない のです。
フクロウの鳴き方でお天気が分かる
「ノリツケホウセイ」は晴れ、「ノリツケホウセイ、ホホホ」は雨。昔洗濯をした後に洗濯のりを付けたものです。「のり付け・・」は洗濯せよ、「のり付け・・ホホホ」は洗濯できないよとの意味です。福井嶺南地方の諺です。
フクロウについてのことわざは各地で言われています。
○宵のうちにフクロウが鳴くと雨(埼玉 他)
○フクロウが鳴くと天気が続く(長野・三重・岡山・佐賀)
百舌鳥(モズ)の高鳴き七十五日
「キィー キィー キチキチキチ」秋が深まるとモズの甲高い鳴き声が聞こえてきます。モズは、秋から冬にかけては1羽だけでなわばりを持ちます。そのため秋の初めには老若男女を問わずモズは激しい戦いをしてなわばりを勝ち取ります。一度確保したなわばりに侵入してくるものが有れば、また戦います。こうして11月には秋のなわばり争いは終わり、モズは1羽きりで冬を迎えます。昔の人は、モズの高鳴きを初めて聞いてから75日目に霜が降ると、農作業の目安にしていたようです。
モズに関する他のことわざには、次のようなものがあります。
○百舌鳥の高鳴きは晴天の兆し(千葉・富山・高知・福岡)
○百舌鳥の高鳴きは七十五日の上天気(広島)
○百舌鳥が来るとその年はもう大風がこない(熊本)
○百舌鳥が鳴き始めると風が吹かない(愛知・奈良・福岡)
○百舌鳥が早く鳴けば、早く寒さ冬が来る(滋賀・大分)
○百舌鳥が鳴くと雪が降る(岐阜)